怠けたがりVtuberは天下取るのに大忙し 作:レイメイミナ
ㅤということでやってきた人生初特番。なんだか既に疲れた気分だ。
ㅤ私はともかくほかの2人が何かしでかさないか不安でならない。流石に大丈夫だとは思うが、もしも暴走したら私じゃ手に負えない。頼むから先輩方のお手を煩わせるようなことはしないで欲しいんだが……。
「お疲れ様でー……」
ㅤ挨拶と共に楽屋の扉を開ける。
ㅤ目の前にいたのは3人の女性。左の人は腕をL字に構えており、右の人はガニ股気味で腕をクロスさせている。そして真ん中の人は内股で両手を腰に当て、堂々と上を見ていた。
ㅤそう、皆さんご存知某柱の人のアレであった。
「お前が子洗井ナマリだな?」
「ようこそ『ぶいすた』へ。歓迎しよう」
ㅤあー、イカれてんだ。この事務所。
「その風体で言われて喜ぶやつの方が少ないと思いますけど」
「それはそう」
ㅤしかしこの風格、ジツサイツヨイ。恐らく今日の特番で共演することになる先輩方……。
「それであなたがたは一体……」
「ワムウでございます」
「神砂嵐やったらワムウってことにしときますけど」
「すいませんでした」
ㅤ引くのが早い。まぁ上腕をそのまま360度回転させろなんて言われたら私でも逃げ出すが。
「私は『
「おーあなたが!」
ㅤ前の配信でコメント欄に現れた2期生の大先輩!ㅤ程よく着崩した制服にパンチラ防止のスパッツ、そしてネコミミという王道スタイルが特徴の人だ。
「そしてこちらが」
「フーっ、スっとしたぜ」
「はよせい」
「はいはい。『ぶいすた』の夏担当、『
ㅤ1期生、四天王の1人だ。四季モチーフのライバーが一生増えない中1人ただひたすらに『ぶいすたの夏担当』を背負い続ける謎の鋼メンタル!ㅤそしてゲームつよつよのとら子先輩とは対照的なゲームよわよわ勢なことでも有名。
「後輩なのにゲーム上手すぎて雲の上の存在だと思ってます。よろしくね」
「いえいえこちらのセリフですよ。寧ろ黎明期を支え続けた1期生にそんなことを言ってもらえるなんて光栄です」
ㅤあの時代を知ってる者からすると、1期生に会えるだけでも嬉しさで吹っ飛びそうなのに、さらにはそんな事まで言ってもらえるなんて思っていなかった。語彙力を保てているだけでも褒めて欲しいくらいだ。
「そしてそして!」
「
「どちらかといえば解説王では……?」
ㅤ解説王もとい雑談王。2期生のおしゃべり担当だ。トークスキルが高すぎてゲーム配信よりも雑談配信の方が圧倒的に伸びてしまうレベルの圧倒的雑談力。私の中ではコミュ強との噂だったがここまでノリのいい人だったとは……!
「フッ、解説王なんて肩書きはまだ早い……わたしはただシンプルに思ってることが垂れ流しになっているだけなのだから」
「垂れ流しであのトーク力だったら誇っていいと思いますけど」
「おだてるのが上手いな新人!ㅤなんだ美味しいご飯に連れてって欲しいのか!ㅤ何がお望みだ言ってみろお姉さんが奢ってあげよう!」
「くるみ、お前激チョロじゃねぇか……」
ㅤ御三方とも『ぶいすた』が誇るレジェンドの皆様だ。もうその出で立ちからして乗り越えてきたトラブルの量が違うのがわかる。私も早くあれになりたい。
ㅤというのは置いといて、私は気になっていた疑問を投げかけてみる。
「あれ、となるとオーラス姉妹の2人はどこに?」
ㅤ今日の特番は私達『天下 la peace!』と既存の先輩方5名の計8名で行われる。その先輩方のうち3名がとら子先輩、朱夏先輩、来未先輩というわけで、そして残りの2人が私達より半年先にデビューした新鋭、『オーラス姉妹』の2人だ。括りとしてはその2人も私達同様4期生になるが、デビューしたのはあちらが先。れっきとした先輩だ。
「2人はまだだよ。あの2人は時差があるからね」
「……時差?」
ㅤえ、あの2人って海外暮らし……!?
「あ、普通に日本暮らしなんだけどね」
「そうなんですか。え、それで時差?」
ㅤどういうことだろうか。先輩方も何か困っている様子。
「いやぁ、あの子達がデビューしたときはイロモノ過ぎて反応に困ったね……」
「確かに。なんというか……宇宙人?ㅤ本当に異世界人と接してるみたいで、わたしはどうすればいいかわからなかった。とりあえずクレカを見せびらかした」
「なんで……?」
ㅤなんなんだ来未先輩は、そんなに後輩に飯奢りたいのか。ゴチになりますけど
ㅤまぁ、とりあえずミステリアスなタイプであることはわかった。まぁ、なんだ。とりあえずバナナでも買ってくるか。
「「お疲れ様でーす」」
ㅤ買ってくる暇はなかったらしい。聞き覚えのない声が2つ、息を揃えて入ってくる。となるとあのふたりが……。
「あれ、見慣れない人」
「はじめましてだねー」
「あ、こんにちは」
ㅤ意外と腰が低いというか、話しかけやすいな。もっと本当に人間かこいつ?ㅤみたいなのを想像していた。いやちゃんと人間のはずだけど。
「先日デビューした子洗井ナマリです。よろしくお願いします」
「もぉ、かしこまらなくたっていいよ?ㅤ同じ4期生だし」
「そうそう。私もあまり先輩になった実感ないもん」
ㅤあ、優しい人だこの人ら。
ㅤこの物腰柔らかさ、コミュ障の陰キャでも受け入れてくれるような包容力……なんて心地いいんだ。同期はもっと見習え。2人揃ってイカれた習性しやがって。
「じゃ、改めまして。『オーラス・メイラ』です」
「同じく、『オーラス・ユニア』です。私がユニ、こっちはメイって気軽に呼んでね」
「ど、どうも。ユニ先輩、メイ先輩」
「先輩、先輩かぁ……」
「とうとうわたし達も先輩になったんだね……」
「この間まで機材トラブルとか先輩方にお世話になってたはずなのに、もう頼られる側になるわけだ」
「ねー」
ㅤんー??????
ㅤなんだ?ㅤなんか普通にめちゃくちゃ人間だぞ。いや確かに外国人顔ではあるけど日本語は流暢だし、異世界人みたいな雰囲気はあまり感じない。むしろこの人達を見ていると自分の器の小ささを前に死にたくなってくる。
ㅤいやしかし、私は知っている。彼女達『オーラス姉妹』は、Vtuberでもまちまちにしかやらない世界観に沿ったロールプレイを日常的にやっていることを。雑談で異世界の話をしたり、ゲーム配信で度々「魔法が使いたい」などと言っていたり、その手のエピソードはかなり多い。
「となると感慨深いなぁ。デビューしたのって14月だっけ」
「そうそう。……って、こっちの暦!」
「あ、そうだった!」
「もうユニったらしっかりしてよ、後輩の前なんだし」
「えへへ……」
ㅤ………………………………14月?
ㅤ14月って、なんだ?
北上朱夏
・『Virtual stars』所属1期生
・ユニット名『さんふらわー!』所属
星波高校一年。いつも明るく前向きで、太陽のように皆を照らすクラスの中心。もっと色んな人と会いたくて配信活動を始めた。
野良乃とら子
・『Virtual stars』所属2期生
・ユニット名『トラ蕃印のメンチカツ』所属
星波高校一年。自称・トラに育てられたサバンナ出身。人の言葉を覚えるために配信活動を始めようとしたが、デビューする頃にはすでに流暢になってしまっていた。
未来来未
・『Virtual stars』所属2期生
星波高校三年。ミステリアスな雰囲気や言動から未来人説・宇宙人説がまことしやかに囁かれるが、実際はちょっと先の未来が見える現代の能力者。
オーラス・メイラ
・『Virtual stars』所属4期生
・ユニット名『オーラス姉妹』『さんふらわー!』所属
突如この世界に迷い込んできた異世界のエルフ。異世界ではヒーラーを務めていたようで、相棒のユニアとは双子。
オーラス・ユニア
・『Virtual stars』所属4期生
・ユニット名『オーラス姉妹』所属
突如この世界に迷い込んできた異世界のエルフ。異世界ではアタッカーを務めていたようで、相棒のメイラとは双子。