ダンジョンメーカー   作:ソロモンは燃えている

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第二十二話 初めてのダンジョン探索

 

 

 

 免許を取得した後、圭斗、太一、加奈子の三人はこのまま渋谷ダンジョンの一階層に挑むことにした。渋谷ダンジョンは当初、蜘蛛型モンスターを中心としたダンジョンだったが成長し、規模が拡大すると共に地形などのバリエーションが増え、出現するモンスターの種類も多様化していった。

 出現したばかりのダンジョンは、同系統のモンスターしか出ないため対策がしやすく、初心者向けとされている。

 この渋谷ダンジョンは、最初のダンジョンであり、幾度かの拡張を経て世界的には大規模なダンジョンとして有名だ。

 それでも一階層となれば弱いモンスターしか出ない。初心者向けのダンジョンと大差ない難易度になる。

 

 

 

 三人はギルドで初心者用の武器をレンタルし、ダンジョンの入り口に立った。洞窟のような入り口からは薄暗い雰囲気が漂い、冷たい空気が肌を撫でる。

 

「なんか、思ったより不気味だな……」

 

 太一が少し緊張した様子で言う。

 

「怖がってどうするのよ。何処のダンジョンも一階層で大した違いなんてないんだから、慌てなければ問題ないはず」

 

 加奈子は弓を肩にかけながら冷静に答えるが、その手は少し震えていた。

 

 圭斗は剣を握り直しながら二人を見た。

 

「とにかく、今日は一階層だけで軽く様子を見る程度にしよう。深追いは禁物だ」

 

 二人が頷くのを確認し、圭斗は剣を構えながら一歩を踏み出した。

 

 

 ダンジョンの奥に進むと、ぬるぬるとした音が聞こえ、青いスライムが一匹現れた。丸く透き通った体の中に小さな核のようなものが浮かんでいる。

 

「これがスライムか……あんまり強そうには見えないけど」

 

 圭斗がつぶやくと、太一が槍を構えて一歩前に出た。

 

「よし、まずは俺にやらせてくれ!」

 

 太一が突進し、槍をスライムに突き刺すと、ぷしゅっと音を立ててスライムは崩れた。中からは小さな魔石が転がり出てくる。

 

「おおっ!意外と簡単だな!」

 

 太一が槍を引き抜きながら笑顔を見せる。

 

「油断しないで。次が来るかもしれないわ」

 

 加奈子が弓を構えながら警戒していると、壁際から虫型モンスターが数匹這い出してきた。

 

「うわ、気持ち悪っ!」

 

 太一が後退しながら叫ぶが、圭斗が剣を振り下ろして一匹を両断した。

 

「そんなに強くないけど、動きが速いな」

 

 圭斗が冷静に分析しながら、もう一匹を蹴り飛ばして隙を作り、とどめを刺す。

 

 その間、加奈子は後方から矢を放ち、残りのモンスターを的確に仕留めていた。

 

「射程があると楽ね。近づかれなければだけど」

 

 数分の戦闘で全ての敵を倒し、三人は肩を落としながら一息ついた。

 

「思ったより簡単だったけど、動きが速いのは厄介だな」

 

 圭斗が剣を鞘に収めながら言うと、太一が笑いながら肩を叩いてきた。

 

「お前の剣さばき、意外とサマになってたぞ!」

 

 加奈子は手に入れた魔石を眺めながら口を開いた。

 

「これが魔石か……これを集めて装備を強化したり、売ったりするのね。」

 

「今日はこの辺りで引き上げよう。初めてで緊張してたし、無理はよくない」

 

 圭斗が提案すると、二人も同意し、初めてのダンジョン探索を終えた。

 

 

 ダンジョンを出ると、外の陽光が三人を包み込んだ。

 

「最初にしては上出来だな。次はもっと奥に挑戦しようぜ!」

 

 太一が意気込むが、加奈子がやや呆れた表情で制する。

 

「少しずつ慣れていくのが大事。調子に乗ると怪我をするわよ」

 

 圭斗は二人のやり取りを聞きながら、剣を握る手に力を込めた。

 

 ダンジョン攻略が簡単だと思ってはいけない。この世界はもう、そういう甘い場所じゃない。

 

 三人は一歩、探索者としての道を進み始めた。

 

 

 地上に戻った三人は、ダンジョンで得た魔石と素材を売却するためにギルドへ向かった。

 ギルド内は探索者たちで賑わい、売却カウンターには素材や魔石を抱えた探索者たちが列を作っていた。圭斗たちもその列に並びながら、カウンターの上に貼られた注意書きに目を向けた。

 

 ダンジョンから得たアイテムの売却について

 ・ダンジョンで得た魔石や素材は、ギルドまたはその系列店での売却が義務付けられています。

 

 ・ギルド以外での売却、または個人間の取引は違法です。違反が発覚した場合、重い罰則が科せられます。

 

 ・例外として、自分たちが使用するための装備品やアイテムの加工、保管は許可されています。ただし、売却目的での過剰な保持は監査の対象となる場合があります。

 

 圭斗は注意書きを読みながら、太一に顔を向けた。

 

「売れるのはギルドだけってことか。かなり厳しいな」

 

「まぁ、そうでもしないと市場が混乱するんだろ。特に魔石なんてめちゃくちゃ価値あるもんな」

 

 太一は既に手にしていた小さな魔石を見つめながら答えた。

 

「そうね。ギルドの管理があるからこそ、魔石の取引価格も安定してるんだと思う」

 

 加奈子が冷静に補足する。

 

 

 カウンターに到着すると、受付のスタッフが笑顔で迎えてくれた。

 

「いらっしゃいませ。売却されるアイテムをこちらにお願いします。」

 

 圭斗たちはバッグから魔石や素材を取り出し、カウンターに並べた。

 今回の収穫は、スライムと虫型モンスターの魔石7個と、虫型モンスターから得た外骨格の素材数点だった。

 

 スタッフが手際よくアイテムを計量・鑑定し、モニターに結果が表示される。

 

【売却アイテムの内訳】

 小魔石7個……1個あたり300円(合計2100円)

 虫型モンスターの外骨格(破損あり) ……1個あたり500(合計1500円)

 総額:3600円

 

「お疲れ様でした。今回の売却金額は3600円になります。こちらが売却証明書ですので、大切に保管してください」

 

 圭斗は売却証明書を受け取り、手元の端末に振り込まれた金額を確認する。

 

「これが俺たちの初収入ってわけか。なんか感慨深いな」

 

 太一が明るい表情で声をかける。

 

「そうだな。でも、そんな大した額じゃない。武器のレンタル料も考えるとギリギリ黒字でしかない」

 

 現実的な話をすると今回はほとんどプラスはない。武器のレンタル料は一つ1000円で計3000円。

 黒字は600円しかない。

 加奈子も頷いて、補足してくれる。

 

「初期の頃はモンスターの素材や魔石ってだけで希少価値があって値段が高かったらしいけど、探索者が増えていくにつれて価値が低下していって今の価格に落ち着いたのよ」

 

「おいおい、今くらい喜びに浸らせてくれたっていいだろ」

 

「すまん、すまん、ちょっと浮かれ過ぎてるように見えたから、現実を教えて落ち着かせようと思ったんだ」

 

「大丈夫よ。今後はダンジョンにいる時間を伸ばせば黒字も増えていくわ。まあ、それでもしばらくはお小遣い程度だと思うけど」

 

「はあ、現実は世知辛いな」

 

 三人はギルドを後にし、次回の準備について話し合いながら歩き出した。

 

「一応、売却が義務ってことは覚えておかないとな。下手にルールを破るとヤバそうだし」

 

 圭斗の言葉に、太一と加奈子も頷いた。

 

「まぁ、今のところは問題ないさ。むしろ、どれだけ稼げるかが楽しみだな!」

 

 

 ダンジョン探索を終えた三人は、近くのファミレスに立ち寄った。初めての戦闘と魔石の収穫で少し疲れつつも、どこか達成感を感じながら席に着いた。

 

「とりあえず、初ダンジョンお疲れ様ってことで乾杯!」

 

 太一が勢いよくジュースを掲げ、三人も笑いながらグラスを合わせた。

 

 

 料理が運ばれてくると、加奈子がフォークを手に取りながら話を切り出した。

 

「ねぇ、これからのことなんだけど……どう進めていくか考えておいた方がいいと思うのよ」

 

「まぁ、安全第一だよな」

 

 圭斗はハンバーグを切り分けながら頷いた。

 

「初めてだから緊張したけど、スライムとか虫程度ならなんとかなる。でも油断して深追いしたら痛い目見そうだし」

 

「だよなぁ。俺も、もうちょっと慣れてからでいいと思うわ」

 

 太一も同意しつつ、ポテトを口に運ぶ。

 

「スキルってやつも覚えてみたいし、まずは一階層を何回か回って、少しずつレベルアップだな」

 

 加奈子は頷きながら真剣な表情で言葉を続ける。

 

「それと……ダンジョンで戦い続けてたら、強くなっていくじゃない?そうなるとスポーツ大会とかには出られなくなるのよ」

 

「え、それってマジ?」

 

 太一が驚いた顔をして加奈子を見つめた。

 

「本当よ。調べたら、ダンジョンでの戦闘経験が規定を超えるとスポーツの公式大会に参加できないみたい」

 

 加奈子が真剣に話すと、圭斗は少し考え込んだ後、肩をすくめて答えた。

 

「別にいいんじゃないか?俺たちは誰も部活に入ってないし、スポーツの大会とか目指してるわけでもないだろ」

 

「確かに、それはそうだな」

 

 太一は笑いながら、またポテトを口に運んだ。

 

 加奈子も苦笑しながら頷いた。

 

「まぁ、そうね。私も大会に興味があるわけじゃないけど、気になったから一応話しておこうと思って」

 

「ありがとな。でも、俺たちはスキルとか魔石が手に入るほうが面白そうだし、それに集中しようぜ」

 

 太一が明るい声で締めくくると、三人は自然と笑顔になった。

 

「じゃあ、これからは安全第一で少しずつ進めるってことで決まりだな」

 

 圭斗がそうまとめると、加奈子と太一も満場一致で頷いた。

 

「そうね、スキルを一つ覚えるまで続けてみましょう。それくらいまではやりがいもありそうだし」

 

 加奈子が言い、太一も楽しげに付け加える。

 

「早く俺の槍スキルが覚醒しねぇかな~!そしたらもっと格好良く戦えそうだし!」

 

 圭斗はそんな二人を眺めながら、これからの探索者としての日々に少しだけワクワクする自分を感じていた。

 

 ファミレスを出た三人は、次回のダンジョン探索に向けての小さな決意を胸に帰路についた。

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