ダンジョンメーカー   作:ソロモンは燃えている

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第二十話 18歳になって

 

 

 

 俺、北原圭斗(きたはら けいと)は、高校最後の年を迎えても、特に将来の目標を定めていなかった。

 学校生活はごく平凡で、朝は少し眠そうな顔をして登校し、授業中に教師に指されて慌てて教科書を開く日々。

 放課後は部活にも所属せず、小学生の頃からの幼馴染であり、親友の木村太一(きむら たいち)や渡辺加奈子(わたなべ かなこ)と一緒に過ごすことが多かった。

 

 

 学校近くのファミレスで、三人が集まって話すのはいつものことだ。この日は、探索者免許についての話題が中心だった。

 

「圭斗、免許の申請ってどうするか分かってんの?」

 

 太一は、手続きとかを調べるのが苦手なので、こういうのはいつも俺の役回りだ。

 だけど、こいつの将来を考えると少し心配になる。

 太一の家は街中華の店を経営している。

 将来、店を継ぐなら色々手続きを覚えなきゃいけないはずなんだが…

 

「ああ、手続きとか調べたけど、特に難しくなさそうだな」

 

「でも、免許取った後はどうするの?私たちの中に探索者一本で生きていこうと思ってる奴なんていないでしょ」

 

 もう一人の幼馴染、加奈子が言うとおり、俺たちは皆、探索者に憧れるような性格じゃない。

 

「それな。正直さ、俺はダンジョン攻略に命懸ける気はない。クラスの連中の中には、けっこうガチな奴らも多いけど、あいつら死ぬかもしれないって理解してるのか?」

 

「確実にしてないでしょ。ああ言う英雄願望が強いタイプは仲間にしたくないわね」

 

「まあ、分かるよ。俺もそこまでの覚悟はないからな。けど、免許持っとけば就職とかにも便利だし、取得だけはしておこうと思ってる」

 

 ダンジョン関連の仕事が主流となりつつある今の社会では、免許は何かと役立つと考えていた。 

 

「なら、私たち三人でパーティー組まない?」

 

 加奈子がとんでもないことを言い始めた。

 せっかく免許を取るのだから、少しくらいダンジョンに入ってみたいと言う思いは俺にもある。

 

「確かに、今さら他の奴を仲間に入れるのは気が進まないけど大丈夫なのか?ダンジョン攻略の適正人数は6人って聞いたぞ」

 

「それは、最前線で攻略しようとしている人たちの話でしょ。浅い階層で小遣い稼ぎしている人たちの中にはソロの人もいるくらいよ」

 

「ダンジョンにソロで潜るなんて…」

 

 それって、めちゃくちゃ危険なんじゃ?

 

「昔は危険だったらしいけど、今はスキル産の装備が一般的になってるから、趣味で潜るくらいなら問題ないらしいわ」

 

 そんなもんなのか?

 ダンジョン関係に興味がなかったから、あまり調べてはないけど、探索者を専業でやってるのはごく一部だったはず。

 死者も出てるし、過酷なものだと思ってた。

 

 そんな俺のイメージは、どうやら最前線で戦っているような探索者たちのものらしい。

 なら、心配ないか。

 

 ファミレスの窓越しに夕焼けが広がる街並みを見つめながら、漠然とした未来について語り合っていた。

 

 

 

 数日後

 

 昼休み、窓際の席で弁当を食べながら、俺、太一、加奈子の三人は、週末の予定について話していた。

 

「よし、決まりだな。土曜の朝、駅前集合な。ギルドに行って、そのまま試験受けてくる感じで」

 

「ちゃんと筆記試験の勉強した?」

 

「まぁ大丈夫だろ。基本的な安全ルールと関係規則を抑えていれば受かるって聞いたし」

 

 そんな俺たちの会話に、後ろから軽い声がかかった。

 

「免許取るつもりなの?なんだか意外ね」

 

 三人が振り向くと、クラスメイトである神崎玲奈が立っていた。

 

「神崎さん?」

 

「会話に割り込んでしまって、ごめんなさい。あなた達の話が耳に入ってしまって。ダンジョン探索に興味があるって感じでもなかったでしょ。だから気になってしまって」

 

「神崎さんは、ダンジョンに興味があるの?」

 

「まぁ、ちょっとね」

 

 玲奈は曖昧に笑うと、何かを思い出したように言った。

 

「ダンジョンに入るのって、世間で言われてるほど安全じゃないからね。ちゃんと準備して行ったほうがいいよ」

 

「具体的には?」

 

「例えば、どんな武器が自分に合っているのか?とか。あと、入る予定のダンジョンに出現するモンスターの特徴とか弱点をちゃんと事前に調べておくこと」

 

 玲奈の言葉には説得力があった。

 

「詳しいんですね」

 

「兄が探索者をしているの。まあ、週末に少し潜るくらいしかしてないけど、経験者から話を聞かせてもらってるから」

 

 玲奈はそう言うと、にこりと微笑んで自分の席に戻っていった。

 

 

「神崎さん、やっぱ雰囲気あるよな。さすが学校一の美少女って呼ばれてるだけあるわ」

 

「でも、ダンジョンの話に神崎さんが反応するなんて思わなかったわ。彼女、そういうことに興味なんてないと思ってたから」

 

「そうなのか?」

 

「けっこう有名よ。パーティーの勧誘、全部断ってるんだって」

 

「あっ、それは俺も知ってるわ。ついでに告白も断ってるらしい。どんなイケメンにも靡かないから、付いたあだ名が鉄壁だって」

 

「兄と組むつもりだから何処にも入るつもりはないって断ってたみたいだけど、建前じゃなかったのね」

 

 クラスメイトで凄い美人だとは思っていたけど、そんなに有名だったのか。

 確かに、たまに人間離れした雰囲気を感じるくらい綺麗だけど、俺たちに関わるようなこともないと思ってた。

 

 

 

 玲奈サイド

 

 玲奈はクラスメイトの一人、北原圭斗を見ながら、内心で妙な感覚を覚えていた。

 

「北原くんと兄さんは、全然違うはずなのに……どうしてだろう?」

 

 外見的な特徴に共通点はない。真人は彫りの深い端正な顔立ちに短髪、圭斗は柔和な印象を与える中性的な顔立ちで、無造作に伸ばした髪。それなのに、玲奈の精霊としての感覚は、どこか圭斗から兄に似た「波長」を感じ取っていた。

 

「もしかして、兄さんと北原くんには何か共通するものがあるのかな……。それとも、私の気のせい?」

 

 玲奈は圭斗をじっと見つめてしまい、本人に気づかれそうになったので、慌てて目を逸らした。

 

「え、なに?俺、何かついてる?」

 

「ううん、なんでもない。ただの気のせいだよ」

 

 玲奈はそう言って軽く笑ってみせたが、その胸の中に引っかかる感覚は消えなかった。

 玲奈にとって北原圭斗は、何故か気になる存在だった。

 そんな彼が友人とダンジョンに関わる話をしていたため、つい口を出してしまった。

 彼がダンジョンに入り、体にマナを宿せば精霊としての感覚でマナの流れを見ることが出来る。

 それを見れば、この違和感の答えが分かるかもしれない。

 

 彼がダンジョンに入る時は、注目しておこう。




 人物紹介

 北原 圭斗(きたはら けいと)
 本編登場時18歳
 玲奈のクラスメイト
 18歳になったことで探索者免許を取得しようと思っている。
 親友二人と共にパーティーを結成することになるが、本気でダンジョン攻略に取り組むつもりはなかった。
 顔はそれなりに整っているが髪型など身嗜みに気を使わないのでクラスではあまり目立たない存在。
 
 
 木村 太一(きむら たいち)
 本編登場時18歳
 玲奈のクラスメイト
 圭斗の親友の一人で、一緒に探索者免許を取りに行く予定。
 中華屋の一人息子で三人の中で一番料理が得意だったりする。
 
 
 渡辺 加奈子(わたなべ かなこ)
 本編登場時18歳
 玲奈のクラスメイト
 圭斗の親友の一人で、圭斗、太一とは幼馴染の腐れ縁。三角関係になりそうなものだが、恋愛関係に発展する気配はない。
 三人で探索者免許を取り、パーティーを組もうと提案した。
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