ダンジョンメーカー   作:ソロモンは燃えている

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第二十五話 1〜3階層

 

 

 

 圭斗たちは探索者免許取得から1週間が経ち、再び渋谷ダンジョンへと足を運ぶ。前回の経験を踏まえ、今回はより多くの戦闘経験を積むことを目標にしていた。

 

 前回と同じく初心者用の武器をレンタルし、ダンジョンへと入っていく。

 

「さて、今日はモンスターとの戦闘に慣れるのが目的だ。とりあえず数をこなすか」

 

「どの辺で狩る?やっぱ週末だけあって人が多いな」

 

 三人が周辺を見回すと多くの探索者がダンジョンの奥へと進んでいる。

 ダンジョンの深部を目指す探索者はごく一部。ほとんどが週末に狩りを楽しむため、あるいはお小遣いを稼ぐためにダンジョンに通う者達だ。

 

「初心者向けの浅い階層は、週末混み合うからね。1〜3階層で人の少ない場所を探しましょう」

 

「どんなモンスターが出るんだっけ?」

 

「あんたねぇ、神崎さんが言ってたこと忘れたの?ちゃんと出現するモンスターの種類くらい調べてきなさいよ」

 

 1階層はスライムや小型の虫型モンスターが出る。2階層、3階層はゴブリンやコボルトが出始めるが数も少なく、あまり脅威ではないとされている。

 

 1階層を歩きながら、時折見かけるスライムやレッサースパイダーなどを倒していく。

 圭斗が手際よくスライムのコアを切り裂けば、太一が槍を薙ぎ払い、複数の虫型モンスターを撃退する。

 二人の後方から加奈子の弓矢が確実にモンスターを射抜いている。

 

 

 2階層に降りて、ここからは亜人系のゴブリンやコボルトが現れるようになるので圭人たちは気を引き締めて慎重に先へと進んでいく。

 

「おっ、ゴブリンだ。しかも一匹だけみたいだな」

 

 太一がゴブリンを発見する。

 まだ、ゴブリンはこちらに気付いてないようだ。

 

「よし、後ろから仕掛けよう。

 加奈子が矢を放つと同時に仕掛ける」

 

「任せて」

 

 圭斗と太一が後方から静かに近寄る。

 

 二人がある程度接近したタイミングを見計らって加奈子が狙いを定めていた矢を放った。

 

「ギャッ!」

 

 矢が背中に突き刺さり、突然の痛みにゴブリンがよろめく。

 その隙を逃さぬよう、圭斗たちが飛びかかっていく。

 

 敵の存在に気付いたゴブリンが振り返るがその腹部に太一の槍が突き立てられた。

 槍が刺さり、身動きが取れないゴブリンへ圭斗が剣を振り下ろす。

 肩口から切り裂かれて致命傷となり、ゴブリンが消えていく。

 後には魔石が残されていた。

 

「人型のモンスターだから、もっと躊躇いが出るかと思ってたけど、そうでもなかったな」

 

「まあ、形が似てるってだけで人からかけ離れた姿だし、あれだけ殺意をむき出しにしてたらね」

 

「突然矢が刺さったってのに即殺意を向けてきたな。とどめを刺されるまでまったく怯まなかったし…」

 

「モンスターはこちらを殺すことしか考えてない。話し合いが通じる相手じゃないってことが実感として理解できたよ」

 

 ダンジョン出現直後は、モンスターを野生動物と同様に考え、無闇に殺すのは良くないと主張する動物愛護団体もいた。

 今ではそんな話は全く出てこない事がモンスターと分かり合う事は不可能だと示している。

 

 その後、2階層や3階層を探索し、ゴブリンやコボルトを倒していった。

 

 三匹以上のグループもいたが、太一が前衛で牽制し、加奈子が後方から狙撃。圭斗は横から奇襲を仕掛けて倒すといったコンビネーションで問題なく倒せた。

 3人での戦闘に慣れていくと、チームワークも自然と良くなり、戦闘がスムーズに進むようになっていく。

 ゴブリンとコボルトのグループと同時に遭遇してしまった時は、焦りを感じてしまったが個々の力は思ったよりも弱かったことで態勢を立て直し、一匹づつ落ち着いて倒していく。

 この日、初めての苦戦だったが結局かすり傷程度で勝利することができた。

 

「ダンジョンに潜ってからどれくらいだ?」

 

 ここまで休憩を取りながら進んで来たとはいえ、流石に疲れを感じ始めていた。

 

「入ってから4時間ってところね」

 

「魔石や素材も結構溜まったし、そろそろ切り上げようか」

 

「なあ、ダンジョンのモンスターってこんなもんなのか?」

 

「太一、油断は良くないって言ったでしょ」

 

「いや、加奈子だって思わないか?歯応えがないって」

 

「まあ、多少は思ってるけど…」

 

 3階層まで進んだところで、全員が少し物足りなさを感じていた。

 

 「少しだけ4階層を覗いてみようか」と圭斗が提案し、全員で慎重に進むことに。

 

「4階層からは、狼型モンスターのグレイウルフが出るらしい。って言ってるそばから来たな」

 

 一匹のグレイウルフが通路の奥から走り寄ってきた。

 4足の獣だけあって、やはりかなりの速さだ。

 太一が間合いに入ったグレイウルフに槍を突き出すが俊敏な動きで狙いを外されてしまう。

 槍を回避したグレイウルフがそのまま太一に飛び掛かる。

 

「太一!」

 

 圭斗はウルフのスピードに翻弄されつつも、何とか反応して空中のグレイウルフに切り付ける。

 咄嗟の行動だったため、傷は浅いが太一から引き離すことには成功した。

 

「サンキュー、圭斗」

 

「気を抜くなよ、太一。確実に削っていくんだ」

 

「おう!」

 

 太一は槍のリーチを活かして点ではなく線の動きでウルフの動きを制限する方針に変えた。

 槍による突きは強力ではあるが攻撃範囲が狭く、動きの速い相手を捉えるには相応の技量がいる。

 ウルフの速さに加奈子も狙いを定めるのに苦労していた。

 武器の扱いを補助するスキルが有れば話は違うのだろうが、三人はまだスキルを習得していない。

 結果、太一が槍を打ちつけ動きを止めたところに圭斗が切り付けることでダメージを与えていく。動きが鈍ったグレイウルフに加奈子の矢が突き刺さり止めとなった。

 

 

 グレイウルフとの戦闘は、一歩間違えば大怪我をしていたかもしれない。それだけの緊張感があった。

 たった一度、それも一匹を相手にしただけなのに全員が疲れを感じていた。

 

「今日はもう引き上げましょう」

 

 加奈子の提案に反対するものはいなかった。

 肉体的にも精神的にも疲労が溜まっている状態で無理をしても碌なことにならない。

 三人は地上へと戻っていった。

 

「4階層、やっぱり急に難しくなったな」

 

「だな。でも、俺たちなら次はもっと上手くやれると思う」

 

「そうね。でも無理は禁物。次はしっかり準備してから挑みましょ」

 

 三人は強敵との戦闘を乗り越えた達成感と共に、次の挑戦に向けての反省点を胸に秘め、ダンジョンを後にした。

 

 

 

 

 真人サイド

 

 マナ空間では、真人と玲奈がディスプレイを通じて圭斗たちの戦闘を観察していた。ディスプレイには彼らの戦闘の様子が映し出されている。

 

「なるほど、確かに成長が早い。最初はぎこちない動きも多かったけど、今じゃ立派に戦えてる」

 

「兄さんから見ても、やっぱり成長が早いの?」

 

「そうだな。マナの吸収率も高いがそれだけじゃない。戦闘中も仲間の動きをよく見てるし、自分がどう動くべきか瞬時に考えてるのが分かる」

 

 マナの吸収率が高いだけでは探索者として大成できない。

 アーサーが三英傑と呼ばれるまでになったのもマナの吸収率と真人の武器だけが理由ではないのだ。

 真人は画面をじっと見つめながら、圭斗たちの戦闘の様子を細かく観察していた。

 

「渡辺って子が弓を使っているのはちょっと珍しいな。最近の探索者は近接武器が多いから、弓使いってあまり見ない」

 

「弓って難しいもんね」

 

「経験者か?」

 

 ダンジョン出現当初は、モンスターから距離を取れることから遠距離武器が好まれたが弓はすぐに使う人間が少なくなってしまった。

 昔から弓兵は維持するのが難しい兵種だった。

 それほど扱えるようになるには多くの訓練が必要なのだ。

 だから、真人は弓道部か何かで経験があるのだろうと予測していた。

 

「渡辺さんの叔父さんがアーチェリーの選手だったらしくて、昔、教えてもらってたって聞いたことがあるわ」

 

「なるほどな。どうりで初めてのダンジョンの割には、狙いが正確だったわけだ」

 

 射撃術などのスキルを習得した者にとっては弓は有用な武器になる。

 だが、スキル取得前にこれほど扱えるのは経験者と言えど滅多にいない。

 玲奈の言葉に真人は納得した様子で頷き、画面の中でコボルトを仕留める加奈子の姿を見つめる。

 

「北原君だけじゃなく、仲間の友人たちも有望そうだな」

 

「そうなの?」

 

「ああ、北原君と比べればマナの吸収率は落ちるが、それでもかなりの才能がある」

 

 真人のスキル「分析」はマナの流れを見ることでその性質を知ることができる。

 その真人の目が太一と加奈子に流れ込むマナの量も世界ランカーに匹敵するものだと捉えていた。

 

 

「4階層は少し無茶だったかもしれないけど、全員無事で良かった。…皆、本当によく頑張ってる」

 

「木村君もな。体内のマナの流れを分析してみたけど、なかなか面白い成長をしそうだ」

 

 玲奈が「北原君たちが次にどう成長するのか楽しみね」と微笑むのを見て、真人は少しだけ安心した表情を見せた。しかしその裏で、圭斗の成長速度が異常であることも理解していた。

 

(北原圭斗…その異常な成長、どこまで隠せるだろうか?)

 

 空間を漂うマナの輝きを見ながら真人は思考の海へと潜っていく。

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