ダンジョンメーカー   作:ソロモンは燃えている

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第九話 プライベートダンジョン

 

 

 真人は、これからの戦いに備えて、自分専用の小さなダンジョンを作ることを決めた。精霊化した玲奈の存在を維持するためには、魔石を集め続ける必要があったからだ。世界中にダンジョンを作る大きな計画の前に、まずは手軽にモンスターを倒し、魔石や素材を集めるための場所を作ることから始める。

 

「こんな小さなダンジョンでも、魔石が手に入るなら十分だよね」

 

 真人は、閑静な郊外の一角に適した場所を見つけ、ダンジョンを作る準備を進めていく。今回作るダンジョンは簡易ダンジョン。規模が小さく、最奥にボスモンスターが存在し、それを倒すとダンジョンは消滅する仕組みだ。ダンジョンの設計には、玲奈の助けを借りた。

 

「さあ、準備完了だ」

 

 入り口に立ち、真人は深呼吸をした。ダンジョン内の空気が、微かに違和感を感じさせる。モンスターとの戦いを予感させる雰囲気だ。だが、それこそが彼にとって必要なものだ。

 

 

 

 ダンジョンに足を踏み入れると、いくつかの小型モンスターが現れた。ゴブリンやスライム、あるいは小さな虫のようなモンスターたちが、真人を目ざとく見つけて襲いかかってきた。

 

「…小型のモンスターばかりか」

 

 だが、これはリアルな戦闘。油断は出来ない。真人は、持っていたシャベルを素早く振りかざして、モンスターに立ち向かう。シャベルは本来、土を掘るための道具だが、即席の武器としても十分に使える。

 

「手加減はなしだ!最初から全力で行く!」

 

 シャベルを巧みに操り、次々に迫ってくるモンスターたちを叩き潰していく。最初は不安定だったが、モンスターとの戦いを繰り返すうちに、次第にシャベルを扱うのがスムーズになっていった。毎回戦うごとに、手に持ったシャベルが重く感じることはなく、むしろ手になじんでくる感覚があった。

 

 倒したモンスターからは魔石と素材が手に入る。魔石は、玲奈の存在を維持するために必要なアイテムだ。それを集めるためにモンスターを倒していくと真人の体に変化が起きていることに気づく。

 

 

 

 モンスターを倒した後、不思議な感覚が真人を襲う。倒したモンスターの体から放たれるマナが、少しずつ彼の体に取り込まれていく感覚だ。まるで自分の内側から力が湧き上がってくるような、身体能力の向上を実感した。

 

「これは…マナが…」

 

 最初のうちは気づかなかったが、少しずつ身体能力が向上している。シャベルを振るう速度が上がり、モンスターの動きに反応するのが早くなっていた。それだけでなく、戦い終わった後の疲労感が軽くなり、体力が回復していくのを感じ取ることができた。

 

「お兄ちゃん、すごいね!それだけマナを吸収してるんだ」

 

 玲奈がその変化に気づき、驚きながらも喜んでいる様子だ。精霊化した妹は、真人の身体に集まるマナを感じ取っていた。

 

「うん、最初は不安だったけど、少しずつ強くなってる気がする」

 

 真人はその実感に満足しつつも、もっと強くならなければならないという思いが胸に浮かぶ。ダンジョンの奥には、さらに強力なボスモンスターが待ち構えている。そこで得られる魔石やマナを集め、より強力な力を手に入れることが次の目標だった。

 

 

 ダンジョンの最奥にたどり着いた真人の前に異様な姿をしたボスモンスターが現れた。それは巨大な蜘蛛のような姿をしており、全身が黒光りする外骨格に覆われ、赤い複眼が怪しく光っている。背中から生えた無数の鋭利なトゲと床を這い回る長い脚は、その存在がただの蜘蛛ではないことを物語っていた。

 

「蜘蛛か…ジャイアントスパイダーってところかな?」

 

 玲奈が慎重な口調で声をかける。

 

「気をつけて、お兄ちゃん。あのボスはかなり強いよ」

 

「了解。だけど、こんなのに負けるわけにはいかない…!」

 

 真人はシャベルを握り直し、ジャイアントスパイダーと向き合った。

 

 

 ダンジョンの最奥で真人はジャイアントスパイダーと激しい戦闘を繰り広げる。ジャイアントスパイダーの動きは素早く、真人が間合いを詰める前に鋭い前脚を振り下ろしてきた。

 

「うわっ!」

 

 真人は咄嗟に横へ飛び退き、なんとかその攻撃をかわした。しかし、地面には前脚による深い裂け目が刻まれている。その威力に思わず息を飲む。

 

「一撃でも食らったら、ただじゃ済まないな…!」

 

 ジャイアントスパイダーはその長い脚を使って素早く真人との距離を詰めると床に糸を放ち、真人の足元を絡め取ろうとする。

 

「糸なんかに…!」

 

 真人はすばやくシャベルで糸を切り払いながら後退する。しかし、糸を切るたびにさらに新たな糸を放ってくる。追い詰められながら、真人は糸に気を取られすぎないよう注意を払った。

 

 真人は敵の動きを見極めようと、冷静に観察する。すると、糸を吐き出す動作の後、わずかに動きが鈍くなることに気づいた。

 

「今だ!」

 

 真人はその一瞬の隙を突き、シャベルを振りかざして突進する。硬い外骨格に弾かれるかと思ったが、シャベルは思った以上に深く脚部に突き刺さった。

 

「よし、効いてる!」

 

 ジャイアントスパイダーは激痛に怒り狂い、後ろへ飛び退いて距離を取る。だが、脚部に負ったダメージで動きがわずかに鈍くなっていた。

 

 傷ついたジャイアントスパイダーは、毒を含んだ緑色の糸を吐き出し始めた。糸が床や壁に触れると、ジリジリと音を立てて溶かしていく。

 

「こいつ、毒まで使うのかよ…!」

 

 真人は毒糸を避けながら動き続けるが、次第に逃げ場が狭まっていく。さらにジャイアントスパイダーは天井を這い回り、真人の死角から攻撃を仕掛けようとする。

 

 玲奈の声が真人の耳に届く。

 

「お兄ちゃん、動きに惑わされちゃだめ!奴の狙いは糸で動きを封じて攻撃することだよ!」

 

「分かってる。でも、逃げてばかりじゃダメだな…!」

 

 真人は一か八かの賭けに出る。毒糸の間をくぐり抜け、真っ直ぐにへと突進した。

 

 真人はジャイアントスパイダーの胴体を狙い、全力でシャベルを振り下ろした。しかし、硬い外骨格に弾かれ、シャベルは跳ね返されてしまう。

 

「くそっ、ここじゃダメか…!」

 

 だが、そこで玲奈がアドバイスを送る。

 

「お兄ちゃん、背中のトゲ!あそこが一番柔らかいはず!」

 

 真人はすぐに指示を理解し、敵の背後に回り込むことを決意。足元の糸に注意を払いながら、動きの鈍ったジャイアントスパイダーの隙を突き、背中へと飛び乗った。

 

「これで終わりだ!」

 

 シャベルを全力で背中のトゲに突き刺すと、ジャイアントスパイダーは断末魔のような叫び声を上げた。数秒後、動きを止め、その巨体は崩れるように地面に倒れ込む。

 

 

 

 真人は息を切らしながら、その場に膝をついた。足元には、ジャイアントスパイダーが残した魔石が転がっている。ほっとした表情を浮かべながら、それを拾い上げた。

 

「これが、ダンジョンの最奥の報酬か…」

 

 魔石は玲奈を維持するためだけでなく、次なる計画の足掛かりにもなる重要なアイテムだ。

 

「お兄ちゃん、すごい!これでまた一歩前進だね」

 

 玲奈の明るい声が響く。真人は、精霊化した妹とともにこの先も戦い続ける覚悟を改めて胸に刻んだ。

 

 

 ボスモンスターを倒すと、ダンジョンはその役目を終え、消滅が始まった。

 

「これで…ダンジョンは消えるけど、集めたものは無駄にはならない」

 

 ダンジョン内のものはすべて消えてしまうが、手に入れた魔石と素材は確実に真人の手の中に残る。玲奈を維持するために必要な魔石も十分に集まり、戦いの成果が目に見える形となった。

 

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