ザコ魔法使いだがヤバ女たちにやたらと目をつけられてる   作:生カス

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13 新しい仕事

「レン、これってどういうこと?」

 

 今まで聞いたことがないくらいの低い声で、ファニは俺に言ってきた。

 その顔はまぁそれはそれは迫力があって、困惑や驚愕、そして怒りと、いろいろな感情がないまぜになっているようだった。

 

「待て、待ってくれファニ。俺たちは話し合うことができるはず――」

「やぁやぁファニ、お仕事ご苦労」

 

 なんとか彼女を宥めようとするも、その試みは言葉を遮ってきたベルスターによって、あっけなく潰えた。

 本当に勘弁してほしい。何なんだこの人(?)は。

 

 こんな状況になっても俺を離そうとしてくれないし。そもそも俺の声真似までしてファニをここに入れやがって。

 何がしたいのかすらわからん。揶揄って愉しんでるだけか?

 

「……ご機嫌麗しく、魔王様。それで、これは一体?」

 

 すると、ファニは意外にもベルスターに対し、実に丁寧な挨拶を返した。

 今しがた俺と話したときとは、また様子が違う。

 怒っているというよりも、最大限に警戒している、といった方が表現として適切だろう。

 

「いやぁ何、君が面白い男を飼っているというのを風の噂(・・・)で聞いてね。今後君たちのビジネスパートナーとなる私としても、ぜひ顔を拝んでおきたいと思ったのだよ」

 

 ベルスターは深々と首を垂れるファニに対し、実に偉そうに答えた。

 まるでこの上下関係が当たり前だとでも言うような、そんな不遜さだった。

 

 その光景を見ていると、俺は何か、得体のしれない腹立たしさを覚えた。

 それ故に一瞬口を挟みたい衝動に駆られたが、そこはそれ、なんとか耐える理性くらいはあった。

 

 このわがまま女の不興を買って『やっぱ魔界アイテムの話は無し』なんて思いつきで言われたら、堪ったものではない。

 ファニもその辺を理解しているから、今は下手に出ているのだろう。

 であれば、俺もそれに従うまでだ。不本意ながら、が頭にはつくが。

 

「ありがとうございます。彼――レン・ユーリンは、一週間ほど前にパーティーに入った新人です。以後お見知りおきを」

「一番大事なことが抜けてないかい? ヒュドラを一撃で殺した張本人、だろ?」

 

 ベルスターのそんな返事に、ファニの顔は僅かに、焦燥と驚愕が走ったように見えた。

 そんな彼女をにやけた面で見ながら、ベルスターは続けた。

 

「あぁ、別に以前嘘を吐いたことを責めてるわけじゃないんだ。ただ、お願いがあってね」

「……なんでしょうか?」

 

 ファニはそう言って冷や汗を垂らしながら、ベルスターの言葉の続きを待っていた。

 まあ多分、昨日のあの有様を思い出すに、あのこと(・・・・)だろうが。

 

「この子を私にくれ。いいだろう?」

 

 あぁ、やっぱりな。昨日あんだけ行きませんって断ったのに。いい加減諦めて欲しいもんだけど。

 

「それは……しかし……」

 

 そんなことを思っていると、どうやらファニは、ベルスターへの回答に詰まっているようだった。

 ……これってひょっとしてあれか? 『このザコ魔法使い一人のために魔王様に拗ねられてもなーどうしようかなー』なんて思ってたりする?

 

 いや、むしろそっちの方があり得る。

 俺みたいな不意打ちしかできない無能の底辺を、魔王の不興を買ってまで手元に置きたいかと言われれば、それこそ断る理由なんかないはずだろうし。

 

 まずいかもしれない。このままじゃパーティーに入って一週間で追放されてしまう。

 そして待ってるのは、魔王軍(魔物の群れ)への直送(ドナドナ)ときたものだ。

 

 絶対に嫌だ。何とかベルスターに言って、考え直してもらわないと。

 

「魔王様」

 

 俺はそう言いながら、何とかベルスターの胸の中から逃げ出した。

 

「ん、なんだね愛しのデッドアイ。ベルと呼べと言ったろう?」

「あぁー……ベル、昨日からずっと言ってますけど、俺はここのパーティーです。アナタの軍門に下る気はありません」

 

 俺がそんな会話をベルスターとしていると、ファニは目をぱちくりと開いて、俺を見ていた。

 なにやらびっくりしているようなそんな感じだったが、今の俺はそれに構っている余裕もなく、ベルスターと話を続けた。

 

「いい加減諦めてもらえませんか? こちらもこちらの都合がありまして」

「嫌だね、なんでこの私が、君たちの都合など考えなくてはいけないのだ? それは重要なことか?」

「……ではこうしましょう。もし諦めてくれたら、代わりに別のお望みを叶えますよ」

 

 ベルスターは「ほう」とだけ言って、不敵に笑った。

 

「それは、どんな望みでもか?」

「叶えられる範囲でなら」

「では、(魔王)と本気で戦えと言ったら?」

「……いいでしょう、わかりました」

「ちょっと、レン……!?」

 

 思わずといったように、ファニが口を挟んでくる。

 ベルスターも俺のその答えは意外だったようで、珍しく虚を突かれたような表情をしてみせた。

 

「……ふぅん、口から出まかせではないみたいだね?」

「アナタに通る出まかせを言えるような、上等な頭は持ってませんよ」

 

 まあ、ベルスターもこういう反応にはなるだろう。

 俺なんかが魔王と戦えば、為すすべもなく殺されるだけに決まっている。実質的な死刑宣告だ。

 

 だがそれでも、マシだと思ったのだ。ここから離れて、魔王軍に入るより、死んだ方がはるかにマシだと。

 別に魔王軍だからってわけじゃない。多分これが『ギルドに戻る』という選択肢であったとしても、同じ選択をする。

 

 もう、望まない生活をして、死んだように生きるのは御免なのだ。

 ただ日銭を稼ぐために、全てに嫌われ、何もかもに軽んじられ、それでも生活のためと割り切ったふりをして、惰性的な絶望にただただ沈むだけ。

 そんな生きる屍になるくらいなら、本当の死体になってしまった方が、よほどマシな生き方だ。

 

 それにいい機会だ。これを機に、俺の魔法がどのくらい魔王に通用するのか、確かめてから死ぬのも悪くない。

 俺みたいな底辺の終幕としちゃ、十分すぎて釣りがくる。悪くない最後ってやつだ。

 

「……ックハハハハハ!」

 

 すると、ベルスターは少し間をおいて、心底おかしそうに大笑いをしてみせた。

 なんだ? 俺はそんなに面白いことをいったつもりはないけれど。

 

 ファニのほうを見てみると、彼女は彼女で、どこかあっけにとられたような顔で、俺を見ていた。

 いや、なんだよ。俺そんな場違いなこと言ったか?

 

「イカレてるなぁ、デッドアイ」

 

 考えていると、ベルスターはなおも笑いながら、俺に言ってきた。

 

「まっことイカレてる、望まぬ支配よりも、抗った故の死を選ぶか。一体何が君をそうさせたのか」

「は、はぁ……」

「だがまぁいいさ、デッドアイ。君のそういうところは好きだ。それに免じて、今日は放してあげよう」

 

 そう言いながら、ベルスターは布団をかぶり、二度寝の体勢に入った。

 何が琴線に触れたのかはよくわからないが、とにかく今日は解放してくれるようだ。

 あぁ、助かった。言ってみるもんだな。

 

「さぁ、喋り疲れたから私はもうひと眠りするよ。ではまたな、ファニ、デッドアイ」

「……あ、し、失礼します」

 

 ベルスターの言葉に何やらフリーズしていたファニは、それでもなんとかそう言って、俺に一緒に来るようジェスチャーをした。

 

「ありがとうございます、失礼します」

 

 俺もそれだけ言って、ファニと共に部屋を後にした。

 

「ごめんファニ、手間かけさせたな」

 

 廊下に出て、余計なアクシデントを起こしてしまったことついて謝ると、ファニはなにやら、こちらをジトっとした目で見てきた。

 

「な、なに……?」

「……なんかさ、妙に魔王様と気やすくない? 何かあったの?」

「あぁ、まあ、昨日いろいろと」

「はぁ……勇者といい、本当アナタは厄介な女に狙われるね……」

 

 ファニはそう言って、疲れたようにため息を吐いた。

 それを見て申し訳ないなと思う一方、全くもってその通りだとも思った。

 

「本当にな、一体なんであそこまで目ぇつけられてるのか、全くわからない」

 

 と俺が言うと、ファニは非難するように俺を見てきた。

 何か不味っただろうかと思っていると、彼女は「まあいいや」と言って、言葉を続ける。

 

「それにしてもさ、さっきの話、本気だったでしょ?」

 

 さっきの話、というのは恐らく、魔王と戦う云々のことだろう。

 

「まぁ、ね。いやな思いして野垂れ死ぬより、まだそっちの方が納得して死ねるなって思っただけだよ」

「……レンって、思ったよりバトルジャンキーだよね。ヒュドラのときも思ったけど」

「え?」

 

 俺がバトルジャンキー? ビビりだし、絶対そんなことないと思うけど……。

 

「まぁいいや、とにかく今後は自分の命を軽率に賭けないで。あんな刹那主義な行動は、もうやめてもらうから」

「う……わかったよ、ごめん」

「……本当、勝手に死なないでね」

 

 どこか寂しそうに、ファニは言った。

 なぜそんな顔をするのかは、俺にはわからなかった。

 

「さぁ、酒場に行こうか。みんな待ってる」

 

 彼女はそう言って、廊下を足早に歩いてゆく。

 そうだ、忘れてたが、もうだいぶ約束の時間に遅れてしまっているのだった。

 早く行かなくちゃ。

 そう思いながら、俺はファニの後をついていった。

 

 

 

 

 モニカの酒場に到着すると、店の外からでもはっきりとわかるくらいの、喧騒が聞こえた。

 どうやら今日は結構な人数が集まっているらしい。それはつまり、今回の『仕事』がそれだけ大がかりであることを示していた。

 

「まったく、皆もうお祭り気分だ。まだ始まってもいないっていうのに」

「まぁ、無理もないとは思うけどな」

 

 しょうがないといった感じにため息を吐くファニに、俺はそんな返しをした。

 実際のところ、今回から始まる仕事である『魔界アイテムの仕入れ』が上手くいけば、莫大な儲けになることは想像に難くない。

 

 捕らぬ狸の皮算用と言われようと、狸が罠にかかる見込みがあるのならば、期待もしようというものだ。

 俺も他人が苦手でなければ、彼らのようにはしゃいでいたかもしれない。という程度には理解できる。

 

「じゃ、行こうか」

 

 そう言って、ファニはドアへと近づいていったので、ただそれについていった。

 

 ちなみにベルスターの一件で壊れた店は、いつの間にか直っていた。

 何をしたのかは全くわからないが、ベルスターが直したらしい。

 気づけば入り口だけではなく、割れたはず酒瓶や調度品まで全て元通りになっていたのだから、本当に魔王の力とは得体のしれない者である。

 

 ファニがドアを開ける。

 するとその瞬間、あんなに賑わっていた店の中が、一瞬静かになった。

 

 ファニの後について入ると、店の中は二、三十人近くの人たちで埋められていた。

 その中には、ロロンやモニカさんといった、見知った人たちもいる。

 その全員が、ファニが入ってきた途端、一様に彼女に視線を向けたのだ。

 

「ボス!」

「ボス、お疲れさまです!」

「あ、姐さん! ……レンさんも」

 

 間を置かず、何人かが席を立ってファニに挨拶をしていた。中には当然、ロロンも含まれている。

 他の人は特にアクションは起こさないが、ファニの一挙一動を注視して、これから来るであろう指示を今か今かと待ち構えているかのようだった。

 こういう場面を見ると、彼女は本当にここのトップなのだということを、改めて思い知らされる気分になるな。

 

「おい、アイツって……」

「あぁ、噂のヒュドラ殺しだ」

「マジかよ、そんな力があるようには見えねえが……」

 

 と、不意に聞こえてきたそんな声に気づいた。

 声の方をちらりと見てみると、何人かの人たちが俺を懐疑的な目で見てきていた。

 

 どうにも気まずいというか、いたたまれなくなって、そこから目を逸らした。

 うぅむ、やはりまだ、こういう人がたくさんいるところはどうにも慣れそうにない。

 

「みんな、集まってくれてありがとう」

 

 ファニはそんな挨拶をしながら、酒場の中心に立つ。

 そこには大きめのテーブルがひとつあって、上には地図らしきものが広げられていた。

 

 俺は他の人たちに紛れ、彼女を遠巻きに見ていた。

 そこには、あの年相応の少女の姿はなかった。

 見てくれにまだ残るあどけなさからは想像もつかない、一部の隙も無い鋭さを漂わせる。

 

 今の彼女は、まぎれもなく『悪党共のボス』であった。

 

「何の話をするかは、事前に伝えた通りだよ。そのうえで、これを見て欲しい」

 

 ファニは地図に視線を降ろす。彼女が見たそこは、ヨーキトー王国から遥か南下した先、ナワガカ荒野という地域にある、とある海岸だった。

 付け加えるとそこは、ヨーキトー付近でも、特に魔界に繋がる『(ゲート)』に近いところだ。

 

「前も話した通り、私たちはようやく魔界アイテムの仕入れルートを確保できた。けれど、それは魔界から人間界までの話。(ゲート)からヨーキトー王国まで運ぶためのルートは、こっちで個別に用意しなきゃいけない」

 

 言いながら、ファニは地図に記載されている、ある地点を指さした。

 

「この『ナンショー海岸』付近の地点から、アイテムを積んだ船が魔界から来ることになっているんだ。一般的な輸送船(・・・)に偽装してね」

「積み荷の量は、どのくらいなんです?」

 

 説明するファニに、一人が質問した。たしか、オゾブとかいうおじさんだったっけか。

 すると、オゾブさんはすぐ隣の気の強そうな女の人に、肘打ちをされた。

 

「ボスの話の腰を折るんじゃないよ、最後に聞きゃいいだろうが」

「で、でもよぉ……」

「いいよ、気になったことはどんどん聞いて」

 

 女の人に叱られてるオゾブさんを、けれどファニは宥めた。

 なんてことないというように、彼女はその先を続けた。

 

「積み荷の量は多い。少なくとも、アジト中の馬車を動員したって、持ち運びきれないだろうね。だから――」

 

 言いながら、ファニは輸送船が着く地点の、すぐ横を指さした。

 そこには、とある『駅』が記載されていた。

 

「この駅で使われている大型馬車群(キャラバン)を、こっちで全部使わせてもらう」

「なんだって?」

 

 思わずといったように出た声は、モニカさんのものだった。

 

「どういうこったよファニ。ここのキャラバンって確か、ヨーキトー貴族の領主が運営してるはずだろ。賄賂でも握らせようってのか?」

 

 モニカさんのそんな疑問は、もっともだと思えた。

 大型馬車群(キャラバン)というのは、荷物の輸送のほか、何十人という数の人間を一気に運べる、大型の馬車が何両もあって初めてできる長距離移動スタイルだ。

 その馬車の大きさといったら壮観の一言で、魔法で強化された馬を何頭も繋いでその巨体を走らせる様は、輸送馬車というより戦車(チャリオット)といった方がふさわしい。

 

 確かに、キャラバンであればどんな量の荷物もへっちゃらだろう。

 だが、そう、モニカさんが言った通り、あれはヨーキトー王国に属する領主が運営しているものだ。

 

 使いたいと言って、はいそうですかと簡単に渡してくれるとは思えない。

 モニカさんの言う通り、御者に賄賂でも握らせようというんだろうか?

 

「賄賂は使わない。あれは際限がないからね」

 

 が、モニカさんの予想は外れたようで、ファニは淡々とそう言った。

 

「じゃ、じゃあ、襲撃して奪うとかですか?」

 

 と、ロロンは物騒なことを予測した。

 心なしか目が輝いているように見えるのは、気のせいだろうか?

 

「リスクが高いし、万一奪えたとしても、あれを使いこなせる人間は酒溜まりの鼠(レザボア・ラット)にいないでしょ? 意味ないよ」

「あう、すいません……」

 

 それもはずれのようで、ロロンはしょんぼりとしていた。

 奪えなくてガッカリ……というわけではないはずだ、うん。

 

「じゃあなんだよ、勿体付けずに早く言えって」

 

 しびれを切らしたらしいモニカさんは、面倒くさそうにそう言った。

 それにファニはただ頷いて、けれどゆっくり、口を開く。

 

「……このキャラバン、評判はあんまり良くないんだよね。なんでかわかる、モニカ?」

「あぁ? 知らねえよ、盗賊にしょっちゅう襲われてんじゃねえの? ナンショーは盗賊のメッカだって話だしな」

「その通り」

 

 モニカさんの答えを聞いて、ファニはそう返した。

 なるほどな、どんなにたくさん荷物を輸送できても、それが目的地に届く前に盗賊に奪われるのならどうしようもない。

 評判が悪いのも頷けるというものだ。

 

「このキャラバンが狙わやすいのは、地域の特色ってだけじゃない。襲ってくる盗賊が単純に強くて、護衛している領主の騎士団では手に余るっていうのが大きい」

「ふーん、まぁ騎士団自体、数も練度も低いだろうしな。強いやつは魔物の討伐に割り当てられっから、馬車の護衛は余りモノって相場が決まって――」

 

 モニカさんはそこまで言いかけて、けれど急に押し黙った。

 どうしたんだろうか、と思っていると、彼女は不敵に笑った。

 

「……なるほどな」

 

 どこか楽しそうに、モニカさんは呟いた。

 それにファニはただ頷いて、その先を続ける。

 

「そう、騎士団の手に余るのなら、私たちが代わりにやってあげればいい。民間協力者(・・・・・)としてね」

「え、つ、つまり……どういうことですか?」

 

 ロロンは未だに意味がわからないようで、ファニにそう聞いた。

 ただわからないのは、俺もほかの人たちも同じで、皆一様にファニを見て、その答えを口にするのを待っていた。

 

「……キャラバンの管理を国から任されている領主がいる。名前はビリー・ストラトキャスター伯爵」

  

 と、ファニは笑って、地図の上で指を躍らせる。

 それはいやに様になっていた。

 

「伯爵は最近大した功績もなく、任されたキャラバンはほとんど盗賊の餌代わりだ。そのせいで貴族内でも地位が低いから、ここらで一発返り咲きたいと思っているらしい」

 

 ファニは「そして……」と続けて、妖しく微笑んだ。

 

「キャラバンの確実性と安全性を確立するっていうのは、これ以上なくわかりやすい功績だ。できるのであれば、ストラトキャスター伯爵は飛びつきたいはずだよ、不思議な荷物が(・・・・・・・)気にならない(・・・・・・)くらいに(・・・・)

 

 そこまで聞いて、ようやくファニの言いたいことがわかってきた。

 そうか、つまり――

 

「一役買ってあげようじゃない、ストラトキャスター伯が守る海岸を、キレイにするためにね」

 

 そう、ストラトキャスター伯の出世街道を手助けする代わりに、キャラバンに魔界アイテムを載せて、輸送することを黙認させる、ということだ。

 

「さぁ、やろう」

 

 ファニのそんな声の直後、集まった人たちは(とき)の声を上げた。

 それは否応なく思わせる。ファニは本当に、他人のその気にさせるのが上手い。

 

 不思議だった。

 なんたって、次の相手は盗賊だ。

 恐ろしいはずなのに、それよりもずっと、楽しみだ。

 

 ファニの話術に俺も乗せられただろうか?

 まぁ、どうでもいい。どうせなら、面白おかしくやってやる。

 

 掃除しようじゃないか。

 ストラトキャスターの、海岸を。

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