ババン!ババン!!と台を叩きつける音が左耳から聞こえてきやがった。
俺はジョシュアっていうアル中野郎だ。背丈は175センチで顔を赤く染めたまま50年代のローライダーでヤクを売りさばく売人ってとこだな?
ヤクの売人って言っても金を稼げる頭を持っていないからなぁ!!今夜もトラック運転手に職歴を偽装してシノギを削っているカタギ野郎ってわけよ。
チっ!!・・・・まだ台を叩きつける音が左耳から聞こえてきやがる!!
俺はスコッチウィスキーを片手に持って椅子から立ち上がった。
「おいクソガキ!!いつまで俺との遊びで負けたことを恨んでるんだ?そんなんだからいつまでもフィリピーナしか抱けねぇんだろ?」
「るさい、うるさい!!なあジョシュア?キミのせいでどれだけ損したと思っているんだい?僕はキミが時折ズルしているのは分かってるんだからな?」
「このクソガキ・・!?俺のインチキを見破っていやがったのか?」
俺は顔をジャパニーズ・ダルマに切り替えて台を蹴り上げた。クソガキことジョッカーは顔をしわくちゃにさせてやがる。
台の上にはトランプカードが乱雑に積み重なっており、トランプタワーを建設していたんだろうか?
几帳面なレックスらしいがこれでオダブツってわけよ!!
「ったく・・ねぇジョシュア?そろそろ僕から借りたお金を返してほしいんだけど?」
話を戻そうとジョッカーが主導権を握った。当然俺はイライラしたがコイツより俺は大人なんだ。話を聞いてやろうじゃないか
「悪いが1週間前に借りたお金は酒に消えちまったんだ。だから今はスッカラカンだぜ?」
俺はジーンズのポケットを両手でひっくり返して見せてやった
いつもなら"まぁ仕方がないけど次回はないと思ってよね!!"とか文句を言いつつ解散する流れなんだが今日のジョッカーは焦った表情でじっと俺を凝視してこう呟いた。
「……ジョシュア、冗談じゃ済まないんだ。あのお金はただの貸しじゃない。……"あの人たち"のお金だったんだよ。」
その瞬間、背筋に冷たいものが走った。"あの人たち"。普段なら鼻で笑うが、ジョッカーの目は冗談どころか命の危険すら感じさせるほど真剣だった。
「……待てよジョッカー、お前、それを先に言えよ!なんでそんな大事な話を今するんだ!」
俺の声が震えたのが自分でも分かった。ジョッカーは困ったような笑みを浮かべながら肩をすくめた。
「言わなかったら、キミ、金を返さないで逃げるつもりだっただろ?でもこればかりは無理だよ。"あの人たち"は、待つなんてことはしない。」
俺は頭を抱えた。酒代に消えた金。たかが借金だと思ってた金。それが"あの人たち"に繋がっているなんて、想像もしていなかった。
「……分かったよ。じゃあどうする?金をすぐに用意するってわけにもいかないだろうが!」
ジョッカーは一瞬考え込むと、小さな声で提案してきた。
「……一つだけ方法がある。」
「なんだよ?」
「一緒に逃げるんだ。ローライダーに乗って、あの街を出る。"あの人たち"の目の届かない場所まで。」
「逃げる?」俺はジョッカーの言葉を反芻した。「おいおい冗談だろ?俺がどこに逃げたって、"あの人たち"の手から逃げられるわけが――」
ジョッカーが俺の言葉を遮った。
「ジョシュア、逃げるんだ。選択肢はそれしかない。もし今夜中に動かなかったら……キミの命だって危ない。」
その言葉に、俺は深く息を吸い込んだ。すべてが一瞬で崩れる感覚。それでも、このままここにとどまれば確実に死が待っている。それなら、賭けてみるしかない。
「分かった。やろう。」
俺たちはローライダーに飛び乗った。エンジンが唸りを上げ、夜の街を切り裂くように駆け出した。後部ミラーに映る街の明かりが遠ざかる。ジョッカーは運転しながらポツリと呟いた。
「ジョシュア、もし逃げ切れたら……そのときは真面目に生きてみないか?僕ももうこんな生活は疲れたんだ。」
俺は答えず、スコッチのボトルを握り締めていた。窓の外には果てしない夜空が広がっていたが、その先に待つものは、まだ誰にも分からない。
ローライダーが速度を増していくたびに、俺たちの心は奇妙な興奮と恐怖で満たされていった。暗い道路の先には、ぽつりぽつりと遠くの街灯が見えるだけだ。車内にはジョッカーの小さな溜息だけが響き渡る。
だが、その静けさは突然の銃声で破られた。背後から激しい金属音が響き、弾丸が車のボディに当たる音が聞こえてきた。
「くそっ、来やがった!」ジョッカーが叫び、アクセルを踏み込んだ。エンジンがさらに唸りを上げ、車は闇の中を猛スピードで駆け抜ける。
後ろを見ると、黒いセダンが3台、ヘッドライトを輝かせながら追ってきていた。窓から突き出た銃口が火を吹き、次々に弾丸が飛んでくる。
「ジョシュア、手を貸せ!後部座席に銃がある、使え!」
俺は慌てて後ろを探り、古びたショットガンを手に取った。手が震える中、窓を開けて狙いを定める。
「こんなことになるなんて、聞いてねぇぞ!」俺は叫びながら引き金を引いた。轟音とともに、散弾が追ってくる車の一台に命中した。前輪がバーストし、車は激しくスピンしてガードレールに突っ込んだ。
「ナイスだ!」ジョッカーが叫ぶが、喜ぶ間もなく再び弾丸が車に雨のように降り注ぐ。
「奴ら、どんどん来るぞ!」俺は必死に弾を込め直しながら叫んだ。
ジョッカーは山道に差し掛かると、急カーブをドリフトで曲がり抜けた。追ってきた車の一台がバランスを崩し、崖下に消えていった。だが、残る一台は依然として執拗に追ってきていた。
「ジョシュア、しっかり掴まれ!」
ジョッカーは突然ハンドルを切り、車を反転させた。正面衝突を狙うかのように相手の車に突っ込んでいく。相手が驚いてハンドルを切った隙を突き、俺はショットガンを撃ち放った。フロントガラスが砕け、運転手が制御を失った車はそのまま崖下へと転落していった。
静寂が訪れた。荒い息をつきながら、俺たちは車を降りた。辺りは月明かりに照らされているだけで、人影はない。
「これで……終わったのか?」俺は疲れ切った声で呟いた。
ジョッカーは肩をすくめた。「いや、奴らはまだ終わらないさ。でも今は……少しだけ勝った。」
俺たちは再び車に乗り込み、目的地に向かって走り出した。その先に何が待つのか、まだ誰にも分からない。
だが一つだけ確かなことがある。
俺たちは生き延びた。それだけで十分だ。