壊レ死ニ征ク浄火の旅路 作:灯火を探すもの
オールド・シャーレアンに着いてから、散々だ。
真後ろに少女が落ちてくるわ、その少女も事情は分からずとも何やら色々と成すべきことを知っているような口ぶりだったわ、と…この状況を『暁』の面々に伝えたところ、困惑8割と言った具合だった。
当たり前だ。真面目に、『親方空から女の子が』をしてしまったのだから。私の身にかかるこの事情を正直にヤ・シュトラに伝えたところ、「ハイデリンも悪戯心があるのね」と棒読みで口答えしてきた。言われてんぞ、永遠の17歳。
なんだかんだで、ラヴィリンソスとサベネアに行ったが…、あのエーテル酔いはキツかった…。モノがゴチャゴチャになるような感覚だった。
それで、だ。―――ラハがやらかした。
一応『至高神ソルの意志と話したい』という、フルシュノ個人の意志があったために通して貰えたので、フルシュノと問答をし…その内容を、わかりやすく、雑に訳すならば。
「なんで至高神とまで言われた高次元生命が少女の体を成してるの?
っていうかソイツ(=空から降ってきた女の子)誰?」
「しらね。あんたの答に文句をつけるつもりは更々ないし、ラハのやらかしだから後でアイアンクロー喰らわせるとしても、コイツに関しては、あんたらの知己とも言うべき存在に聞いてくれない?」
と言うべきか…とにかく、フルシュノでさえ理解不能なことをハイデリンはしたようだ。
「あんたらの知己とも言うべき存在に聞け」と言った際の「あの野郎…」みたいなフルシュノの表情は…思い出すだけでも笑ってしまいそうになる。
勿論、『半顕現』に留めたとはいえ…、神の力とでも言うべき、『宙準星の竜』と称された召喚獣の力を使い、ラハを締め上げた。このときの「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」みたいな彼の悲鳴は、アリゼーにさえ困惑されていた。
さて…。話を、今に戻すとしよう。
「サベネア島では、そんなことがあったのね…。…とすると、ヴリトラさんの要請を受けて、『ゾットの塔』の調査に行くのが最優先かしら?」
と、サベネア島に行ったサンクレッドからの報告を聞いたクルルが言う。
「そうなるでしょうね。哲学者議会の動きについて、まだ知りたいことはあるものの、現状で思い当たる範囲は調べ尽くしている…。強引に踏み込もうとすれば、今度こそ退去になりかねないわ。
星海絡みの案件としてマトーヤに報告だけして、サベネア島に向かいましょう」
とヤ・シュトラが言う。
…この報告会の前に、『空から降ってきた女の子』…アマリ・アクアマリンのことと、彼女がこの世界に来た原因についてフルシュノに話したら苦い顔をしていたことを彼女に話したところ、
「…あなただけお咎めなしで羨ましいわね」
とキレられたので黙り込んでいる。なんだろう…力だけで言えば、彼女に勝てるのに、言論や社会性で言えば彼女に勝てる未来が見えない。
話が進むと同時に、エスティニアンが私に話しかけてくる。
「なぁ、エクセリア…。なんでお前は黙ってるんだ?」
「…殺す気かエスティニアン」
迂闊に、ヤ・シュトラの前で喋りたくはないんだ…。許せ、相棒。
ゾットの塔には入ったものの、ヒロシが「お前はアマリの警護に当たれ」と指示してきたため、仕方なく治療班に入ることにした。
…当のアマリから「治癒魔法ニガテ」と聞いていたのだが…、まぁ、彼女も…なるようにやったようだ。
あと、ゾットの塔の核を視たヤ・シュトラがドン引きして、エスティニアンがぶっ壊したので塔が崩壊しようとした。ラハがレビテトで全員(私とアマリを除く)を救出し、私は顕現し、アマリを背に乗せ大脱出を行った。ちなみにラハはこのとき魔力を使い果たしてぶっ倒れていた。
それから数日後。
イルサバード派遣団が発足する。
さて、ガレマルドといえば、雪だ。
アマリの恰好をよーく思い出して欲しい。肩出しで脇見せ、ショートパンツ…。オチは…言わずとも分かるだろう。目の前で震えているエマネランよろしく、震えていた。
「…行く前にギル渡したよな私」
「どれがいいか分からなくてぇ…」
とアマリ。おい永遠の17歳、こんなポンコツをどう扱えばいい?毒づくが、いざ戦闘になって身体が温まってきた頃にはそんなことどうでもよかった。飛翔の参式の馬鹿威力ったら…テンパードをボコスカ殴り飛ばしている様は、本来の戦闘目的を見失わせた。
「護魂の霊鱗、手放すなよ?」
「そっちこそ」
この、何とも言えない連携は、後にも先にもないだろう…きっと。
現地民―――主にユルスとかいう青年将校などを保護したその日の夜。
『嫌な予感』がしたと思ったら、空から男が振ってきた。
「ああクソ、今度は何だよ…って、アマリ!?」
「…シモンさん!?」
知り合いだったのかお前等…?
とりあえず降ってきたシモンと、それに釣られて降ってきた大グレン団分と、ユルス分の護魂の霊鱗を補給しつつ、飯を共にした。
「アジムステップ風の温かいスープだとさ」
と言い、一気に大所帯になり困惑しているヒロシを尻目に、スープを飲む。
それで、とシモンに聞く。
「ニアも来ているが…よかったのか?」
「良くはないが…、あそこまで頭を下げられちまったらな」
…どうやら、ハイデリンは大グレン団に頭を下げまくったらしい。その光景が声という肉をつけ、やけに思い浮かぶ。
そんなときだ。
私とアマリ、ユルス、大グレン団を含む、全員の護魂の霊鱗が起動した。
「ユルス…なにか聞こえるか?」
「ラジオから、既に崩御なさったはずの、皇帝陛下の声が聞こえる…!」
その刹那、視界を動かすと…ヒロシが闇に消えるのが見えた。
「…面倒なことになった」
舌打ちをしつつ、シモンに聞く。
「グレンラガンは呼べるか?」
「問題はないはずだ!」
そう言って、シモンは念じる。そこに、5m台の機動兵器…グレンラガンが降り立った。
「さて…とりあえず、街の東側は私が担当する。シモン、街の西側は任せた」
と言い、私は顕現する。コズミック・クェーサー・リズンへと変化した私は、キャンプ・ブロークングラスを発ち、即座に東へと飛ぶ。
『ヒロシは見つかったか!?』
「全然見つからない…!」
それらしき姿が見つからないのだ。クソッタレと毒づく間も、時間が経過していく。
存在定義を探ると、どうやら異常なことになっているようだった。
肉体と魂の位置が分かたれているのだ。
「見つけたが…どっちを起点にすればいい…!」
苛立ちを隠すことなく、言葉を紡ぐ。
私は、人の心は魂に宿ると考え、魂のほうに向かった。そこには、テンパードたちに見つからないように立ち回る、名もなき帝国兵の姿があった。
「これは…!?」
『どうした…!』
「どういうことだ、何故彼の魂がこの帝国兵の身体にある!?」
そう言って、彼が魔導リーパーに乗り、魔導兵器に対して火砲を浴びせたところで、私は介入した。
1分ほどで、敵の駆逐は完了できた。
異形と化したテンパードを討ち倒しつつ、彼の護衛を続けた。
市民と協働して敵を倒す場面もあったが…異形と化した帝国兵が爆発すると同時に、青燐水バレルが爆ぜたときは冷や汗をかいた。顕現を解かれただけでなく、その直後に爆発の衝撃を受けたからだ。咄嗟に内丹をしたのでなんとかなったが…彼が意識を朦朧とさせつつ動いていたのは流石に焦りを覚えた。
彼の後を歩みつつ、周囲を観察していると…。
「………あんた、誰だ?」
という、ラハの言葉が聞こえた。
仲間が危ない、という事実に気付いた私の身体が動くのは…仲間を危険に晒している者の身体の存在定義が「ヒロシ」である、と気付かせるのを遅らせた。
空中に妖異が浮かび上がり、アリゼーとラハを斬ろうと鎌を振るう。
その妖異に一撃を叩き込み、妖異が姿を消すと同時に、妖異がいたところを剣が通り過ぎる。
「そこまでだ、ゼノス!」
そう言って、ヒロシが己の肉体を乗っ取ったゼノスを突き飛ばす。
頭痛に苛まれるヒロシ。ファダニエルが現れた後、仲間が駆けつける。
「どうもこんにちは。遠路はるばる来ていただいたのに、ご挨拶が遅くなって申し訳ありません。なにせ時間稼ぎをしたかったもので。多勢に無勢のこの状況で、どうしたものかと悩んだんですよ?」
と、身勝手極まる言葉を紡ぐ。
「それが…お前の言い分か、アシエン・ファダニエル…!」
怒号混じりの声で、彼に脅しをかける。
「…おや、あなたの存在を忘れていましたよ。何の用ですか?私、あなたとは関わりたくはな―――」
言葉を遮るように、私はファダニエルの顔面に拳をぶち込んでいた。
《解説:エクセリア・アウェア》
二刀の大太刀で、視認による回避を困難にさせる剣技を繰り出す「巫覡」という名のジョブの少女。
その正体は、嘗ての宇宙で「エンジェル」という女性に半ば憑依していた、「至高神ソルの意志」の転生後。
嘗て御使いが『気付くことのない過ち』を犯していた為に、自身に宿った召喚獣《コズミック・クェーサー》の力を半分忌避している。
転生し、「至高神ソルの意志としての記憶」を思い出すまでは、それに勘付いていなかったため。