パルデアで天才たちは悩んでいた 作:風見鶏さんの作品おすすめです
「と、言うわけで、まぁこの世には尋常ではない身体能力や、超能力など特殊な力を持つ人間がいくらかいて、その中にはパルデアの偉人もいたであろうということだ」
歴史を担当しているレホール先生がいった。青いジーンズにラフな服装、知的な眼鏡を携えている。教壇に立つ姿は独特な雰囲気があって、とても教師っぽく見える。
それを教室の後ろで眺めるシュンスケは、現在授業を見学中。片手にメモを持ちながら、参考になる点を書き出している。
なにしろ、彼は数日前まではただのトレーナーだったのだ。そう、全く生徒と関わるノウハウがない。
その事実に対してむむむと頭を悩ませていると、レホール先生と目が合った。
「ところで先生、カントーや色々な地方を旅していたと聞いたが、そのような人たちに知見はあるか」
と質問を受ける。
「カントーならサイキッカーの知り合いはいますね、有名な人だと、ヤマブキジムのナツメさんとか。イッシュではポケモンの声がわかる、なんて人に話しかけられたこともあります」
これは本当だ。ナツメさんは顔馴染みだし、世間が思っているより特殊な人は多い。
「ほう、それは興味深いな、今度是非聞かせてくれ。ではそろそろチャイムが鳴ると思うから本日の授業はここまで、次回も歴史の謎を紐解こう」
返答に納得したのだろうかはわからないが、授業は終わりを迎えた。先生が職員室を出ると、中間休憩が始まる。
次の授業の準備をするものがいれば、本を読んでいるものもいる。
けれどもシュンスケが目を引かれたのは、ネモとアオイたちのグループだった。
5人で何を話しているのだろうか、とても賑やかそうで楽しそうだ。
「シュンスケ先生、こんにちは!」
話がひと段落ついたのか、切り上げてこちらにきたのか、ネモがこちらに近づきあいさつをしてきた。一年生で生徒会長だとも最近聞いていたし、明るい反面、根は真面目なのだろうか。
「こんにちは、ちょっと邪魔しちゃったかな」
「いえ全然!ところでジムリーダーのナツメさんって、どんなバトルするんですか?」
快活な彼女の目的はそれだったか、とシュンスケは彼女の行動に納得する。チャンピオンらしくないと言えばそうかもしれないが、バトル盛りの若いトレーナーらしい質問だ。
「う〜んそうだな、まぁエキスパートなだけあって、エスパータイプの乗りこなしは素晴らしかったよ。アグレッシブで鋭い読みも通しながら、しっかりと守りも硬い」
簡潔にわかりやすく伝えられただろうか、どうも教師らしいいい説明ができているか疑わしい。
だが安心することに、ネモは自身の説明に感謝を述べて、「では!」とグループの中に戻っていった。
(ふぅ...)
軽い緊張に汗がうっすら浮きでる。
教師とはこんなにも難しいものなのか、なんて思ってしまうが、きっと色々考えすぎなのだろう。
ほっとひとつ息を吐きリラックスしていると、ひとつ違和感を覚えた。
"なぜアオイはネモに勝ちたいのだろう"
グループでの会話を見るに、仲はとても良さそうだ。友達、いや親友といっても受け入れられるほどの距離感の近さ。
バトルが好きなのだろうか。ならあの時の焦った様子はなんなのだろう、ああなるほど欲深い、熱狂的な勝ちへの執着は彼女から感じられなかった。
理性的に、バトルを学び、パルデアでも有数の実力者であるネモに勝利を収めようとしている。
不意に、過去の思い出が呼び起こされた。
眩しく、激しい争いの、ポケモントレーナーとしての記憶。誰もが強く勝ちを求めて足掻いた、大切でありながら忘れてしまいたいほど苦しい記憶。
全部をかなぐり捨てて、強さだけを目指した人間の末路は決して良いものばかりではない。
相棒であったポケモンの使用をやめ、幾つもの修練を積み重ね、それでも挫折してしまうようなトレーナー。
盲目な自信から、身にそぐわない場所へ旅立ち、大怪我を負い若くして引退したトレーナー。
光の数だけある影があると知って、僕はその道へと進んだ。
けれどそれは褒められるものだったのだろうか。
今、教師としてその道は、閉すべきものではないだろうか。
⭐︎⭐︎⭐︎
「宝探し?」
「はい、宝探し。先生知らないんですか」
場所はこの前と同じ空き教室、2度目のマンツーマンレッスンだ。軽い雑談中、もうすぐ行われるという"宝探し"の話題になった。
そういえば誰かが言ってなような気がする、宝探し。
「パルデアの外でやる長期的な課外授業で、自分だけの宝物を見つけるんです!」
そりゃずいぶんと今どきらしい授業だ、少なくとも僕は聞いたことがない。
「ずいぶんとふわっとした授業だね、なんか具体的な課題とかないの?」
「特にはいわれてないです。相棒のポケモンを見つけたり、みんなでキャンプをしたり、真面目に授業を受けたり、本当に自分だけの宝物を探す授業って校長先生が言ってました。あ、でもジムめぐりをする人が多いみたいです。」
「へぇ...」
驚いた、ほんとに自由なのか。マサラだとポケモンを持ったトレーナーの大体はジムへ向かうけれど、それをもっと短くした感じか。授業ってのはほぼ建前で旅みたいなもんだな。
「アオイさんはなんかやりたいことあるの」
会話の流れ上、それは当然の問いだった。バトルをよく学んでいるし、やはりジムめぐりだろうか。
「う〜ん、まだ特にないですね。とりあえず、ネモに勝ちたいです」
帰ってきたのは歯切れの悪く、そして突飛な回答。
「勝つったって、相手はチャンピオンだろう、君は勝てると思ってるのかい」
「わからないです、でも、勝たないといけない」
はっきりとした返事だった。
「じゃあまぁジムめぐりがいいと思うよ、全員各タイプのエキスパートで、手加減もバツグンに上手い。聞いたら指導もしてくれるだろうから、まずそこで地力をつけるとこからだ。」
「はーい」
あまりここのジムは調べていないが、リーグ公式が運営なら他と違わないだろう。
アオイは納得したのか、イスに座りながら手を上に結びながら、軽くノビをしている。
「はい、それじゃ天候が雨の時、ポケモンにはどんな影響が与えられる?」
「みずタイプの技が強くなって、ほのおタイプの技が弱まります」
「はい正解、じゃあそれによって強くなるのはみずタイプの他に何がいる?」
「ほのおタイプの技が苦手な、むしとか、はがねのタイプを持つポケモンです」
「いいね、じゃあ他の確認されている効果は」
「『かみなり』が必ず当たります!、あと『ぼうふう』もだったかな? 特性の『すいすい』で速くなるポケモンもいたと思います!」
アオイは質問に全く詰まることなく、シュンスケの目を見て答える、不安はつゆほども見せないにっこりとした表情は、自信の表れだろう。
「うん、完璧っぽいね、『かみなり』を使ったりするのはずいぶんポケモンが成長した後かもしれないけど、覚えておくに越したことはない。基礎は完璧だし、今度は実践形式で学びたいね。」
「はい!」
「グラウンドって夕方使えるかな...許可とか取れるか聞いてみるよ、それじゃそろそろ時間なので、気をつけて帰ってね」
「ありがとうございました!」
プリントや筆記用具を黒いバックに詰め、とてとてと教室を出ていく彼女を見送る。
あの熱心さから予想するに、家に帰っても座学でもしていそうだ。なんならポケモンでもゲットしてるんじゃないだろうか。
どこか過去の自分に似たものを感じ、少しながら親近感と、生徒に対する同情か、愛着のようなものが湧いた気がした。
会話文の間とかに描写を差し込む感じで、すこし文のボリュームを作れるよう成長したかもしれません、嬉しいですね。
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