怠けたがりVtuberは天下取るのに大忙し   作:レイメイミナ

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(デビュー前→初配信)うちの同期はやばいやつしかいない③

ㅤ色々と大変だったが、なんとか復活した私は、『てんから』のみんなと一緒に席に座った。

 

「はい、お茶とお弁当!」

「ごはん!!!!!」

「うおっ!」

 

ㅤご飯だやった!ㅤただでさえ腹ぺこだったのにマルマルのせいで更にエネルギーを消費したからホントっ……ホント!!

 

「いただきます!」

 

ㅤ私はそのままの勢いでお弁当の食材を口に運んでいく。あー、格ゲーでコンボ決まったときみたいな爽快感……。

 

「よっぽどお腹空いていたんでしょうねぇ」

「だえのへいあとっ!(誰のせいだと!)」

「ハイハイ、ワタシが悪かったですからちゃんと飲み込んでから喋ってください」

「そーだよナマリン、お行儀悪いよ?」

「んっ……ゴクン。母親みたいなことを……」

「ぐはぁっ!」

 

ㅤなんだ舞華急に悲鳴上げて。どうした。

 

「今のナマリンちょっとエロすぎ……高校生が出していい色気じゃないよ……」

「やかましい!」

 

ㅤただのセクハラだった。いや”ただの”って何?ㅤセクハラは許されないが?

 

「で、マネージャーさんは?」

 

ㅤそういえばマネージャーさんの姿が見えないので聞いてみる。

 

「あぁ、マネちゃんね……ここ1週間休みも取らず退勤もしないでずっと働いてたらしくってね。さっき「おっきいプロジェクトが、おっきいプロジェクトがー!」って叫びながら強制退勤させられてたよ」

 

ㅤコワー……。

 

「……私達『てんから』の活動方針1つ目は、『マネージャーさんの負担にならないこと』にしようか……」

「そうですねー……」

「さんせー」

 

ㅤあのマルマルですらさっきの熱を忘れドン引きしている。

 

ㅤ閑話休題。

 

ㅤお茶をゴクゴクと飲んで、2人に今後のことを打ち出す。

 

「で、どうしようか。デビューしたら」

「あたし、歌枠めっちゃやりたい!」

「映画紹介はもちろんのこと、作業配信や不慣れながらゲーム配信もやってみたいですねぇ」

「うん、それはお前らが勝手にやってればいいけどね?」

 

ㅤくっ、やはり凸凹トリオとなることは必至か……。

 

ㅤ私はゲーマー、舞華はアイドル、マルマルは映画。

 

ㅤこんなチグハグな面子でユニットが務まるはずがない。『ASTRUMS』は2人とも占星術師だし、『オーラス姉妹』は名の通り双子姉妹の設定だ。壊滅してる『刀蘭剣華』でさえ刀を持つ少女達で一貫している。というのに、この『天下 la peace!』はてんで統一感がないのだ。運営は一体何を思って私達をユニットに……。

 

「”私達3人”が、何をやるかってことだよ」

「うーん、ライブとか?」

「デビュー当初は3D未実装だよ」

「え、そうなの!?」

「そうだよ。『オーラス姉妹』はまだ無いし」

 

ㅤ裏ではもう出来てるかもしれないけど。

 

「そもそも私、運動さほど得意じゃないし」

「ダンスなんてステップ踏めれば大体できるよ。元アイドルのあたしが保証する!」

「ワタシもぉ、その辺りは少し……」

「体つくりなら任せて!」

 

ㅤなんて頼もしいんだ。セクハラ常習犯じゃなければ尊敬できたのに。

 

「まぁ舞華が仕切ってくれるならライブはやること候補に入れて良さそうかな。なんというか、Vっぽいし」

「ワタシもやりたいです。オペラとか」

「オペラはなんか違うだろ……」

「いえいえ、歌って踊って想いを伝えているのですからライブですよ」

 

ㅤどっちかと言えば演劇……まぁいいや。こういう手合いは何言っても折れない。

 

「あたしがライブ、マルマルがオペラ……うんうん!ㅤで、ナマリンは?」

「え、私?」

 

ㅤまずい、自分で仕切っておきながら自分がやりたいことまで考えてなかった……!ㅤ話し合って決めりゃいいだろとか思ってたから……!

 

「え、えーと……ゲーム大会とか?」

「ゲーム大会!ㅤいいねいいね、やりたい!」

 

ㅤ私達がデビューすれば、『ぶいすた』でアクティブなライバーは合計16人になる。これだけの人数がいれば結構大規模で楽しい大会が開けるかもしれない。

 

「でも、それをやるには私がビッグにならないと……」

「ワタシ達全員が力を合わせて、共にビッグになればいいんですよ」

「そうそう!ㅤあたし達『天下 la peace!』が『ぶいすた』に革命を起こす最強ユニットになればいい!」

「うへぇ……なんてお熱い」

 

ㅤこういうノリは嫌いだったはずだ。ワンフォーオール、オールフォーワンみたいな。

 

ㅤけど、なぜだろうか。

 

ㅤこの凸凹トリオなら、面白おかしく、やってみせそうな気がした。

 

ㅤ今までずっと、ゲームばかり、他人のことなんて考えなかった人生。でも、他人とこうやって話して、何かをするのも、いいのかもしれない。

 

 

ㅤと、思っていた矢先の同期の初配信。

 

「見てよこの衣装!ㅤアイドルって感じでしょ!ㅤいいよねこの肩出し……脇から滴る汗がよくわかるし、そして何よりこのミリレベルではみ出てるおっぱい!ㅤ我ながらちょっとスケベすぎる……みんなの平常心を崩してしまって申し訳ない!ㅤいやぁこれだからGカップの女は!」

 

・アイ、ドル……?

・絶対アイドルが語っていい内容じゃなくて草

・えっっっっ

・わかるマン

・《子洗井ナマリ》清楚はどこいったんだオメェ!

 

ㅤ清楚はどこいったんだオメェ!

 

「あれ、ナマリン!ㅤ来てくれたんだ!ㅤいやぁ、Vtuberにはセオリーというものがあってね……。Vtuberにおける清楚っていうのは、破るためにあるんだよ!」

 

ㅤねぇよ!!ㅤ全国全世界の清楚系Vtuberに謝れ!!

 

ㅤという感じで、舞華は早々に王道アイドルとしての自分をぶっ壊していった。いや元々清楚なんて一言も言ってないんだけどさ、アイドルが平気でおっぱいとか口にすんじゃねーよ。

 

ㅤ対してマルマルの初配信。

 

「ワタシはですねぇ許せないものがあるんですよ!ㅤそれは映画館にデートで来たカップルがラブコメ映画を見てるときにそっとお互いの手を重ねるアレ!ㅤ映画見ろよ!!!!ㅤお前らがイチャついてんじゃねぇよ!!!!ㅤと声を大にして言いたいのです!ㅤそんなお前らにはこの超B級サメ映画でイチャつく間もなく大笑いしてりゃいいんですよ!!」

 

ㅤ自分のことそっちのけでなんかキレていた。そっち方向でキレるやつ初めて見たよ。

 

ㅤそんなこんなで、あの日お喋りしている間に生まれた仲間意識のようなものは、初配信の日で一気に胃痛の種へと変わってしまったのでした。チャンチャン。

 




(初配信後のナマリのつぶやき)
拝啓、Vtuberをめざしている皆さんへ
私達『天下 la peace!』の初配信は見てくれたでしょうか

私は女子高生の身でありながら、”あれら”の面倒を見ることになります

よろしくどうぞ

(舞華、マルの初配信タイトル)
・【初配信】舞華・スターライツです!!!!!【ぶいすた】
・【初配信】映画大好きマルマルさん【ぶいすた】
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