ダンジョンメーカー   作:ソロモンは燃えている

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第三十三話 新たな目標

 

 

 

 渋谷ギルドで免許を取得してからわずか数週間の圭斗たち。

 しかし、彼らが納品する素材の量と内容は、明らかに異常だった。

 

 最初の納品は初級のスライムや小型モンスターの素材だったが、その後急速に納品される素材がグレードアップしている。

 現在では、7〜9階層で見られるヒュージスパイダーやポイズンスパイダーの素材まで含まれていた。

 

 

 受付のスタッフたちは、納品を受け付け、探索者の実績を記録する関係上、圭斗たちの異常な攻略ペースをその目で見ていた。

 

「ちょっと待って、このペース、普通じゃないよね。

 免許を取ってまだ1カ月くらいなのに、もう7階層まで到達してるの?」

 

「いやいや、週末しか活動してなかったはずでしょ?

  他のダンジョンに潜ってる可能性も考えたけど、それでもこの進行スピードはおかしいわ」

 

「普通なら、初期の探索者が7階層までたどり着くには、少なくとも3〜6カ月はかかる。

 しかも、この短期間でスキルまで覚醒してるなんて…ギルド内の記録を見ても、彼らのペースは前例がない」

 

「素材の質もそうだけど、量も異常だよ。

 彼らは三人だけのパーティーだろ?

 どうやってこれだけの素材を集めているんだ?」

 

 

 ギルドの運営チームも、圭斗たちの進行ペースについて注目し始める。

 ギルド内では、彼らが「異常な才能を持った新人」として一部で噂されており、過去の記録と照らし合わせる動きが出ていた。

 

「彼らは本当に他のダンジョンで経験を積んでいないのか?

 なら、実績をでっち上げるために何か違反行為をしているのでは?」

 

 と疑問を抱く運営陣。

 

 いくら確認しても他のダンジョンに入場した記録は見つからなかった。

 しかし、圭斗たちはきちんとギルド規定に従い、素材の納品を行っている。

 他のパーティーとトラブルになっているという報告もない。

 納品される素材に違法性はないと判断するしかなかった。

 結果として、ギルドは困惑しつつも、彼らの成長を静かに観察するしかない状況だった。

 

 

 そんな中で圭斗たちがクイーンスパイダーの素材を納品したことは、ギルドに更なる爆弾を投げ込むような行為だった。

 

「次の階層に進む前に、この素材を処理してもらおう」

 

「…本当に10階層を攻略したんですね」

 

「ええ、けど、けっこう苦戦してしまいました」

 

「素材の品質、問題ないですよね?」

 

(いや、品質の問題じゃない…ペースがおかしいんだよ…)

 

 受付スタッフは内心で突っ込みを入れつつも、彼らの報告が正確であり、素材がしっかり採取されていることを確認するしかなかった。

 

 

「よし、これで新しい装備も買えるな」

 

「次は11階層ね」

 

「くぅ、楽しみだな」

 

(なんで、そんな何でもないことのように次の階層の話が出るんだ!?

 もっとこう…何かあるだろ!)

 

 ギルドの受付は悟った。

 あ、コイツら普通じゃないわ、と…

 

 

 

 渋谷ダンジョンの11階層からは、モンスターの強さが一段階上がる。

 出現するのは、亜人系モンスターの上位種であるボブゴブリンやハイコボルト。

 それぞれが通常種とは比較にならないほどの知能と戦闘力を備えており、敵との遭遇はこれまで以上に慎重さが求められる。

 

 11階層に潜ってすぐ、圭斗たちは亜人モンスター特有の高度な連携と奇襲戦法に直面する。

 これに対応するための切り札は、加奈子の風魔術だった。

 

「この辺り、空気の流れがおかしい…近くに何かいるわ」

 

 風魔術を習得してから空気の流れを敏感に感じ取れるようになった加奈子は、周囲の環境に微妙な変化があると察知することができる。

 風の流れが遮られたり乱れたりすることで、モンスターが隠れている場所を特定することができた。

 

「加奈子、感知した位置を教えてくれ。

 こっちは先に動ける準備をしておく」

 

「右前方、20メートルくらい。何かが3体くらい茂みに隠れてる」

 

「茂みにいるなら、出てくる前に槍で仕留めるか」

 

「そうだな、リーチの長い槍を茂みに突き刺そう。

 茂みから飛び出してきた奴らは俺が対応する。

 加奈子は後方から援護射撃を頼む!」

 

「了解!」

 

 太一が槍のリーチを活かして茂みに潜むモンスターに突き入れる。

 その瞬間、茂みから現れたハイコボルトに圭斗が正面から切りつける。

 そこに加奈子の矢が襲う。

 奇襲するために潜んでいたのに、逆に先制攻撃を受けてしまい、ハイコボルトは呆気なく討伐された。

 

 戦闘そのものは圧倒することが出来たが、三人は亜人系モンスターの上位種がこれまでの敵とは段違いに強いことを実感していた。

 

「やっぱりこいつら、普通のゴブリンやコボルトとは全然違うな…あれだけキレイに逆奇襲が成功したのになかなかとどめを刺せなかった」

 

「楽に勝てたのは加奈子のおかげだな。

 風魔術で奇襲を避けられるのは大きい」

 

「うん。でも、これから先もこんな楽に行けるとは思わないでよ。

 今回は相手の狙いを逆手に取れたからで、正面から来られたり、戦闘中に伏兵があったりすると対応できないかもしれないんだから」

 

 11階層に進むことで敵の強さに応じた対策を講じる必要が出てきた。

 加奈子の感知能力がなければ、今の実力では力負けしてしまうかもしれない。

 この階層で安定して狩りをするためには、更なる成長が必要だった。

 

 

 

 11階層からの挑戦を終えた後、ファミレスで休憩中に太一が話を切り出した。

 

「なあ、ちょっと聞いてくれ。

 親父がまた妙なこと言い出したんだよ」

 

「妙なこと?」

 

「どうせまた、中華屋に関係する話だろ」

 

「その通りだ。

 最近、モンスター肉が結構高値で取引されてるだろ?

 それを聞いた親父が、『ウチの店でも出してみたい』って言い出してさ」

 

「ええっ!?モンスター肉って普通の人が食べても大丈夫なの?」

 

「種類にもよるけど、ちゃんと処理されたやつは問題ないらしい。

 特に、14階層以降に出るオークの肉は、味が良くて結構人気なんだと」

 

「それは、俺も聞いたことあるな。

 一部の高級料理店とかで取り扱ってるとか」

 

「初期の頃は、モンスター肉を食べればダンジョンで戦わなくても強くなれるんじゃないかって噂になって、色々試されてたんだってよ」

 

「へえ、結果はどうだったんだ?」

 

「全然ダメ。効果なし。

 でも、普通の肉よりめっちゃ美味いってことは分かった」

 

「それでモンスター肉を取り扱う店が増えているのか」

 

「そういうこと。

 俺が探索者やってるから自前で調達できれば高いモンスター肉を仕入れなくても行けるんじゃないかって…」

 

「ちょっと待って!

 オークって強いんじゃないの?

 私たちには、まだ無理よ」

 

「まあ、それは分かってるさ。

 今すぐって話じゃない。

 でも、俺たち10階層のボスを倒して目標がぼやけてしまってるだろ?」

 

「確かに、今の俺たちは地に足が着いてない感じがするな。

 オークは強敵だけど…当面の目標にするのもアリか。

 ただし、しばらくはこの階層で地力を上げることに集中しよう」

 

 次の目標を定めても、すぐに挑戦できるわけではない。

 勇気と無謀は別物だ。

 強敵と戦うためには相応の準備が必要。

 マナを吸収し、武器や防具のさらなる強化。

 スキルの扱いも熟練させ、威力を上げたり、応用の幅を広げたり。

 それらを組み合わせて新しい戦術を考案する必要もあるかもしれない。

 

 

「正直、親父の店のためっていうのもあるけど、オークを狩れるくらい強くなりたいって気持ちもあるんだよな」

 

「じゃあ、しっかり準備して挑みましょう。

 後、料理ができたら試食くらいさせなさいよ」

 

「よし、これからは、オーク狩りを目標にレベルアップしていこう」

 

 次の挑戦に向けて、三人はさらに結束を深め、14階層を目指すことを決めた。

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