玲奈の精霊化は、リアルでありながら夢のように感じられた。彼女の体は、もはや肉体ではなく、青白い光の塊のようだったが、その目に宿るのは確かに妹の意識だった。彼女が微笑んで、再び真人を見つめる。
「お兄ちゃん…ありがとう。私はまだ、大丈夫」
その声は、柔らかく、どこか懐かしさを感じさせる。しかし、真人の心の中に警告のような冷たい感覚が走った。玲奈の存在が不安定で、どこか遠く、変わり始めているように思える。
「玲奈…お前、どうしてこんなことに…」
「私は、もう死んだんだよ。けれど、マナの力が私を精霊にしてくれた」
玲奈は、光の中でその姿をゆっくりと動かしながら答えた。その光の中に漂う彼女の存在は、あまりにも神秘的で、目の前にいるという実感が薄れていく。しかし、それでも彼女の言葉はしっかりと響く。
「だけど、私は…時間が限られているの。マナの力によって精霊として蘇ったけれど、いずれ、私はその力に飲み込まれてしまう。だんだんと、私の意識は薄れて、マナの力が強くなり、最終的にはモンスターとして旧生物種を駆逐することになると思う」
その言葉を聞いた瞬間、真人の胸に冷たいものが走った。玲奈を失わずに済んだと思ったのに、何か別のものに変わってしまうと言うのか!玲奈がそうなるのを、どうしても見過ごすわけにはいかない。
「玲奈…お前が、モンスターになったら…俺はどうすればいいんだ…?」
「それが、私の最期なんだろうけれど…もし、お兄ちゃんが私と契約を結べば、私はモンスターに堕ちることなく、意識を保ち続けることができる」
玲奈は、淡く輝く姿で空中に浮かびながら言った。その表情には、強い決意が込められていた。
「契約…?」
「そう。お兄ちゃんと私が契約を結ぶことで、私の意識は守られる。それに、私の力もお兄ちゃんの力になって、私たちは一緒にこの世界を守ることができるよ」
「契約って…そんなものが本当に存在するのか…?」
「私が精霊として生きるための条件でもあるの。マナの力を使って契約を交わすことで、私の意識はしっかりと保たれ、モンスターになることを防ぐことができる」
真人はしばらく黙って考えた。玲奈がモンスターとなって、世界を脅かす存在になってしまうなんて、耐えられない。彼女の言う通り、契約を結べば、その運命を避けることが出来るのか。
「わかった、玲奈…契約を結ぶ」
彼の決意が固まった瞬間、玲奈の精霊の姿がわずかに輝きを強め、彼に向けて微笑んだ。
「ありがとう、お兄ちゃん…これで私は…」
その言葉が終わると同時に、玲奈の体から強い光が放たれ、その光が真人の体に吸い込まれるように集まった。目の前に現れるのは、ただの光の塊ではなく、玲奈の精霊としての力そのものが集約され、契約を交わした証が見て取れる瞬間だった。
その光の中から、彼の体に伝わるような温かなエネルギーが流れ込んできた。まるで彼女の存在が、肉体を超えて魂そのものとして、真人と一体化するかのような感覚だった。
「これで、私の意識は守られる。お兄ちゃん、ありがとう」
玲奈の声が再び響く。それは、先ほどの柔らかな声よりも、どこか安定した強さを持った声に変わっていた。
「これで、お前は本当に…大丈夫なのか?」
「うん、私はこれで…まだ、あなたのそばにいられる。モンスターになることなく、力を使ってお兄ちゃんを守り、戦うことができる」
玲奈の精霊としての力は、すでに確かなものとなっていた。契約を結んだことで、彼女はもはや肉体を持つことはないが、精霊として、彼女の存在はリアルに感じられるものとなった。
「ありがとう、玲奈…これからは、俺と一緒に戦ってくれ」
「うん、一緒に戦おう。私がいる限り、お兄ちゃんは一人じゃない」
その言葉に、真人は涙をこぼしながら頷いた。今、彼の心にはもう不安はなかった。妹が精霊として、彼の力となって支えてくれる。それだけで、十分だった。
「俺たち、絶対に生き延びよう。そして、あのモンスターたちを止めるんだ」
「うん、お兄ちゃん。私と一緒に、最後まで」
ヒロインの妹ちゃんが速攻で死んでしまいました。
でも、これから彼女が主人公の心の支えになっていきます。