ダンジョンメーカー   作:ソロモンは燃えている

12 / 33
第十二話 自衛隊のダンジョンアタック

 

 

 政府は、渋谷に出現したダンジョンを単なる災害とは捉えていなかった。モンスターの脅威は確かにあるが、そこから得られる「魔石」は資源に乏しい日本にとって魅力的でもあったからだ。

 

 

 

 自衛隊は、特殊部隊を中心に「ダンジョン攻略部隊」を編成した。隊員は高い身体能力と技量を持つエリートばかりで構成され、さらに科学者や医療班も随行していた。

 

 指揮官・村瀬1尉が無線越しに隊員たちへ声を飛ばす。

 

「諸君、これより我々はダンジョンの奥地に進入し、構造の把握およびモンスター討伐、魔石の回収を行う。警戒を怠るな。現地の状況は未知数だ」

 

 

 隊員たちが慎重にダンジョン内へ足を踏み入れると、外界とはまったく異なる光景が広がっていた。湿気を帯びた空気と薄暗い空間、そして足元に広がる無数の蜘蛛の巣。

 

「なんだこれ……まるで異世界だ」

 

 一人の隊員が呟く。

 

 部隊が進むたびに、遠くから何かが動く音が響いてくる。次の瞬間、隊列の前方に無数の小型の蜘蛛型モンスターが現れた。

 

 

「全員、散開! 殲滅せよ!」

 

 村瀬1尉の号令と同時に、銃火器の発砲音が響き渡る。

 

 小型の蜘蛛型モンスターたちは素早い動きで隊員たちに襲いかかるが、訓練された兵士たちは冷静に対応し、一体ずつ仕留めていく。しかし、モンスターの数が多く、全滅させるのに時間を要した。

 

「これが序盤の敵か。奥に行くほど、もっと強力な奴が出てくるだろうな……」

 

 一人の隊員が冷や汗を拭いながら呟く。

 

 

 部隊がさらに奥へ進んだとき、突如として巨大な影が現れた。それは、ジャイアントスパイダーの亜種とも言える中型の蜘蛛型モンスターだった。

 

「うわっ!?」

 

 先頭を進んでいた一人の隊員が触手のような蜘蛛の脚に捕らえられ、空中に吊るされる。そのまま毒液を吐きかけられ、彼はその場で絶命した。

 

「中村がやられた! 対戦車ランチャーを用意しろ!」

 

 一人の隊員が肩に担いだランチャーを構え、巨体の蜘蛛型モンスターに向けて発射する。轟音とともに、爆発がダンジョン内に響き渡る。

 

「仕留めたか……?」

 

 煙が晴れると、巨体のモンスターは跡形もなく消えていた。しかし隊員たちは、目の前で犠牲者が出た光景に恐怖を隠しきれなかった。

 

 

 部隊はさらに奥へ進もうとしたが、次々と湧き出てくるモンスターの群れ、そして隊員の疲弊が限界に近づいていた。

 

「隊長、このままでは全滅します! 撤退を!」

 

 副官が進言する。村瀬1尉は歯を食いしばりながらも撤退命令を下した。

 

「全員、外へ戻る! ダンジョンの情報を持ち帰ることが最優先だ!」

 

 隊員たちは残りの火力を駆使してモンスターを押さえ込みながら、どうにかダンジョンの外へと脱出した。

 

 

 

 帰還した部隊は、ダンジョン内部の情報と、回収した魔石を政府に報告した。

 

「ダンジョンの深部には、さらなる強敵が潜んでいる可能性があります。攻略にはさらに大規模な戦力が必要です」

 

 しかし、同時にモンスターを倒していく中で身体能力の向上を感じた隊員もいたため、リスクを承知でダンジョン攻略を続行するべきだという意見も多かった。

 

 

 

 不思議な空間で自衛隊のダンジョン攻略を観察していた真人と玲奈。

 画面には、自衛隊の状況が映し出されていた。

 

「最奥まではたどり着けなかったみたいだね。それに、こんなに早く犠牲者が出ちゃうなんて…」

 

 玲奈が静かに言う。

 

 真人は腕を組んで考え込んでいた。自分が作ったダンジョンで死人が出たことに対する罪悪感や後味の悪さはあるが、それは、この計画を考えた時から想定されていたことだ。

 

「永続ダンジョンは、規模こそ桁違いに大きいけどモンスターの強さにそれ程の違いはないはず。なのに、なんで自衛隊はこんなに苦戦しているんだ?」

 

 真人の中に浮かんだ疑問はこれだった。

 ただの高校生がシャベルで戦えた相手に訓練を受け、銃火器で武装した自衛隊の部隊が苦戦するなど想定外だった。

 この時点での目的は、ダンジョンを攻略させて魔石の有用性を知らしめることだったはずなのに。

 

 戦闘を観察する中で、真人たちはある違和感を抱き始める。自衛隊員たちはジャイアントスパイダーの亜種や群れを倒しているにもかかわらず、その後も消耗した様子が目立つ。

 

 玲奈が首を傾げる。

 

「マナが上手く吸収されていないのかな……?」

 

「どういうことだ?」

 

 真人が問い返すと、玲奈は自分の胸に手を当てて説明する。

 

「モンスターを倒したら、その場で体にマナが吸収されて、少しずつ強くなるよね。でも、自衛隊の人たちは、そうなっていないみたい。むしろ疲労が増してる」

 

 真人は映像の中の隊員たちに目を向ける。

 

「確かに……なんでだろう? 銃火器で遠距離からモンスターを倒してるからか?」

 

 玲奈は少し考え込み、さらに可能性を挙げた。

 

「多人数でモンスターを倒しているから、吸収されるマナが分散してるのかもしれないね。あるいはその両方かも…。ごめんなさい、確かなことはわからない」

 

「仕方ないさ、俺たちだって全てを理解しているわけじゃない。でも、止まるわけにはいかないんだ。自衛隊には試行錯誤してダンジョン攻略の最適解を模索してもらおう」

 

 玲奈は頷き、真人の隣に座った。

 

「じゃあ、次のダンジョンをどこに作るか、相談しようか」

 

 

 

 

 

 設定解説

 

 環境激変《エンヴァイロメント・シフト》

 地球の核が生み出すエネルギーであるマナが一定の濃度に達した時に起きる現象。

 生物種の入れ替えによる生命の循環。

 

 破滅的魔物災害《モンスタークライシス》

 環境激変の最終段階。

 世界を埋め尽くす勢いでモンスターが発生し、一気に旧生物群を絶滅に追いやる。

 

 局所的魔物災害《モンスターハザード》

 環境激変の予兆。空間の裂け目のようなゲートが開き、大量のモンスターが溢れ出す。

 渋谷で起きた事件などが該当する。

 

 ダンジョン・コア

 ダンジョンを生成するためのアイテムだが最低でもジャイアントスパイダークラスが落とす魔石が必要。

 不思議空間でしか生成出来ないため、現状では真人にしか作れない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。