壊レ死ニ征ク浄火の旅路 作:灯火を探すもの
一発ファダニエルにぶち込んだ後、ファダニエルは言った。「最古で最強の蛮神を使った終末の災厄を引き起こす」と。
ヒロシが起きるまでの間、私は空に浮かんだ月を睨んでいた。
とはいえ、先に…とある神を倒さなければならなかった。ヒロシが持ち帰った情報によると、ヴァリス帝の遺体に降ろした蛮神「アニマ」が、バブイルの塔と改名された魔導城にあるという。
そこで、ルキアと…、元々ガレマルドにいたガレアンの良心、マキシマの作戦が提示された。塔内には、テロフォロイに属する多数の魔導兵器の他、大勢のテンパードたちがひしめいている、という。
ルキア達の作戦は、大雑把にいうと戦力二分による陽動と突入らしい。
だが…今回に限って、そういうオーソドックスな陽動が通じるとは思えなかった。
ファダニエルが先手切って陽動―――ヒロシの魂を、名もなき帝国兵に移し替えることで、エーテルを蓄積させるための時間稼ぎを―――しているのだ。
(彼らが言うように、陽動がうまく行くとは到底思えない。…穴掘りシモンに、陽動を手伝ってもらおう)
そう心の中で呟いた後、私はふと視界を双子…アルフィノとアリゼーに移す。
「なんか、不服そうな顔してたけど…なにか、作戦に文句があるの?」
とアリゼーに訊かれる。
…言うか、言わずに計画を遂行するか。2択ではあるが、言わなかったらアリゼーから何と言われるか…結末は見えていた。
「実は、さ…」
普段は黙って、時折己の与り知らぬ事象に巻き込まれて混乱しているような女が、ただ不安だからと作戦の憂慮点を語った。それは、暁の面子のすべてにおいて、驚愕すべき事象だった。
「考えすぎじゃない?」
とアリゼーが言うも、
「…あの夜の一件を、忘れたとは言わないからな?」
と返し、彼女を困惑させる私。
兎にも角にも不安なのだ。ファダニエルが
だが、何と言ってもこの作戦は揺るがないようだった。バブイルの塔をヒロシに任せ、私はコズミック・クェーサーへと顕現して、月へと向かった。
月に転移以外の方法で向かうには、分かるとは思うが速度を出す必要がある。
速度を出すまでの過程で、私は月に向かって放たれる高濃度のエーテル砲を見た。
月で、ヒロシからことのあらましを聞いた。どうやら、皇神アニマの討滅には成功したものの、ファダニエルによる砲撃を許してしまったと。それを、ハイデリンが阻害、封印を残り1つまで削られてしまったものの、守りきったという。しかし、残り1つであることを利用され、ゼノスとファダニエルが月に転移。それを追って、ヒロシがひとりで転移してきた…。
「お前…仲間を残してきたことに後悔はないだろうな?」
と、ドスを効かせてヒロシに詰め寄る。やはり後悔はあるようで、ヒロシは「ファダニエルとの決着は自分でつける」と言った。
「言っておいてなんだけどさ。地上には、ハイデリンが異世界から取り寄せたつわものたちを置いてきている。だから、しばらくは持ちこたえると思うけど…」
と言いかけたところで、ヒロシは首を振った。どんな状況であれ、自分はゼノスに狙われているからそれを利用する手はない、と。
そうか、と言って、私は顕現し、嘆きの海の空(?)を舞う。
そうして暫くすると、2個に復帰していた封印の要が、すべて破壊されていた。
そこへ駆けつけた私とヒロシは、ファダニエルに詰め寄る。
「残念、時間稼ぎが少しばかり足りませんでしたね。最も、あなたのその姿を見ることができただけで、こちらも半分満足ではあるのですが。さあ、封印は破られた。目覚めのときです、ゾディアーク…!」
とファダニエルは言う。
その発言と同時に、月の底からおびただしい量の闇が湧き上がる。
「あなた自身を核とする、召喚獣コズミック・クェーサーとは違って、ゾディアークからは、エリディブスという核が抜け落ちている。さながら、『本能のみ』で生きている赤子です。使うも乗っ取るも、たやすいこと…」
「だからどうした。お前が何を企もうが、私はお前を止める」
と言い、私は腰に提げた大剣を抜く。しかし彼は何も言うことなく、その身を投げる。
その直後、膨大な闇が月の底から湧き上がった。
その闇の根源に向かって飛ぶと、そこには目が覚めたばかりのゾディアークがいた。
「やはり来ましたか…」
忌々しげに、私に向かって言葉を発するゾディアーク。そうして、空中に魔紋を浮かべ、その魔紋から砲撃を放つ。
反撃で魔弾を放つが、そこまでダメージは入っていないだろう。
「お前に世界を滅ぼさせない…!
私が嘗て見限った、『あいつら』の二の舞になどさせはしない!」
「お前が何を謳おうが、終わることこそ、この世界の真理だ!だから滅ぼす!
滅びに抗うお前達を見るのは虫唾が走るから!」
そう言って、二柱の神は月の上空へと向かう。
「耐えられますか…!」
ゾディアークは闇の魔力を湧かせ、破滅の言の葉を紡ごうとする。
十字砲火を軽く避け、闇をすべて祓う。
そして、ゾディアークを再び月の底へと叩き落とす。
叩き落とされたゾディアークは、まっすぐにヒロシを睨む。
「あなたのお仲間は本当に強いですねぇ」
そう言って、ヒロシを煽る。
「不完全な状態でどこまでやれるか、彼女で試したのですが…やはり、冗談抜きで強いですねぇ、ドミナントという存在は。
…ですが、この際です。世界を平らげるのに最も邪魔な、あなたから消すといたしましょう…!」
ヒロシを月の底に見たときには、ヒロシとゾディアークの戦いは終わっていた。顕現を維持したまま、ゾディアークに剣を向ける。
『待たせてすまない…!ゾディアークを、ひとまず際封印するだけの準備が整った。まずは貴殿らをこちらへ退避させる。転移魔法に備えてくれ…!』
と、古代人の声が聞こえる。
「今のは何だ?」
と、ヒロシに問う。「最速で行ったあなたには分からないだろうけど、月の監視者だ」と彼は答えた。
「ふふ…くくく…。不完全とはいえ、ゾディアークの力でも倒せないなんて。本当に、本当に厄介な人達ですね…。ですが…残念、私の勝ちです!」
そう言って、ゾディアークは己の胸を貫く。
「んなっ!?」
「最初から、狙いはこちら…ゾディアークを殺すことだったんですよ。方法は、いくつか想定していました。殿下がゾディアークを喰らって、それをあなたが倒しても…、私が乗っ取った状態で、コズミック・クェーサーが倒してもよかったんです」
と、ゾディアークは言う。剣をしまい、代わりに手を向ける私。
「何を…?」
「―――ゾディアークの力、貰い受ける」
そう言って、私はゾディアークの力、その片鱗を吸収する。
「ええい、このまま本懐を遂げる…!さあ、今度こそ始めるといたしましょう…真なる、終末の災厄を!」
彼はそう言って、ゾディアークの心核を破壊する。
月の監視者による転移後、ヒロシは…一部とは言え、ゾディアークの力を吸収した私を見る。
「あいつの思い通りにはさせないよ」
そう言って、己の魔力だけで天脈を補強する。
「…あと1ヶ月だ。それだけしか、この補強は持たない」
そういった直後だった。
『ああ―――やっと―――』
星が腐り落ちる幻影と、世界が急速に黒くなる景色を見た。
『息を吐くんだ。呼吸に意識を向けて…』
言われたとおりに、意識を呼吸に向ける。幻影は消えた。しかし、アレはこれから先の破滅を暗示していることに気付くのは簡単だった。
「…あれが、終末の災厄か」
顕現を解除し、私は吸収したゾディアークの力を確かめた。
確かに、天脈に対する攻撃が、一段と激しくなっていた。
Q. なんでエクセリアはミュトスみたいなことができるの?
A. 元が至高神だったからだよ