ダンジョンメーカー   作:ソロモンは燃えている

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第十三話 スキル発現

 

 

 クリーンな次世代エネルギーとして期待される魔石、様々なイノベーションを起こすであろうモンスター素材、渋谷ゲート事件やその後に発生したダンジョンから得られた情報は日本政府によってすぐさま機密指定された。

 

 …が、あっさりと情報は漏洩してしまった。

 

 

 政府は再び緊急対策会議を開く。

 

「こんなにも早く情報が漏洩するとは、いったい何処から漏れた!」

 

「目下、調査中ですが、かなり政府中枢に近いところにも外国の影響力が及んでいたようで…」

 

「長らくスパイ防止法などを棚上げしてきましたし、国に対する忠誠心など教育してこなかったのですからやむを得ないかと」

 

「仕方あるまい、我々の権力を維持するためには国民には政治に無関心でいてもらわなければならないのだから」

 

「そんな事よりも他国の動きはどうなっている?」

 

「はい、まず隣国ですが、いつも通りですね。

 中国は昔の伝説やら伝承やらを持ち出してダンジョンは古来から中国のものだったと主張して返還を求めています。

 韓国もダンジョンの起源は韓国にあり、日本は韓国からダンジョンを盗んだとして謝罪と賠償を要求し始めました」

 

「まあ、平常運転だな。しかし、今回は他の国も動いているようだ。

 アメリカは同盟国の立場を利用して情報の開示と調査団の受け入れを要求している。

 欧州は、世界全体の問題だとして、渋谷ダンジョンを国連の管理下に置き、共同で調査、研究を行うべきだと多数派工作を進めているようだ」

 

「なんだかんだと綺麗事を言っても、我が国から利益を搾り取ることしか考えていない。危険や負担だけは我々に押し付けてな」

 

「情報が漏洩してしまった以上、いつまでも突っぱねることはできん。アメリカに譲歩することで我が国の利権の損失を最小限にするしかない」

 

「つまり、我が国もいつも通りと…」

 

 国際社会の政治的駆け引きはダンジョンという超常現象を前にしても変わらないかに思えた。

 

 しかし、日本に対する具体的な動きが出る前に世界情勢に再び変化が起きる。

 

 アメリカのニューヨークとフランスのパリで相次いでゲートが開き、モンスターが氾濫。

 いわゆる『モンスターハザード』が発生したのだ。

 

 日本ほど平和ボケしていなかったからか、それとも渋谷という前例があったためか、軍隊が早期に出動して被害が大きくなる前に事態の収束に成功する。

 

 その後、ニューヨークとパリに渋谷と同じようにダンジョンが確認された。

 

 さらに、この事件を皮切りに各国の首都などの人口密集地に次々とダンジョンが出現していった。その数は50を超えていた。

 

 その結果、日本への関心が薄まり、自国に現れたダンジョンの調査へと注力していくことになる。

 

 

 

 当然、この動きの裏には真人たちの暗躍があった。

 

 渋谷のダンジョンが封鎖され、自衛隊によって手探りの探索が始まった頃、真人もダンジョンコアを生成するための魔石を得るために簡易ダンジョンの攻略を進めていた。

 

 真人の中に焦りが募る。こうしてる間にも大気中のマナは増大し続けている。渋谷のダンジョン一つでは話にもならない。

 

 一刻も早く世界中にダンジョンを配置して、マナを消費する体制を整えなければならない。なのに、その準備は遅々として進んでいない。

 

 ダンジョンコアの素材にする魔石にはある程度の格が必要になる。最低でもジャイアントスパイダーが落とした魔石と同等でなければならない。つまり、簡易ダンジョンのボスを倒してようやく一つ得られるのだが、これでは効率が悪すぎて間に合わない。

 

 解決策があるにはある。使用するマナを増やし、より強力なモンスターが出現するダンジョンを作って攻略すれば良い。

 

 今のダンジョンが初級だとすれば、中級ダンジョンと呼ぶべきもの。そこでは初級ダンジョンのボスクラスが雑魚として出現するため、魔石収集の効率も段違いに上がる。

 

 だが、あまりにもリスクが高く、その手段を選べずにいた。真人が死ねば、環境激変を避ける手段を失うことになる。マナを吸収することで能力は向上しているが、それでジャイアントスパイダーの群れに対処できるかと言えば首を振らざるを得ない。

 

 玲奈の力をおいそれと使うわけにもいかない。存在を維持するだけでも魔石が必要なのだ。収支がマイナスになっては意味がないので真人が戦わなければならない。

 

 それでもダンジョンに潜り、魔石を集める。諦めるということは人類の滅びを受け入れるということなのだから。その積み重ねが新しい可能性を開くことになる。

 

 

 

 ある日、簡易ダンジョン内でモンスターを討伐した直後、不思議な感覚が真人を包み込んだ。頭の中に、自然と何かが「開かれた」ような感覚。それは新たな力の兆候だった。

 

「スキル……なのか?」

 

 彼の頭の中に『マナクラフト』という言葉が浮かび上がっていた。

 

 

 玲奈に相談すると、彼女は興味津々な表情で真人の体内に蓄積していたマナが変化していると答えた。

 

「お兄ちゃんの体に蓄積したマナが馴染んできてるなと思ってたけど、スキルが発現するなんて……まるでゲームみたいだね」

 

 ゲームか…初めてあの空間に入った時に光の粒がマナだと知って思い浮かべたんだったな。

 

 マナは、俺のイメージに影響を受けているのか?

 

 魔石や素材を落とすのもゲーム的だ。モンスターを倒すとマナを吸収して強くなるのはレベルアップ。極めつきが今回のスキル習得。俺がイメージするゲームそのものだ。

 

 だとしたら、なんで俺はマナに影響を与えることができる?

 

 そんな疑問に頭を悩ませていると玲奈がスキルの説明を求めてきた。

 

「で、どんなスキルなの?」

 

 真人は額に手を当てながら、自分の頭の中に浮かぶ感覚を整理していく。

 

「……どうやら、マナを使って何かを作る力みたいだ。今まで集めてきたモンスターの素材を使って武器や防具を作れる……そんなイメージがある」

 

「え、それめっちゃ便利じゃない!?」

 

 玲奈が驚きの声を上げる。

 

「これって、もしかして本格的な鍛冶屋みたいなことができるってこと?」

 

「いや、そこまで高性能なものが作れるかはわからないけど……試してみる価値はあるな」

 

 好奇心とともに、真人は今まで集めていた素材を手に取り、スキルを試してみることにした。ディスプレイには簡単な選択肢が表示されている。

 

 

 クラフト可能な武具

  •スパイダーソード

  •スパイダープロテクター

 

「これ……選ぶだけで作れるのか?」

 

 試しに「スパイダーソード」を選択すると、目の前の素材が青白い光に包まれ、数秒後には鋭い剣が現れた。

 

「おお……!」

 

 手に取ると、軽く、それでいて非常に頑丈そうだ。刃の部分はジャイアントスパイダーの牙で構成されており、毒の残留物がほのかに漂っている。

 

 玲奈が目を輝かせる。

 

「すごい!これで戦いやすくなるよ!」

 

 さらに「スパイダープロテクター」を選択。硬い甲殻を用いた軽量な防具が現れる。真人はそれを身に付けてみると、体への負担もほとんど感じない。

 

「これなら、今まで避けてきた難易度の高いダンジョンに挑める。いつまでもダンジョンが日本にしかない状況も良くないみたいだし、渋谷に注目が集まっているうちに一気にダンジョンを設置してしまおう」

 

 真人は、マナクラフトで作り出した武具という新たな力を得て、難易度の高いダンジョンに挑み、必要な魔石を集めるのだった。

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