僕には、魔力というものがない。
だから、疎まれるのは仕方がない事なんだ。
歴史ある国、ロギストン。
この国には魔力を持つ者が多く、人々は日々の生活に魔法を使う事で、より豊かで快適な生活を送っている。
そんな国を守っているのが、遥か昔からこの土地を統治している一族。広大なロギストンの地を領地とし、普通の者よりも強大な魔力を持つ彼らは「ノーティレア家」と呼ばれている。
そんなノーティレア家に、一人の男の子が生まれた。
魔力の強い一族の元へと生まれた彼もまた、さぞかし強大な魔力を持っているだろうと誰もが期待を寄せていた。
しかし。彼はそんな期待には応える事は出来なかった。
魔力を持たない無能な子供として、両親からは失望の眼差しを向けられ、周囲からは見下される日々。
彼の名は、レオ・ノーティレア。12歳になった。
魔法が使えない無能者の烙印を押された彼は、両親や親族から見捨てられる。
屋敷でもいない者として扱われていたが、そんな彼を哀れんだ使用人達がこっそりと世話をしていた。彼らから可愛がって貰ったレオは、それなりに幸せな暮らしができていたのである。
しかし。そんな日々も終わりが近づいているのだった。
なぜなら、ノーティレア家に新しい命が生まれたから。
使用人の一人が、レオへと伝えたのだ。それまで彼は何も知らなかった。
「レオ様。……奥様が出産されました。貴方の弟君であらせられます。」
「僕に弟?」
「はい。」
「僕、弟に会えるの?」
新しい命の誕生に、レオは喜んだ。しかし使用人の口から告げられたのは残酷な言葉だった。
「レオ様。一刻も早くこの屋敷から、いえ、この国から出られた方がよろしいです!」
「え?どうして?せっかく弟ができたのに…」
「ご主人様と奥様は………貴方を消そうとしているのです。」
「僕を……消す?」
ノーティレア家を継ぐ新しい命。レオの弟はなんと、生まれた瞬間から強大な魔力の気を持っている、というのだ。この事には両親や親族一同も大変喜ぶ一方で、不必要なレオは消してしまった方が良い。という結論に至ったようだ。
「ずっとここにいれば、貴方は必ず殺されてしまうでしょう。」
「そんな……」
それを聞いたレオの頭の中は真っ白になってしまう。確かに自分は魔力を持たない。母様や父様から疎まれてしまうのも仕方がない。
………………でも…………
そう考えている暇ももらえず、使用人は大慌てでレオの腕を引っ張る。そしてお金と当分の食料を渡すと言った。
「レオ様、外に出たらまずは港に向かい船に乗って、シーレへと行くのです。」
「シーレ?」
シーレとは、このロギストンの隣国であり、大きな国だ。
「シーレに行けば、きっと貴方の本当の才能を開花させる事ができるでしょう。どうかご無事で!」
レオは使用人に今まで世話になった礼を告げると、そのまま言われた通り、港へと向かうのだった。
その心の中に、不安と絶望を抱えたまま。