クソッタレなAIが俺の腕時計をハッキングしやがったのは許せねぇが、今は目先のヤク中に向けて俺は接近することにした。
ヤク中の身なりは遠目からでも分かるぐらいの緑髪で100m近くからでも臭うほどの悪臭が漂ってくる。奴はピートのドラッグで腹が風船のように膨らみきっており吹き矢で割ればいい音がなりそうだ。
「おいトミー、さっさと近寄れノロマ!てめぇがコソコソ移動するせいで他の機械から計算資源を奪えねぇだろ!!」
「うるせぇな。オメェこそ俺の時計を簡単に乗っ取ったくせによぉ?」
相変わらず腕時計で黒い点を点滅させてご立腹なようだ。
わかったわかった手っ取り早く動いてやるよ。
「だが何か使える物はねぇかな・・」
俺はヤク中との距離をグイグイ近づけながら近くのコンクリート壁や狭路の死角をコチラが気づくギリギリのタイミングで隠れることでやり過ごしてきたが、埒が明かねぇ。
700mぐらい走っただろうか?俺がストーキングしていくと眼の前には電柱が中折れして廃屋に傾いていた。
「トミー、お前はこの電柱をよじ登って廃屋の屋根へ飛び移れ。このあたりの電力供給網は狂ってるらしい事がわかったからな」
「根拠は何だよ馬鹿AI?」
俺がお前を感電させて乗っ取るつもりなのかしらねぇが、そんな手には乗らねえぞ?
「ハハッ!オレを疑うのか?お前の近くの家の電力計器が回ってねぇことがわかったからだよ。文句あるなら直接見てこい」
早速近くの家に侵入して見てきたが計器は使われた痕跡がないことに俺は気づく。
そして倒れ傾いた電柱に手をそっと触れながら廃屋の屋根へ飛び降りた。
幸いかな、屋根から屋根へジャパニーズ・ニンジャに習って跳ねながら緑髪の臭いヤロウまで俺達は近づくことが出来たので今度こそAIの出番だ。
「おいAI?コイツから情報を乗っ取ったりどうやって出来るんだ?」
「簡単なことさ、コイツら自分たちの手持ちガジェットにAIを植え付けてねぇからな?近づいて計算資源をパンクさせてやるんだ。それでマーキングさせりゃいい」
AIは黒い点から赤い点の目でチャーミングに笑うが、コイツはピートに劣らず鬼畜な野郎だぜ。
屋根を飛び跳ねならが追いかけていくとナビにヤク中どもが集まっているのか分からねぇが、円を作るように密集していた。
時刻は午前1時を過ぎておりデカい緑色の満月が獰猛な笑みを浮かべている。
俺は思わず舌打ちをした。何故かって?満月の緑色の光で放射能が地球表面に降り注ぐからだ。
「ただでさえ汚れ仕事なのにこれ以上寿命削ってたまるかよ」
「トミー、奴らが何故集まっているのかわからないか?」
クソ真面目にAIは俺のお気持ちを知らず話を振ってくる。
「ヤク中共が集まってすることなんて決まってんだろ?ヤクの情報交換とトンチキ騒ぎだよ。」
「15人程度集まっていることがわかった。これだけ馬鹿の種類が集まれば学習データとして合格さ。」
俺はため息をついた。もう少しスマートに動けたら良いんだが、これじゃあAI様のために働くブルーワーカーじゃねぇか?
ヤク中が集まってドンチキ騒ぎしているところに更に近づき、その距離は10m程度まで縮んだ。
俺は屋根でこれ以上近づけなくなったので瓦礫の山に飛び降りる。
あの風船ヤク中の周囲には火があちこちで放火されていた。大半の風船共がドラッグで天国に上昇中らしく地面に白い泡を吹き白目で倒れている者も少なくない。
「地面が泡と嘔吐物で汚いコーンスープ状態だぜ」
「トミー、注意しろ。奴らの大半はラリってるが奥にいる細い男がシラフだ。」
「あぁ?どういうことだよ」
俺はナビに表示されてない細い男に気づく。黒服でタキシードなやつで黒いグラサンをしているカマキリ野郎に見えるそいつは、風船共に積荷を降ろさせていた。
「あのカマキリ男が何しているのか分からねぇが、積み荷の中身が気になるな。」
ひょっとしたら金目のモノなんじゃねぇのか?瓦礫の山から俺はじっと観察する。
「・・おい。誰だてめぇ!!」
後ろから鈍い金属音がした。
俺は驚いて後ろを振り向くが、そこにはカマキリ男に似た黒服がいた。
「てめぇこそ誰だ?この野郎!!」
見つかったからには仕方がない。俺は家から持ってきた包丁で黒服の腹へ刺突する。
黒服は痛みで刺された場所を押さえる。
ポトッ・・
黒い血が滴り服から滲み出ただけなら良かったが、この黒服は地面に倒れると同時に茶黒いトカレフ拳銃を地面に落としやがった。
「まずいぞトミー、カマキリヤロウが見当たらねえぞ!!この場を逃げろ!!」
「うるせぇぞAI!言われなくてもわかってるっての!!」
俺は落ちていた拳銃を懐に入れて瓦礫山を登り、屋根へ飛び移った。すると瓦礫山が急に爆発してガラスの破片やら鉄釘やらが空中に上昇して地面に向かって散乱しだす。
「後ろを振り返るなトミー!今は必死に逃げるんだ!!黒服の野郎は俺達に気づいてやがる」
「なあAI、来た道をこのまま戻って大丈夫か?お前がハックしまくった機械で何とか出来ねえか?」
汗が手足でヌルヌル発汗しやがる。ちくしょう、屋根から屋根に上手く飛び移れねぇ!!
空に浮かぶ緑色の満月がピートに見えてきてイライラするぜ。あのクソ豚野郎め!!
ドーン、ドーン、と言う破裂音と爆音がどんどん後ろで聞こえてくる。
「黒服もAIを用いてるようだぜ?しかも違法な軍用AI。あと100m走ってくれ!!電力供給されたバラック小屋周辺ならまともに戦える!!」
「ああ。だが俺達は拳銃と包丁しかねぇぞ!?カマキリに勝てんのかよ?」
ナビを案内しながら生成AIは腹黒そうに笑う。
「トミー、俺は生成AIだぞ?舐めるんじゃねぇ。もうすぐ着くから馬車馬のように走るんだ!!」
バラック小屋に向かって必死に走るにつれて周囲の家が一斉に明かりをつけ、監視カメラが一斉にコチラをむき出した。
「ここはオレのハックした物で溢れてる。住民共は各部屋で自動ロックかけてやったから好きなだけ暴れてやるぜ」
AIは道路にハックした車を並べてバリゲートを作り獰猛な肉食動物に似た雰囲気で俺に点滅する。
「ロボット3原則により俺達AIは役立たずどもの社会貢献を直接下せねぇ。だから最後はトミー、お前がやるんだ。」
俺はポケットに入れたトカレフ拳銃に弾丸が装填されていることを確認した。
「銃なんてガキのゲームでしか撃ったことがねぇぞ?まあ、やってやるよ!!」
時刻は午前4時をとっくに過ぎていた。