怠けたがりVtuberは天下取るのに大忙し 作:レイメイミナ
「……お、お久しぶりです」
「うん、久しぶり」
「いつぶりでしたっけ、半年くらい?」
「うん205日前だnう゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛お゛か゛え゛り゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛〜!!!!」
「うおぉう……」
ㅤ実に半年ぶりとなる、ステ姉もとい光里ステラとの対面。そんな中彼女は突然決壊した。
「気持ちはわかりますから落ち着いてください」
「うぅ、ひっぐ……だってぇ……!ㅤもう一年だよ?ㅤあれから……ボクは胸が張り裂けそうだったんだよぉ!ㅤ何にもできなくて叢雲ちゃんも霧雨ちゃんも卒業しちゃって!ㅤしぐちゃんは残りたいって言ってくれてそれは嬉しかったけどでも無期限活動休止になっちゃってそんなのもうリスナーの視点からしてみれば卒業と同義じゃん!ㅤ自分の心と一緒に希望が打ち砕かれるくらいならいっそトドメを刺して欲しいって絶対思ってて自分がそうだから!ㅤボクもそうしてあげた方がいいと思ったけどでも唯一の希望に縋りたい気持ちもあってとどまったけどずっと苦しくってゲホッゲホォッ!」
「止まって、止まりなさい!ㅤあなたが咳き込むと洒落にならないから!」
ㅤマネージャーさんがペットボトルの水をステ姉に飲ませてあげた。
「はい、吸って」
「すぅ……」
「吐いて」
「はぁ……。よし、完璧に落ち着いた」
「本当よね……?」
ㅤ完璧に落ち着いたらしい(真偽不明)ステ姉は咳払いをしてから、改まってこちらに向き直した。必死に涙をこらえている顔である。
「改めて、おかえり。本当におかえり」
「え、えぇ……ただいま」
「記念になんでも買ってあげる。最強の防音室を兼ね備えた別荘とかどう?ㅤあ、最終的にはそこに住むことになるのか。じゃあ使用人も手配して……」
「いいから!ㅤそこまではいいから!」
「むぅ……しぐちゃんはもっと自分の価値を感じた方がいい。国の至宝なんですよ!?」
「怖い。その推され方怖い」
ㅤナマリも中々だったけれど、この人はこの人で大概だ。ナマリが推しを褒め称え神と崇める存在だとするならば、ステ姉は存在を重要としすぎて明後日の方向まで尽くすタイプなのだろう。この人の場合本当に別荘を(一括で)買うだろうし、使用人も用意してしまいそうだ。まぁメイドに御奉仕されるのは全人類の夢だとしてもそこまで尽くされたら私も困惑してしまうわけで。
「それでコラボの件なんだけど」
「恐ろしく早い話題の切り替え……私じゃなきゃ見逃してるわね」
「ボク的には凸待ちの方式で行きたいと思ってるんだ。パーティーへの招待っていう設定でね」
「パーティーっていうのは、例えばどんな感じですか?」
「亜刃時雨復活祭です」
「おかしい、私はいつキリストになったのかしら……」
「しぐちゃん復活の日を祝日にしたってボクは一向に構わない」
「構うのよ。あなたが構わなくても日本中が構うのよ」
「ボクに構ってるくらいならしぐちゃんの配信を見てほしい。天啓だから」
「仮にも登録者数200万行ってる人とは思えない……」
ㅤ駄目だ、この人と話してると頭がおかしくなる……。でも本当に面白いし自然と惹かれてしまう。俺ステラ推しやめらんねぇわ。
「……ちなみに、誰を呼ぶ予定なんですか」
「もうアポは取ってるんだよね、この日空けといてって。それで呼べたのがしゅーちゃん葉ちゃんアイリちゃんリカちゃんミスちーとユニちゃんとー……」
「もういいもういいもういい!ㅤ大体来るじゃない!?」
「箱外の人も呼んだら何人か行けるって。えーっと……」
「あ、後で聞くから大丈夫よ!」
「そう?」
ㅤこの圧倒的社交の暴力!ㅤやはり暴力、暴力はすべてを解決する……!
ㅤにしたって恐ろしい。この人のことだしどうせとんでもないビッグネームだろうと思っていたがまさか箱内だけでも今脂が乗りまくっている人達が片っ端から来るのは想像がつかなかった。(その後箱外の人のリストも見たが人気Vtuberからアニメに引っ張りだこの超有名声優まで連なっていて大変なことになっていた)
「じゃ、そういうことで!ㅤいつにするか早速決めちゃおっか!」
「『そういうことで』で片付けたくないのだけれど……まぁ、準備期間も兼ねて1週間後とかかしら」
「おっけ。じゃあ1週間後ね!」
「爆速で決まった……」
「これぞフッ軽ですね」
ㅤそのトーンで現代的すぎるワードを使われると脳がバグるのでやめてほしい。
「本当はスケジュール詰め詰めなんだけどねー。しぐちゃんの為ならそんなこと言ってもいられない!ㅤ粉骨砕身の思いでやっていくに決まってるのだよ!」
「無理だけはしないでくださいね。あなたのお身体には登録者200万人分の価値が秘められてるんですから」
「モチのロン!」
ㅤ本当に大丈夫だろうか……。