ダンジョンメーカー   作:ソロモンは燃えている

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第二十八話 スキル覚醒

 

 

 

 無事に期末試験を乗り越え、誰も補習を受けずに済んだ。

 

 夏休みに入った圭斗たちは、初めての探索に臨んだ。先日購入した新しい剣を手に、圭斗は気合が入っていた。

 

 少し足を伸ばして5階層に行くと、さっそくグレイウルフ3体とコボルト4体が連携して襲いかかってくる。

 

「くるぞ!太一、前に出てコボルトを引きつけてくれ!加奈子はウルフを狙撃!」

 

「了解!」

 

「任せて!」

 

 太一が槍でコボルトを牽制し、加奈子が弓でグレイウルフを狙撃する中、圭斗は新しい剣を手にグレイウルフの一体に向かって突進した。

 

 グレイウルフが鋭い爪で斬りかかるも、圭斗はそれを素早く回避し、反撃の一閃を放つ。

 

「やっぱりこの剣、レンタル品とは切れ味が段違いだな!」

 

 しかし、ウルフに与えた傷は浅く、一度後退してか、再び跳びかかってきた。

 

 くそっ、切れ味は十分なのに…もっと深く踏み込まないと大したダメージは与えられないか。

 ウルフたちは連携をとりながら動いている。

 一匹に手間取っているわけには行かないのに!

 

 圭斗の葛藤など知らぬとばかりにウルフが入れ替わりながら飛びかかってくる。

 

 いつ加奈子の方に向かってしまうかも分からない。

 勇気を出して踏み込むんだ!

 

 何度目かの飛び掛かりの時、圭斗は退くのではなく、逆に前に出て間合いを詰める。

 

 そのとき、圭斗の中で何かが弾けるような感覚が走る。剣を振った瞬間、風を切る音が通常よりも鋭く響いた。

 

「……なんだ、これ?」

 

 剣がグレイウルフの体を深く切り裂き、一撃で倒すことに成功した。

 

 戸惑いながらも次のウルフに狙いを定め切りかかっていく。

 今までの苦戦が嘘のように大きなダメージを与えることが出来る。

 

 分かる、剣をどんな角度で振り下ろせば良いのか。取るべき間合いも。

 

 あっという間にウルフたちは駆逐され、程なくコボルトも倒されて戦闘は終わった。

 

「おい、今の動き……ただの剣技じゃないよな?」

 

「圭斗、もしかしてスキル覚醒したんじゃない?」

 

「ああ、剣術を習得したみたいだ……剣の扱いに補正が付くスキルなのは知ってたけどこんな感覚だったんだな」

 

「すごいじゃない!これでさらに戦闘が楽になるわね」

 

「羨ましいな……俺も早くスキルを覚えたいぜ」

 

「まぁ、焦らずやろう。スキルがあっても油断したら死ぬのは変わらないしな」

 

 

 太一には疑問があった。

 それは圭斗と自分達の間にある成長速度の違いだ。

 明らかに圭斗の成長が早い。

 ダンジョンで戦っていても圭斗の動きはどんどん良くなっていく。

 実際にスキルにも一番早く覚醒した。

 今は大したことない差だが、このまま圭斗が手の届かないところまで行ってしまうのではないかと不安を感じていた。

 

 

「なあ、免許取ってから一カ月でスキル覚えるのって早いのか?」

 

「うーん、どうなんだろう。探索者の掲示板とか見ると、一カ月で覚える人もたまにいるみたいだけど」

 

「まあ、そこそこくらいじゃないか?俺たち、適正人数の半分でやってる分、成長も早いはずだし」

 

「そっか。なんだかんだ俺たち、ここまで順調にきてるから結構イケてるかもって思ってたんだけどな」

 

 太一は、少し安堵していた。

 圭斗がとんでもない才能を持っていて、自分たちとは違う世界に行ってしまうことを恐れていたが、そこそこの才能ならそんな事にはならないだろう。

 それくらいの差なら装備やアイテムでどうにかなるはずだ。

 

 

 

 

 マナ世界

 

「……そんなわけないだろ」

 

 ディスプレイで圭斗たちの戦いを観察していた真人が呆れた表情で呟く。

 

 その呟きに玲奈が問いかける。

 

「そんなにおかしい?適正人数の半分でやってるから、マナの吸収効率も良いはずでしょう?」

 

「玲奈、普通はそんな簡単にスキルは覚えられない。いくら適正人数より少なくても、一カ月で覚醒するなんて聞いたことがない」

 

「でも、掲示板にはたまにそういう人もいるって書いてあったよ?」

 

「ああ、いるにはいるだろう。でもそれは、特別な才能を持った者が、ものすごい努力をしている場合だ。北原君たちは、そこまで無理をしていなかった」

 

「兄さんだって簡易ダンジョンをいくつか攻略しただけでスキルを習得したよね?それこそ、時間にしたら2、3日くらいで」

 

「あの時は気付かなかったけど、今は俺が普通じゃないって理解している。おそらく、俺はマナに対する親和性が異常に高いんだろう」

 

「……じゃあ、兄さんが驚くほど成長が早い北原君は何か特別な素質があるってこと?」

 

「その可能性が高い……あいつは普通じゃない。俺も何か引っかかるものを感じてる」

 

 圭斗たちの戦闘映像をディスプレイに映す。

 

「……動きがどんどん良くなってる。スキルを覚える前から、戦いの中で自然と効率のいい動きを体得してる。普通なら訓練が必要な部分を短期間で……」

 

「兄さん、本当にそこまで驚くこと?北原君は、ただ少し成長が早いだけじゃないの?」

 

「玲奈、これは“早い”とかのレベルじゃない。“異常”だ。もし俺が関与していたらまだしも、あいつらは完全に自力でここまで来てるんだ。違うか?」

 

「うん、私も北原君たちには何もしてないよ」

 

「だとしたら、北原君には尋常じゃないマナの親和性がある。スキルの覚醒もそうだけど、それ以上に戦闘中の成長速度が普通じゃない」

 

 圭斗のあまりの才能に珍しく戸惑いを浮かべている真人の様子を心配そうに見つめながら玲奈が小声で呟く。

 

「兄さんが言う北原君が普通じゃないって……どういう意味なんだろう」

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