怠けたがりVtuberは天下取るのに大忙し 作:レイメイミナ
「じゃ、着替えてくるから待ってて」
ㅤ前回のあらすじ。
ㅤオタク死亡。
ㅤいやいや、待ってくれ。新衣装?ㅤしかも2枚?ㅤ嘘じゃん。私がライバー目指して奮闘してる中そんなことになってたの?ㅤやってくれたなぶいすた。グッジョブぶいすた。
「お待たせ、待った?」
「今来たとこです……じゃなくてハァァァッッ!?」
「一着目は水着よ。どう、可愛い?」
「火力たっけ!!」
ㅤ水着!!??!?!?!!??!?
ㅤ黒ビキニに薄手の花柄の布1枚。そして「いやそれ絶対錆びるだろ」というツッコミを鼻で笑うような刀。絶対着なさそうなのにしっかりフリルも入っている辺りが抜かりがなさすぎる。やばい。わりぃ俺死んだ。
・かわいい
・かわいい
・アッ(絶命)
・クソッ、時雨の癖に……!(尊死)
「フッ、やはり皆推しの水着姿というものには弱いわね。どうナマリ、これがあなたの推しのあられもない姿よ」
「自分でェ、言うなァ!ㅤ自分でェ!!」
・限界オタク?
・俺かな?
・あられもない姿呼ばわり
ㅤあまりに初手10割すぎる……え、こんなのが1年間封印されてたってことですか?ㅤ俺許せねぇよアンチのこと。
「ちなみにもう1枚脱げる」
「ダメですよ。それは許しちゃいけない」
「幸せそうね」
「新衣装1着目が水着?ㅤなんだ、時雨先輩の母上はドスケベなのか……?ㅤドスケベか……」
「皆、これが新鮮なオタクの悲鳴よ」
・限界オタク晒し系Vtuber
・オタク同伴で草
・ナマリ強く生きろ
ㅤ生きるよ。でももう1着ある事実に気付いてまた瀕死になってる。おらこんなとこで死にたくねぇだ。ちゃんとした形で時雨先輩とサシコラボしてぇよ……。
「まぁこんなに良いものを仕立ててもらって無事隣のオタクを瀕死にしているわけだけれど」
「果たしてそれは無事なのか?ㅤ私の命は今破壊と再生を繰り返しているが?」
「こんな感じで。で、私としてもハイ次ーなんて勿体ないことはしたくないのよ。というわけで」
ㅤ時雨先輩がマウスを動かして、とある画像を持ってくる。海の写真みたいだった。
「今から八景島に行った話をします」
「バカンス楽しんでんじゃねぇか!!!!!!!」
「バカンスじゃないわよ傷心旅行よ」
「うっ、その術は私に効く……」
・Vlogうぉぉおおおおお!!!
・ナ〇トww
・後輩ちゃんミームの人で草
「可愛かったわね、このマンボウとか。ゲート潜ったらイルカも泳いでて、それにペンギンショーも見られたし」
「あれやっぱ普通に満喫してる……」
「費用は馬鹿にならなかったけどその分良いものが見れたわ。ナマリも今度一緒に行く?」
「Vlogとしてならまぁ……」
「大丈夫、変なことしないわよ」
「わざわざ言うあたりする発想はあるんだなぁと」
「…………しないわよ」
「その間はなんですか……」
ㅤ身の危険を感じる。行くときは一応マネージャーさん同伴させよう。あの人も休めるだろうし。
ㅤそれからも八景島のお話はしばらく続いた。巨大な水槽だったり、海獣だったり、湿地帯の動物だったりとか、色々なお話を聞くことができた。正直めっちゃ行きたい。でも無理なんだ、スケジュール的に。
「ふぅ、充分この水着姿を堪能してくれただろうし、次に行きましょう」
「ちょっと待ってくださいね。今から手足に拘束具を付けるので」
「なに、ナマリってそういうのが好みなの……?」
「違いますけど、多分ぶっ飛ぶので」
「さっきだって情緒がおかしくなるだけで済んでるじゃない。大丈夫よ」
「それで済ませたのを褒めて欲しいくらいなんですよ!ㅤオタクの心を弄びやがって!」
・てぇてぇ……てぇてぇか?
・限界オタク必死
・わかる
ㅤこっちは大変なんだあなたのせいで!ㅤコメント欄にもきっと無数の私が生まれているに違いない。どんな地獄絵図だよ。
「はい、じゃあ着替えるから」
「せめて心の準備だけさせてください」
ㅤはいまず深呼吸。「推しの部屋で深呼吸するのキモくね?」という思考を東京湾に沈めて深呼吸。続けて深呼吸。そして深呼吸。
「ゲホッ、ゴホォッ!」
・むせてるやん
・がんばれ
ㅤそして画面内ににゅっと生えてくる時雨先輩の御御足。先程は水着だったのでビーチサンダルだったが、今回はなんとロングブーツであった。
「はい、お次はこちら。秋服よ」
「ガタッ」
ㅤ膝から崩れ落ちた。
・ナマリー!!
・良い奴だったよ……
・わりぃ、俺死んだ
「今のコメントCV.福〇潤じゃなかった?」
「誰が半身不随の妹やねん……」
「あ、ツッコミはできるのね」
ㅤ文字通り横転した私は命からがら起き上がり、なんとか着地した。直視したらまた横転するのでどうすることも出来ない。一旦帰っていい?ㅤ帰ってから思う存分横転するからさ。
「なんすか、今日私の命日なんすか」
「私の復活記念日、そしてなましぐ記念日よ」
「なましぐ記念日……?」
「そう。これを機に私達には沢山の案件やファンアートが舞い込み一躍トレンド入り、運営からも百合営業をお願いされてとうとう公認に……!」
「…………」
ㅤ何を言っているんだこの人は。本当に私の推しなのか?ㅤなんでこんな私のこと好きになってるんだ?ㅤ夢か?
・後輩に劣情を向けるな
・一体何がどうしてこんなことに……?
「私が知りたい」
「身体に教え込ませてもいいのよ?」
「顔がいい女に襲われたら受け入れちゃいそうだからやめてね」
「押せばいけるのね。メモっとこ」
「違う!ㅤ違うから!」
ㅤそうして新衣装で私を悶絶させながら暴走しまくった言動で私を困惑させる感情の忙しい配信は幕を閉じた。その同接数は5万を超え、トレンド2位に迫るほどの盛り上がりを見せた。
ㅤその後、時雨先輩は2期生や1期生の枠で凸を受けたり、コラボ配信をしたりしながら順調にリハビリをこなし、復帰から1週間経った日に遂にソロ配信を行うほどに回復。そのときはソシャゲのプレイ配信だったが、徐々に雑談配信などもこなすようになっていった。
ㅤ私のおかげ……なんて事は思っちゃいないけど、あんな恥ずかしい告白が私の推しをもう一度立ち上がらせるきっかけになったならそれ以上は何も望まない。今は、また亜刃時雨のリスナーになれること……そして、時雨先輩とコラボできるってことを、全力で喜びたい。
「それじゃあまた、赤い月の日に。ごきげんよう」