ザコ魔法使いだがヤバ女たちにやたらと目をつけられてる   作:生カス

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10 意外な依頼主◆

 そこかしこでレンの話を耳にしながら、ファニ・ウィーバーは一人、フードで顔を隠し、王都の人混みの中を歩いていた。

 彼女がふと横を見ると、壁にはレンの人相書きがそこかしこの壁に貼られている。どれもこれも、下の文に『勇者パーティーへの加入を』と付け加えられていた。

 

「まさかここまで、なりふり構わず来るとはね……」

 

 呆れたような、しかし誰にも聞こえない程度の声で、ファニは呟いた。

 あの馬車の一件を思い出し、彼女は思わず、ため息が出てしまう。

 

 ファニからすれば、勇者リエスタがレンを、熱のこもった妙な目で見ていたことは明白だった。

 恐らくレンが――ファニからすれば――キザったらしいセリフを吐いて、馬車の外に吹き飛ばしたあたりからだろうか。

 それとも、彼が勇者の胸元にあるネックレスを掴んだ時からだろうか。

 

 正確なタイミングはファニもわからないが、それでも彼女からすれば、勇者がレンに妙な感情(・・・・)を抱き始めたことは明らかであった。

 初対面の、しかも敵側の男に一目会っただけで惚れる女なんて、絶対にまともな女ではない。なによりあんな変態じみたことを捲し立ててくる女なんて、ヤバいに決まっている。

 ファニはそう思ってレンにもくぎを刺したわけだが、やはりというか何というか、今の王都の状況を見る限り、勇者のいかれ具合は斜め上を行っているようだった。

 

「……たく、うざったいなあ」

 

 なんてことを、ファニは苛立ちをもって独り言ちた。

 ファニにとっては、自分がやっと見つけた仲間を、横から勇者が掻っ攫いに来ているような、そんな気分だったのだ。

 

 第一――とファニは思考を巡らせる。

 

 第一、あんな状況で惚れた腫れたなんて非常識だ。

 ああいった手合いはたまに見るが、正直まったく理解できない。

 こっちは真面目に仕事をしているのに、浮ついた感情で茶々を入れるのは、本当に勘弁してほしい。

 まぁ、確かにレンがヒュドラを倒したり、キザなセリフを言いながら勇者を追い払ったりしたときは、カッコいいと思ったけれど――。

 

 

 ――惚れたのか?

 

 

「……いやいやいやいや」

 

 ふとモニカの言葉を思い出してしまい、必死で振り払う。

 そんなんじゃない、そんな浮ついた気持ちをレンには持っていない。

 

 私たちはあくまでビジネスライクな関係だ。

 レンに正式にパーティーへ加入してもらったのも、あくまで彼の強さが欲しかったからに過ぎない。

 そもそも私は昨日今日会った男にすぐ靡くような、簡単な人間ではないはずだ。

 あくまで私の目的に沿った能力を彼が持っていて、それで利害も合致したから組んだだけであって――。

 

 

 ――気に入った男ができたら、何のかんのと理屈つけてパーティーに入れようとするのが精々さ。

 

 

「ッ……はぁ、仕事に集中しよう」

 

 以上の言葉を最後に、ファニの悶々と巡る思考はいったん止まった。

 

 雑念を振り払うかのように足早になり、目的地へと向かう。

 そもそもファニがヨーキトーの王都に赴いたのは、先のヒュドラ討伐の事後処理――すなわち、雇い主への報告と、依頼の品を納品するためであった。

 本来であれば、酒溜まりの鼠(レザボア・ラット)は傘下も含めればそこそこ大きな組織なのだから、ボスであるファニ本人が、わざわざ足を運ぶ必要はない。

 

 しかしながら、今回はそうもいかない相手だった。

 万全に依頼を達成したとしても、『彼女』への態度ひとつで、酒溜まりの鼠(レザボア・ラット)に強力なコネクションができるかもしれない。

 逆に『彼女』の機嫌を損ねれば、その一声で、文字通り壊滅(・・)させられるかもしれない。

 今回の取引相手は、それほどの相手だった。

 

「……父様、母様。どうか私たちを、お守りください」

 

 どこか寂しい表情を浮かべながら、ファニは両親の形見であるストールに、手を添えた。

 その足の先は、王都の富裕層区画。

 王侯貴族や、富を築いた富豪商人などが住む、『持てる者』の巣窟である。

 

 

 

 

 ファニは富裕層区画の、奥まった場所にある屋敷の前に到着した。

 静かな住宅街であることを鑑みても、不思議なほど誰も足を踏み入れないそこは、他の場所とは一線を画した静寂さだ。

 ここら辺でも一等大きなその屋敷もまた、いたるところに苔や(ツタ)が絡まっており、それがどこか怪しい雰囲気を醸している。

 

「よし……」

 

 ファニは意を決して、ドアのノッカーを二回叩いた。

 間をおいて、数秒。

 

 すると、ドアが静かに開いた。

 中から、こちらへ向かってくる足音などは、一切聞こえてこなかった。

 

「これはこれは、ファニ・ウィーバー様。ようこそお越しくださいました」

 

 ドアの向こうからは、長身痩躯の老紳士が、そうファニに話しかけていた。

 響くような低い声と、立ち姿だけでも感じるその気品は、まさしく由緒正しき執事といった様相だ。

 

 実際のところ彼は、ここで奉仕している執事だ。

 ただひとつ、一般的な執事と異なる点を挙げるとするならば。

 

 彼のその顔は、まさしく犬そのもの(・・・・・)である、という一点に尽きるだろう。

 

 柔らかい物腰とは正反対に、その目つきは鋭く、真っ黒な毛並みも併せて、精悍な狩猟犬を思わせる。

 それはまさしく、魔物の一種(・・・・・)である、獣人の姿そのものであった。

 

「こんにちは、ロボさん。以前受けた依頼について、完了したのでご報告に参りました」

「おぉ、それは素晴らしい……お嬢様もお喜びになられるでしょう」

 

 ロボと呼ばれたその執事は、笑ってファニの話を聞いていた。

 ファニは、それがどうにも不気味で仕方がなかった。

 

 魔物全般に言えることだが、彼らの仕草はどこか、つくりものめいている。

 友好的であれ敵対的であれ、全く腹の内が読めないというのは、社交や交渉を得意と自負しているファニにとって、あまり気分の良いものではなかった。

 

「『彼女』はおられますか?」

「もちろんでございます。お嬢様がいない日はございません」

 

 そう言うと、ロボはドアの横に立って、ファニを招き入れる。

 ファニは何も言わず、しかし決して緊張を悟られぬようにしながら、それに従って屋敷の中へと入った。

 

 ロボに案内され、ファニは屋敷の中を歩いてゆく。

 屋敷の中は、外の様子とは打って変わって、実に綺麗なものだった。

 下品にならない程度に豪華な調度品が置かれ、まさに『上流階級の邸宅』を絵に描いたような内装が施されている。

 

 だが何故だろうか、ファニにはどうにも、それが嘘くさく見えてしまう。

 調度品も内装も、普通は住んでいる人間(・・)の人となりが見えてくるものだが、ここにはそんな主張をするものが、ひとつもない。

 今日はそこそこに温かい気候のはずなのに、ここは霊廟(れいびょう)のように肌寒い。

 

 まるで、化け物が人間の(・・・・・・・)ふりをしている(・・・・・・・)かのような、そんな空気をファニは感じる。

 

 だが、ファニはそれについて疑問に思うことはない。

 なぜなら、彼女は知っているからだ。この屋敷の……正確には人間界の別荘であるこの家の持ち主が、『彼女』であることを。

 

 そんなことを考えていると、いつの間にか、屋敷の奥にある、大きな扉に着いた。

 扉には、ひときわ豪華な装飾。それは『彼女の部屋』だという証だ。

 

お嬢様(・・・)、ファニ・ウィーバー様がお見えになりました」

 

 扉の前でロボが言って、数秒。

 

「ふぁ……なんだぁ、会う約束はなかったと思うけど?」

 

 奥からそんな、欠伸が混じった声が聞こえてきた。

 

「……お嬢様、お昼寝はほどほどにと、言い聞かせたはずですが」

「うるさいなぁ、ロボ。お小言は良いから、さっさと通してくれたまえよ」

 

 中の『彼女』にそう言われると、ロボはドアの横に立って、深々と頭を下げた。

 ここからはファニ一人で入れ、と暗に言っているのだ。

 

「……失礼します」

 

 ファニは静かに、細心の注意を払ってドアを開ける。

 彼女の目に飛び込んだものは、脱ぎ散らかされた衣服に、散らばった本の数々。

 そして、乱雑にされたベッドの上にいる、今回の依頼主。

 

「やぁやぁファニ! よく来たじゃぁないか。お菓子でも作りに来てくれたのかい?」

 

 どこか見当はずれなことを、笑顔で宣うその少女は、普通ではなかった。

 見た目や大きさは、ファニと大差ない、十代の少女のそれだ。

 

 しかし、病的なほどに白い肌と、時折見える、ヘビのような紫色の舌。

 そして何より頭に生えている、シカのように枝分かれした大きな角が、彼女が人間でないことを証明していた。

 

「いいえ、ヒュドラの件について、討伐が完了したのでご報告に参りました。魔王様(・・・)

「……へぇ、ヒュドラを?」

 

 ファニが言うと、少女はどこか意外そうに、しかし面白そうに、小首をかしげた。

 そう、彼女こそが、人類の敵である魔王なのだ。

 

 その名を、ベルスター・ブラックベティ。

 未だに誰も見たことがないとされている(・・・・・)、魔物の王であった。

 

「まぁなんだ、ドアの前につっ立って喋るのも間抜けだろう? 座りたまえよ」

「失礼します」

 

 魔王ベルは、そう言ってファニを、脱ぎ散らかしっぱなしの衣服にまみれたソファへ座るよう促した。

 ファニとしては正直断りたいところだが、こんなつまらないことで、この暴君の不興を買うのは得策ではないと思い、素直に腰を下ろした。

 

「紅茶はいかがかな? 最近人間の飲み物にハマっていてね」

 

 言いながら、ベルはカップを手に取って、温かい紅茶に口をつけていた。

 ファニがふとテーブルを見ると、いつの間にか自分の目の前に、紅茶を入れたカップが置かれていたのだ。

 ご丁寧に、ミルクと砂糖を入れた容器も、隣に置いてある。

 

「……いただきます」

 

 なんとかそれだけ言って、ファニはカップを手に取った。

 彼女は、魔王ベルのこういったところが、不気味で仕方がなかった。

 

 どんな魔法を使っているのか、どんなスキルを使っているのか、まるで見当もつかない。

 それどころか、これが魔法やスキルという概念に当てはまるのか、ということすらわからないのだ。

 そして何より、それを誇示するわけでもなく、謙遜するわけでもなく、当たり前のように行使している。

 

 今日は何事もなく、紅茶が出ただけなので、実に平和だ。

 以前ファニが来たときは、出されたコップは血で満たされ、中には臓物が入っていた。

 

 ――おぉっとすまない、人間にとって、同種はご馳走じゃないんだったか。

 

 その時にベルが、たまらず嗚咽したファニに向けて放った言葉が、以上である。

 本当に馳走をもって歓迎しようとしていたのか、悪意を持ったイタズラか、それすらもわからない。

 どんな時でも、彼女は悪戯っ子のような不敵な笑みを、崩さないのだから。

 

 きっとそれは、彼らが完全に、人間とは違う生き物であることの証左であろう。

 

 未知で、理不尽で、不可解。

 あくまで数回あっただけでの判断だが、それが魔王という存在だ。というのが、ファニの見解だった。

 

「……で? ジクシンにいるヒュドラを殺してくれたってのは、本当かい?」

 

 カップをテーブルに戻し、ベルは聞いた。

 

「こちらを」

 

 ファニはそれに是とも否とも言わず、持参してきた依頼品(・・・)をテーブルの上に出した。

 

「ヒュドラの宝玉です。お納めください」

「ほほう! ホントに倒してきたんだねぇ!」

 

 テーブルに置かれた宝玉を見た瞬間、ベルはテンションを上げてはしゃぎだす。

 

「いやいや大したものだよ! アイツ調子に乗って、私の手下まで全部食っちゃうんだもの! いい気味だよ全く!」

「では、依頼は完了ということで、よろしいですか?」

「あぁ、あぁ、もちろんだとも。確か報酬は……えぇっと、なんだっけ?」

「魔界アイテムの、ヨーキトー王国への独自輸入ルート。こちらを酒溜まりの鼠(われわれ)に一任してくださる、と」

 

 今回のヒュドラ討伐の見返りこそ、ファニが今言ったことである。

 魔界のアイテムというのは、当然ながら人類に敵対している魔物が製造、使用しているアイテムということであり、人間がこれを使うのは倫理上、宗教上の観点などから、厳しい取り締まりが行われている。

 

 しかしながら、魔界のアイテムは人類が作ったそれに比べ、どれも高品質で強力なものがそろっており、欲しがる冒険者や商人は後を絶たない。

 そのため、冒険者が魔物が稀に落とすアイテムをしまい込んだり、魔界の入り口まで盗賊が採取しに行ったりして、それらを高額で売りさばく事案も多発している。

 

 とは言え、これらは偶発的に拾い上げたアイテムをまばらに売るだけの、小銭稼ぎのようなもので、どうあがいても富を築けるレベルではない。

 それは仕方のないことだろう。まさか魔物側から仕入れることなど、できるはずもない。

 魔物とコミュニケーションなど、取れるはずがないのだから。

 

「あぁそうだったか……いいともいいとも、格安で君たちに卸してやろう。せいぜい稼ぎたまえよ」

「ッ……ありがとうございます!」

 

 興味がなさそうに放たれたベルの言葉を聞いて、ファニは内心で喜びの声を上げた。

 この場所でさえなかったら、踊ってしまいたいくらいだった。

 

 そう、魔物とコミュニケーションが取れないのだから、魔界のアイテムを仕入れるなど、夢のまた夢だ。

 だが、魔物の王様と取引ができたのであれば、話は変わってくる。 

 

 魔王の公認によって、酒溜まりの鼠(レザボア・ラット)に魔界アイテムの輸入ルートが確約される。

 誰も成さなかった、成そうともしなかった輸入ルートを持つということは、実質的に闇市場(ブラック・マーケット)のトップになることであり、それはすなわち、酒溜まりの鼠(レザボア・ラット)という組織が、飛躍的に強力になるということだ。

 

 ――レンのおかげで、一気にここまでこぎつけられた。本当、彼には感謝してもしきれない。

 

 ファニは、ここにはいないレンに感謝した。

 自分の組織を巨大化することは、彼女にとって悲願といってもいい。

 ほとんど諦めかけていたその道が、レンと出会ったことによって、一気に光明が見えてきたのだ。

 

 これは何としてでも、彼を勇者なんかに渡すわけにはいかない。

 私の救世主かもしれない人を、ようやく手に入れたのだから。

 

 ファニはそう、強く思った。

 

「……で」

 

 そんな風に思いを馳せらせていると、ベルは静かに、口を開いた。

 

「ヒュドラを殺したのは、誰だい?」

「……といいますと?」

 

 予想外の質問ながらも、ファニは辛うじてそう返すことができた。

 しかしそんなことには目もくれず、ベルは続ける。

 

「今だからぶっちゃけるが、あのヒュドラは暴走状態にさせてた(・・・・)からさ、君たちが言うような、Sランクどころじゃない強さのはずなんだよ。君たち程度が殺せるはずないのさ」

「……今、なんと?」

「欲につられた君たちが食いちぎられるの、面白いかなって思ってやったんだけど……もっと面白いものが見れそうだねぇ?」

 

 突然の告白に、ファニは理解が追い付かなかった。

 それを知ってか知らずか、ベルは続けた。

 

 

「で、誰?」

 

 

 まるで、新しい玩具を見つけた子供のように。

 狂気的な笑みを浮かべて、ベルは聞いた。

 

 ――絶対に、これは答えちゃいけない。

 

 ファニは、身体の震えと共に、そんな直感が脳裏をよぎった。

 確証はない、だが、確信がある。

 

 ここでレンの名を出せば、きっと魔王ベルは、彼に接触するだろう。

 恐らく、自分が想像する以上の、最悪の形で。

 

 下手をすれば、魔王によってレンが殺されるかもしれない。

 少なくともそれだけは、絶対に避けねばならない。

 そう思ったファニは、声の震えを必死で抑え、平静を努めながら、言った。

 

「ギルドや各方面から、大量の傭兵を雇って、数多の犠牲を出しながらも倒しました。誰が倒したというのであれば、参加した全員でしょう」

「……ふぅん、それで通ると思っているのかい?」

 

 圧力が部屋に充満する。

 ファニですら少しでも気を抜けば、失神してしまいそうだった。

 

 ふとカップを見ると、紅茶だったものが、いつの間にか血だまりに変わっていた。

 ファニはそれを見ても、決して驚かない。驚いても、それを外に出さない。

 ()を見せれば終わりだと、彼女は知っているからだ。

 

「ま、いいや」

 

 すると、ベルはけろっとした顔で、あっさりと引き下がった。

 単に飽きたのか、面倒臭がったのか。

 兎にも角にもその瞬間、部屋に充満していた圧力は失せ、カップの血もいつの間にか、紅茶に戻っていた。

 

 ……助かった。

 ファニは息を切らしながらも、自分が生きていることに安堵した。

 

「まぁ、なんにせよご苦労だったね。輸入ルートについては、後でロボに詳細を送らせる。さぁもう行きたまえ、私は昼寝で忙しいのだ」

 

 さっさと帰れと言わんばかりに、ベルはしっしと手を振って、ベッドへと戻っていった。

 

「……ありがとうございました。失礼いたします」

 

 それだけ言って、ファニはソファから立ち、出口へと向かう。

 そのままロボに案内され、屋敷の外へ出た。

 

「つっかれた……」

 

 彼女がそんな愚痴を呟けたのは、王都の外まで出て、ようやくフードを外せた時であった。

 

 

 

 

「……なぁロボ」

 

 ファニが帰った後、ベルはロボを呼んだ。

 

「いかがしましたか、お嬢様?」

「ヒュドラを殺したやつ、見つけて私のところに連れてきてくれたまえ」

「多数の傭兵で倒したという話では?」

「ふん」

 

 ベルは笑顔はそのままに、小ばかにしたように目を細めた。

 

「そんなはずがあるものかよ。あれは有象無象が万人いたところで、どうにか出来るものではないんだ」

「では、突出した一人によって倒されたと?」

「しかも、あのファニがあんなつまらない嘘をついてまで、傍に置いておきたいと思っているやつらしい。クッハハハハ!」

 

 そう言うと、ベルは堪えきれないとばかりに、心底可笑しそうに笑いだした。

 ロボはそれを見て、実に意外に思った。

 お嬢様が本当に(・・・)笑うなんて、一体いつぶりだろうか、と。

 だからだろうか、面倒ごとになるとわかっていながら、ロボはつい、知っていることを口にした。

 

「でしたら、それに関しまして、既に情報がございます」 

「ほう、というと?」

「昨日から王都で話題になっている、レン・ユーリンなる男がおります。都内に潜伏している部下によりますと、先日彼が、ファニ様と接触していたとか」

「……レン・ユーリン」

 

 ロボからその名を聞いて、ベルは面白そうにその名を呟く。

 

「いい退屈しのぎになりそうだ……クフフフ」

 

 そのキラキラとした目と、はにかむような笑顔は、ファニに見せたそれとはまた違う。

 プレゼントの封を開けている子供のような、無邪気なものであった。

 

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