怠けたがりVtuberは天下取るのに大忙し   作:レイメイミナ

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オーラス家にお泊まり②

ㅤユニット名『オーラス姉妹』。

 

ㅤオーラス・ユニアとオーラス・メイラというエルフの双子姉妹が異世界から突如この世界にやって来て、この世界のことを知るために配信活動を始めた……という設定のタッグユニットだ。

 

ㅤ双子ということもあってチャンネルはひとつだけで2人兼用。配信は一人のときもあるが基本的に2人揃って行っており、ゲーム配信では基本的に1ゲームオーバー毎に交代、もしくはマルチでプレイしている。アバターもコンパチ仕様でユニアが紫を主体としたカラーリングで右手にハルバードを、メイラが緑を主体としたカラーリングで左手に杖を持っているという感じ。SNSアカウントは一応、2人で分けられているが、基本的に告知か相方自慢しかされていない。

 

ㅤそしてそんな2人の特徴は…………『百合営業がヤバすぎる』ということ。

 

ㅤ雑談配信では基本的にイチャイチャしている。ボディタッチも軽率に行うどころか、初配信でほっぺにチューをやらかして即刻トレンドをかっさらったこともある。一人だけのときですら頻繁に相方の惚気話をして同席していたライバーが気圧されていた。

 

ㅤまぁそんな2人なのである。それ以外にもVtuberとしてのロールプレイを決して忘れない、オフのときですら徹底してるみたいなこともあるがそんなことはとりあえずいいのだ。

 

ㅤ過激すぎる百合営業をかましている2人が同棲……ルームシェアをしているということ。それはつまり……アレなのでは?

 

「どうぞ入って。今からご飯作るからゆっくりしてってね」

「あ、はい」

「おっ邪魔っしまーす!」

 

ㅤゆっくりしていってね!ㅤ……コホン。

 

ㅤ部屋に上がり、玄関でそっとスニーカーを脱ぎ、綺麗に並べておく。外も綺麗なら中も綺麗……こんな高そうなところで不躾な真似はできない。

 

「いや、ガチで広……」

 

ㅤ一体何畳あるんだって感じのリビングには大きめの有機ELテレビ、人をダメにするソファ、ぬいぐるみ、アニメの武器とかのおもちゃ(レプリカって言ったらいいのか?)が展示品のように並べられていて、壁際には大きめのデスクに高そうな機材がずらっと置かれていた。ゲーミングチェアも2つあるし、普段はあそこで配信しているんだろうな。

 

「おお……流石のあたしも驚愕ものだよ」

「舞華、部屋狭いんだっけ。何畳くらいなの?」

「6畳弱」

「せっま……」

 

ㅤどうやって配信してんだこいつ……。

 

ㅤそれでだ。どうしようか、こんな綺麗な家は創作でしか見たことがない。照明も高級そうな暖色系のLEDだ。これは偏見なんだけど、白色系の照明って家賃安そうだけど、暖色系の照明は家賃高そうに感じるんだよね。かといって我が家の照明を暖色系に切り替えたところでなんか古そうに感じる。一体何故なんだろうか。

 

ㅤとりあえず、あのソファには近付かないようにしよう。絶対根を張って動けなくなる。

 

 

「おまたせ〜。簡単なシチューだけど作ってきたよ……って、なんで床に座ってるの?」

「いや、なんか居心地悪くて……」

「そんなに遠慮しなくてもいいのに」

「コミュ障は、人の家に泊まったことなんてないから……」

 

ㅤそれもこんな高級ホテルみたいなところだったら萎縮するに決まってる。

 

「ビーフシチュー!ㅤ美味しそ〜!」

 

ㅤそしてお前は何故そんなにいつも通りなんだ。やっぱりアレか、アレで慣れてんだなお前!ㅤ具体的には言わないけど!

 

「ささどうぞ、召し上がれ」

「いただきまーす!」

「い、いただきます」

 

ㅤテーブルに並べられるフランスパンとビーフシチュー、そして謎のビーンズソテー。なんだこれ。美味しそうだけど。

 

ㅤスプーンで角切りのお肉をすくって、ひと口入れてみる。……美味い。コクがあってまろやかで、スパイスも効いているけど食べやすい。なんというか、バランスの整った味だ。ちゃんと計量して作ったみたいな……。

 

「ん〜!ㅤすっごく美味しいです!」

「そっか、良かった」

「あり合わせので作ったから微妙って言ってたもんね」

「それは言わないお約束」

「あり合わせでこんな美味しいの作れるんですか?」

「まぁね。わたし達、サバイバルみたいなことしてた時期もあって。そんな中できる娯楽といえば料理くらいだったから」

「私は既に胃袋を持ってかれてる」

「掴まれてるんじゃなくて持ってかれてんですね……」

 

ㅤサバイバル……言い方はまぁいいとして、えっと……ホームレス?ㅤいやそんなことはないはず。せいぜいキャンプにハマって日本中キャンプの旅に出てたとかそんなとこだろう。

 

ㅤひと口大に切られたフランスパンを手に取りながら、メイ先輩の方を見る。綺麗に具をすくい、一滴もこぼさず口に運び、一定のリズムで咀嚼、そして音を立てずに飲み込んだ。な、なんて育ちのいい仕草……!

 

ㅤまさかとは思ったが、やはり良家のお嬢様だったか……。ユニ先輩も綺麗な方だけど、メイ先輩はぶっちぎりだと思う。

 

「それにしてもすごいですよね。こんな豪邸で2人暮らしして、しかも一緒に配信活動してるって」

「豪邸って、ここ普通にマンションだよ?」

「いえいえ、下手な一軒家よりも広いですよここ。それにちゃんと隅々まで掃除されてるし、なんというか、理想的な生活風景って感じです」

「そんなことないよ。家賃とか光熱費とか、頭悩まされてばっかりだし」

「たまたま初配信がバズってなかったらどうなってたことか……考えたくもない」

 

ㅤそう言ってユニ先輩は目を逸らした。なんだかんだまだ半年なんだなこの人も……。

 

「あ、そういえばその初配信なんだけど」

 

ㅤここでさっきまで夢中で食べていた舞華が割り込んできた。ビーフシチューもフランスパンも食べきって残るはビーンズソテーだけだが、明らかにスプーンが進んでいない。好き嫌いするな、アイドルだろうが。

 

「あのチューの真相って一体?」

「あっ……」

 

ㅤうおおおおおおい!!!??!!?

 

ㅤ舞華の馬鹿!!!ㅤすいませんうちの馬鹿が変なことを!

 

「え、えーっと、あれは、その……」

 

ㅤほらメイ先輩めっちゃ困ってんじゃん!ㅤ訂正なさい舞華!

 

「あー。初配信でメイが緊張しっぱなしだったからほぐすためにしたんだよね、あれ」

「えっ」

「えっ」

 

ㅤえっ。

 

「ち、ちょっとユニ!」

「別によくない?ㅤ隠してるわけじゃないし」

「そ、それはそうだけど……」

「え、隠……え?ㅤなに?」

「そ、それはつまり……?」

 

ㅤ私が困惑しているところに舞華が聞いていく。いや、まさかそんなこと……。

 

「うん。私達、付き合ってるんだよね」

 

 

 

ㅤ………………うせやん。

 

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