怠けたがりVtuberは天下取るのに大忙し 作:レイメイミナ
「わたし達からの質問は……そうだなぁ。どうしよっか、ユニ」
「うーん……ごめん。物騒なのしか出てこない」
ㅤ一体どんな人生歩んだら質問内容が物騒なものだけになるのだろうか。と心の中でツッコミつつ言ったらちょっと不味いだろうなと思って飲み込む。
ㅤそれにしても2人からの質問、一体どうなるか。これまでの彼女達の印象は「誠実で朗らかだが明らかに何かがおかしい」という具合だ。そんな2人から飛んでくる質問なんて得体が知れない。
「んー……あ。1個でた」
「なになに?」
「自分の人生を変えたものは何か……的な」
「あ、いいかも!」
ㅤそう来たかぁ〜!
ㅤ結構どノーマルというか……ちゃんと良い先輩の質問だ。でもこれまでの何かが変な言動から不気味さに拍車がかかってる。この2人の何が怖いって、絶対に変なこと言ってるはずなのに本人の性格はむしろ友好的なところだと思う。無償の愛を受け取る側みたいな気まずさを感じる。
「それでそれで、御三方の人生を変えたものって何かな?」
ㅤまぁされて困るような質問でもないし、良いアピールになると思うし。変に取り繕わず普通に答えよう。
「んー……私はやっぱりゲームかな。それまで本っ当に何もかもに関心なくって無趣味だったんだけど、対人ゲー始めてから嘘みたいに活気づいたんだよね。勉強サボってゲームしたいって思うくらいには」
「え、それ普通じゃないの?」
「いや私はちゃんと勉強してますけど」
「えっら……」
ㅤ学校での成績はオール4にプラス5がちょいちょい。特別高くはないが先生から文句を言われることはない、ってぐらいの数値だ。まぁサバンナ出身に人間の勉強は少々難しいかもだが。
「あたしは2つあるんだよねー。アイドルを目指そうって思ったときと、Vtuberについて知ったとき。どっちも何気なく付けたテレビで取り上げられててさ、運命!ㅤって感じだったんだよね!」
「まぁなんて王道な……」
「とてもさっきまで下ネタ連発していたやつとは思えないね」
「朱夏先輩ナイスツッコミ」
ㅤ朱夏先輩達も段々とこいつの扱いがわかってきたみたいだ。
「マルマルちゃんはどう?」
「ワタシはやはり……小学生くらいでしょうか?ㅤそのくらいに父と見に行ったシン・ゴ〇ラに圧倒されたときだと思います。それからワタシの映画道が始まりましたからね」
「あーあれでしょ?ㅤ内閣総辞職ビーム」
「そんな揶揄もされますけどね。実際に見ると笑ってる余裕などなかったですよ」
「そんな感じなんだ」
「今度一緒に同時視聴しますか?」
「おー、いいかもね」
「〇ジラって、あのでっかい二足歩行のサラマンダーみたいなやつだっけ?」
「ゴ〇ラのことをそう表現するのはユニ先輩ぐらいなものですよ。実にユニークです。ユニだけに」
「マルマル?」
ㅤそういうジョークも言うんだなマルマル……。大体緩衝材か映画にマジになってるときしか知らないから年相応にふざけるマルマルは初めて見たかもしれない。
「じゃあじゃあ、わたしからもひとつ。みんなVtuberとしてやってみたいことってある?」
ㅤこれまたしっかりした質問だ。
「やってみたいこと、ねぇ……」
ㅤ正直、無い。
ㅤ無いっていうか、今までの目標がVtuberになることで、現在進行形でやっているのが無事に配信を終わらせられますようにというお祈りなので、これからの目標というのを考える暇なんてなかったのだ。
「はいはーい!ㅤあたし、ソロライブやりたいです!」
「お、いいねぇ」
「朱夏先輩はソロライブ経験済みですよね?ㅤどんな感じでした?」
「どんな感じかぁ……。いやぁあのときは無我夢中っていうか、とにかく何事もなく最高の形で終われー!ㅤって念じながら歌ってたね。ソロライブって、ほら。スタッフさんはいるけど結局は誰にも頼らずひとりでやるわけだし。でも僕ひとりのために何万人も集まってくれたのはすっごく嬉しかったなぁ」
「そうなんだ……!」
ㅤ舞華はちゃんとした目標がある。ソロライブなんて、私からすれば何万人ものファンの前で歌って踊れなんて無理な話だ。泣いて逃げ出す姿が容易に想像できる。けど舞華はやろうとしている。それはやっぱり、一度夢に敗れた者だから。夢が掴めない悲しみを誰よりも知っている人間だから。
ㅤ売れない中でも頑張って、体まで売って、酸いも甘いも知り尽くしてなお屈託のない明るさで……大分スケベだけど、明るさを保って自分を魅せている。その姿勢はやはりアイドルとして尊敬するべきものなんだろう。
ㅤ
「ワタシはやはり映画を作りたいですね。やるからにはB級などと呼ばれ叩き付けられるようなものではなく、最高の物語を演出したいです」
「ほほぉ。ちなみに構想みたいなのがもしあればお聞きしても?」
「何個もありますよ。ホラーにサスペンス、ラブコメ、特撮も。あと──」
ㅤマルマルは映画作りたいんだ。まぁそうか、映画狂いだしな。
ㅤ舞華はライブ、マルマルは映画、2人ともそれぞれの得意の到達点に行こうとしている。となれば私は……怠け者の子洗井ナマリがやりたいものは……!
「ナマリンは?」
「……あっ、私?」
「そうですよ。ナマリのやりたいこと、なんですか?」
ㅤいつの間に自分の番が回ってきていた。でも大丈夫だ、もう答えはあるから。
「私は…………ゲームの大会を開きたいかな、って」
「ゲームの大会?」
「参加しても主催でもどっちでも。とにかくみんなでワチャワチャしたいなぁって思って……先輩方全員巻き込めば撮れ高取りながらゲームでエンジョイできるし、何より4期生が1期生をボコすジャイアントキリングだってできる」
「おい?」
「まぁとにかく、そんな感じかなって、……思います」
ㅤやばいなこれ、言っててめちゃ恥ずかしい……。
ㅤでも、
「面白そうじゃん!ㅤあたしもやりたーい!」
「ワタシもやってみたいですね。たまには映画以外のことで楽しむのもアリですし」
「僕はデカいネギ背負ったカモだけど、カモなりに意地を見せたいね!」
「でもいいのかにゃあ?ㅤそんなのわたしら『とら蕃印』が無双しちゃいそうだけど」
「そんな先輩方を倒すからジャイアントキリングなんですよ。ね、ユニ?」
「うん。腕がなまる……なまっちゃダメだ!ㅤ腕がなるってもんだよ!」
「てェ〜、戦りてェ〜……」
ㅤここには、無関心を貫く人も、馬鹿にする人だっていない。こんな私が開く催しであっても、こんなにも有名で面白くて……最高の人達がついてきてくれるんだ。
ㅤ私は今、改めて……この憧れた世界に飛び込んで良かったと、再認識した。