Bシャーク!〜俺の人生サメだらけ〜   作:佐藤特佐

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第2話 魔改造タクシー

 

 

「監督っ!あのクソCG…いや『怒りのデス・シャーク』のサメが…!」

 危うく監督の前で「クソCG映画」と言いそうになった。

 俺はなんとか撮影所に辿り着き、ドアを開け放った。ちゃんとサトー監督がいた。サメのぬいぐるみと喋りながら…。

 

「なぁ、君なんて名前なの?」

 

しゃーーー

 

「”ぬいぐるみ”シャークでいいか。」

 

 

 

 監督が勝手に動くぬいぐるみを相手していた。俺は呆然としてしまい、その場でしばらく固まっていた。監督、遂に頭おかしくなったか…。それとも俺が疲れてるのか。

 

 

 サトー監督が固まってる俺に気づいた。

「おぉ、穴原。来たか!今日の撮影は船長がサメにキスするシーンからだな〜」

 なんと呑気な男だろうか。

 

「監督!監督のサメが、デス・シャークが、外で暴れてますよ!映画が現実になっちょるんです!」

 いや、それ以前に。

「ってかそのぬいぐるみ何ですか⁉︎なんで勝手に動いてるんすか⁉︎⁉︎」

 

 監督の前に置かれたぬいぐるみのサメがチョロチョロ動く。もう何が何だかわからない。俺は夢でも見てるんだろうか。

 

 サトー監督は落ち着き払った様子で答えた。

「どうやらそうらしいな。このぬいぐるみシャークも僕の考えたヤツだ。なんか夢みたいだな〜。」

 

 やっぱりこの人は呑気すぎる。

 

「人が!食われてるんですよ!爆発してるんですよ!雑なCGじゃないんですよっ‼︎」

 俺は苛立ってきた。監督のテーブルを叩いて訴えかける。

「あなたの作品じゃないですか!なんとかしてくださいよ!」

 

「どうしろって言うんだい。」

 

 監督が椅子を回転させクルクル回りながら言う。

「昨日の夜気象庁が言ってただろ、宇宙から未知の電磁波が観測されたって。多分それのせいでこう…創作のサメがこの世界に現れた…みたいな?」

 

 みたいな?じゃねぇよ。

 そんなことってあるのか?『ウルトラマン』第15話の「恐怖の宇宙線」じゃあるまいし。あの可愛い怪獣が出てきちゃったのならまだ良いが、こっちは人喰いザメだ。しかもあのサメは宙を泳げる。我々に逃げ場所はない。

 

 

「ま、気楽に行こうや。」

 

 と監督。

 

「気楽にいこうしゃーー」

 

 ぬいぐるみシャークも賛同する。ってかコイツ話せるんだ。もう驚きより呆れの方が勝っちゃってコメントできない。

 

 

 まぁ、これで分かったことは、監督もぬいぐるみシャークも事態の重大さをまるでわかっていないってこと。両名とも楽観主義にしても度が過ぎている。話にならん。

 

 俺は頭を抱えた。映画の制作者ですらこの状況に対処できない。この世界はどうなってしまうのだろうかー。

 

 

 

ドンドンドン

 

 

 誰かが撮影所のドアをノックした。こんな時に誰だろうか。そもそも事態を知らない人かもしれない。なら一刻も早く教えてやらないと!

 

 俺はドアを開け放った。そして、訪問者と対峙した。

 

「はーい。だr……」

 

 CGのサメ。

 

 自分が青ザメていくのを感じた。……サメは多分アオザメじゃなくてホオジロザメをモデルにしてるけど。あ、血の気が引いて俺の頬も真っ白だったか?

 

 

 サメが突っ込んできて玄関が陥没する。ドアをぶっ飛ばし、廊下を所狭しと泳ぐサメ。俺は腰を抜かしながらも監督の元に逃げ帰った。

「監督!サメが訪問してきましたよどうしますか⁉︎」

 そう言い終わる前に、サメが部屋に顔を出した。そのままサメは監督を……無視して俺の方に飛びかかってきた!

 

「なんで俺〜⁉︎」

 

 

 撮影所の反対側から飛び出す!すると、前の道を運良くタクシーが走っているではないか。タクシーにとっては運が悪かった。

 俺はタクシーの前に飛び出して、半ば強制的に停車させる。

 

「ちょいとお客さん、危ないよ。」

 と運転席から顔を出す初老の運転手。

 

「サメに追われてるんだ!とにかく逃げてくれ!」

 

「お客さん朝から酔っ払いすぎですよ。」

 

「本当だぜ〜」

 いつの間にか乗り込んでいたサトー監督も肯定したので、タクシー運転手は不可思議そうな表情をした。そりゃ信じてもらえなくて当然だ。

 

 

 すると後ろで物音がした。3人が車内から様子を伺うと、映画会社の建物が崩れ落ちたではないか。そして粉塵の中から姿を見せたのはサメ。クソCGのサメだ!

 

「あれ〜、俺も酔っ払ってるのかなぁ?今朝は酒飲んでないはずなのに…」

 首を傾げる運転手。”今朝は”って言ったってことは、飲んでる日もあるって意味か⁉︎信用ならん、それでもタクシー運転手かよ⁉︎

 するとサメがこちらに迫ってきた。サメの口が開く。CGモデルの関係で口に中はツルツルだ!見えにくい部分までリアルに再現する予算がなかったのだ!

 

 

グシャ!

 

 

 サメに噛みつかれ、タクシーのトランクが潰れた。噛みちぎった破片を投げ捨てるサメ。

 

「あーーーーー!会社に怒られるぅーーー!」

 

 運転手の悲鳴とともに、タクシーは急発進!3人(とサメのぬいぐるみ)を載せたタクシーは全力でエンジンを蒸した。後ろからクソCGシャークが追ってくるが、その距離はどんどん開いていく。しかしそれと比例するように運転手の顔は青ざめていく。

 

「どうしようどうしよう…タクシー壊しちゃったよ……。怒られる……。」

 

「サメに噛まれました〜って伝えれば大丈夫ですよ多分。」

 とサトー監督。サメに噛まれてタクシー壊れるなんて普通ねぇよ。

 

「黙ってろ酔っ払い阿呆!」

 

 タクシー運転手に一喝され、しゅんとする監督。酒飲んでないのにね。なんか可哀想だ。

 

「どうしようどうしよう、もういっそこのまま海に……。」

 

 やばいやばい、運転手の思考が暴走を始めた!この人タクシーごと海に突っ込ませる気か⁉︎俺たちも巻き添えじゃないか!それじゃ犬死に無駄死に野垂れ死にだ!

 俺は咄嗟に口を挟んだ。

 

「いや、山に行きましょ!海に行ったらサメに喰われますよ!」

 

 車ごと海に無理心中なんてごめんだ。山に行ってくれればそんなことされずに済むだろう。

 

「ああああ山ですね、はい分かりましたよー。」

 

 タクシー運転手も少し落ち着きを取り戻したよう。だけど何百メートル危険運転をしでかしたことやら……あとで警察にお呼び出しされるだろうなぁ。ま、知ったこっちゃないけど。

 

 クソCGサメはと言うと、相変わらず後方50メートルくらいの距離にピッタリと付いてきていた。途中で横断歩道を渡ろうとしていた歩行者を一飲みにしていた。まったくしつこいサメだ。

 

 一方のサトー監督が俺に掴み掛かる。

 

「何で山が安全だなんて言うんだ?海外のサメ映画を見ろ、アイス・ジョーズは山ん中だし、シャークトパスも渓谷で……アブブブブ」

 

 ったく余計なことを言う監督だな。ちょっと黙ってもらうために、ぬいぐるみシャークを口の中に突っ込んでやった。サメ映画マニアならサメのぬいぐるみなんて喜んで食べるだろ。

 

「グッグブブブブ…」

「ギシャァァ……」

 

 監督とぬいぐるみシャークは揃って変な声をあげているけど気にしないようにしてください、と。

 

「ブファッ‼︎」

 

 監督がぬいぐるみシャークを吐き出した。布製のサメは宙を舞い、タクシーの運転席に付いていたボタンを直撃した。運転手が絶叫した。

 

「あーーー!緊急スイッチがーー!」

 

 

 ウィーン

 

 

 突如としてタクシーが変形を開始!タイヤにトゲトゲが生えてきて、車体後部からは巨大な筒…ジェットエンジンの噴射口が迫り出してくる。タクシーの行灯が引っ込み、代わりに多連装ロケットランチャーの砲塔が出現。砲塔は即座に後方に旋回する。クソCGシャークに照準を合わせたのだ!

 

 

 どうやってタイヤにトゲトゲを生やしたのか。タイヤの中にトゲが仕込んであったのか?

 どうやってジェットエンジンを装備していたのか。後部のトランクは今どうなっているのだろう。

 どうやってロケットランチャーを装着していたのか。どこに収納していたんだろう。

 

 そもそもこんな魔改造タクシーがあってたまるか!

 

 

 先ほどまでオドオドしていた運転手の顔つきが変わっていた。顔の彫りが深くなって強キャラ感を感じる。彼がサングラスをかけると、イケオジという言葉が似合うほどのカッコいいおっちゃんになった!

 

「揺れるぜ、掴まってな!」

 

 イケオジ運転手がハンドルのボタンを押すと、轟音が轟いた。後方に消えていく閃光。うわ、ロケット弾を発射したのか!ってかそのボタンって普通はラジオの音量とか変える部分じゃね…?

 

 細かいことを気にしている場合ではない。魔改造タクシーは後方から迫るCGシャークにロケット弾を撃ち込んだ。サメは高速でそれを回避、外れた弾はサメの後続車両に直撃!

 しかしイケオジは発射ボタンを連打する。砲塔から続け様にロケットが撃ち出され、炎の筋が空中を横切る。サメの周囲で爆発が連続するが、サメは気にも止めず突き進んでくる。

 

 炸裂の炎の中を突っ切ってくるサメ。『怒りのデス・シャーク』本編よりよっぽど迫力があるよ。でもやっぱりCGのサメの出来が悪すぎてちょっとダメか。

 

 

「クソッタレ、あと1発だ。」

 

 残弾があと1発しかないらしい。不安の目で運転手を見るが、彼はニタリと笑いながら発射ボタンを押した。

 

「ご飯の時間だぜベイビー。」

 

 

バシュッ‼︎‼︎‼︎

 

 

 最後の一1発がサメに突き刺さる。回避できなかったサメの口で炸裂し、クソCGの姿が爆発に包まれた。

 

「やったか⁉︎」

 

 魔改造タクシーは減速し、戦果を確認すべく窓から顔を乗り出して爆炎を眺める。

 俺たちは確信していた。ロケット弾を撃ち込まれて死なないサメなどいる訳がないと。

 

 しかし。

 

 

「シャーーーー」

 

 

 爆炎を振り払い、サメが姿を現した。しかも皮膚が爛れたような火傷のエフェクトが追加されている。より凶暴な見た目になっているじゃないか。

 俺が「やったか⁉︎」なんて言ったのが悪かったか。フラグだったわ〜。

 

「サメがロケット弾で死ぬ訳ないしゃ〜。」

 

 復活したぬいぐるみシャークが鼻高そうに言う。お前はどっちの味方してるんだ。

 

 どうする俺……。爆破しても倒せないサメなんておかしいぞ。あんなクソCGのサメの餌になって死ぬなんて絶対嫌だ!それだったらまだクソ映画の主人公やってた方がマシだなと思う。

 

「行くぞ。」

 

 イケオジ運転手が肩を叩いてくる。彼にはまだ秘策が残されていたのだ…!

 




第3話に続く…と思う。

どんなサメが好き?

  • 空から降ってくるサメ
  • でかいサメ
  • 頭がいっぱいあるサメ
  • オバケのサメ
  • 温泉から湧いてくるサメ
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