不思議な空間から光が収束し、真人は再び渋谷の喧騒の中へと引き戻された。耳をつんざく悲鳴と瓦礫の崩れる音、遠くで何かが爆発する轟音が周囲を満たしている。
「ここは…渋谷。戻ってきたのか…」
周りには、そこは地獄絵図のような光景が広がっていた。人々がモンスターから逃げ惑い、所々で倒れたまま動かない人の姿も見える。モンスターたちは容赦なく襲いかかり、建物を破壊し、人々を蹂躙している。
真人は腕の中にいたはずの玲奈を見下ろそうとするが、彼女の姿はどこにもない。その瞬間、耳に聞き慣れた声が届いた。
「お兄ちゃん!あそこ、助けに行くよ!」
声のする方を見ると、精霊化した玲奈が輝く身体を浮かばせながら、モンスターに囲まれた人々を指差している。その瞳には確かな意志が宿っていた。
「玲奈!でも、どうやって…」
「私はもう精霊だから大丈夫。お兄ちゃんは私の後ろで見てて。守るから」
玲奈はその言葉を終えると、青白い光の軌跡を描きながら、モンスターたちの群れへと飛び込んだ。彼女の体から発する光が周囲を包み込み、そこにいたモンスターたちを一瞬で吹き飛ばす。
「す、すごい…」
真人は呆然とその光景を見つめていた。モンスターたちが次々と襲いかかるが、玲奈は躊躇なくそれを迎え撃つ。手には光でできた長槍のようなものが現れ、華麗な動きでモンスターを切り裂いていく。
その一方で、玲奈の声が民衆にも届く。
「早く逃げて!私がここを守るから!」
驚きと恐怖で足がすくんでいた人々は、玲奈の姿を見て我に返り、指示に従って避難を始めた。彼女が発する光は、恐怖を和らげるような安心感を伴っていた。
玲奈の戦闘は圧倒的だった。彼女の精霊としての力は、通常の人間が扱えるものをはるかに超えており、周囲のモンスターを次々と圧倒していく。
一方で、真人もただ見ているだけではいけないと思い、瓦礫の下敷きになった人を助けたり、安全な避難経路を指示したりして動き回った。モンスターの数は多いが、玲奈の働きでその勢いは徐々に削がれていった。
「お兄ちゃん、そっちはどう?」
「なんとか人は避難できたみたいだ。でも、まだ数が多すぎる!玲奈、大丈夫か?」
「まだ平気。でも、これ以上は…時間がないかもしれない」
玲奈は自分の体が少しずつ光を失いかけているのを感じていた。精霊としての力には限界があり、長時間の戦闘はそれを急速に消耗させる。
「玲奈、無理するな!もう逃げよう!」
真人の叫びに、玲奈は少し迷った様子を見せたが、やがて頷いた。
「わかった。だけど、もう少しだけ…」
そう言うと、玲奈は最後の力を振り絞り、大きな一撃を繰り出した。彼女の光の槍が地面に突き刺さると、そこから波紋のように光が広がり、周囲のモンスターを一掃する。その瞬間、渋谷の一角に一時的な静寂が訪れた。
玲奈の戦いを目撃した人々は、彼女の姿にただ見入っていた。彼らの目には、人間ではない何か――それでも、モンスターとは違い、彼らを助ける存在として映った。
「さっきの…あれは、何だったんだ…?」
「神様…いや、でも人間じゃないよな…」
「あの子が私たちを助けてくれた…」
人々の間でざわめきが広がる中、玲奈は真人に向き直った。
「お兄ちゃん、行こう。これ以上ここにいると、また新しいモンスターが来るかもしれない」
真人は頷き、玲奈とともに渋谷を後にした。彼女の光が徐々に弱まりつつあるのを感じたが、今はそれを問い詰める余裕はない。ただ、次に何をすべきかを考えながら、二人は安全な場所を目指して走り出した。