パルデアで天才たちは悩んでいた 作:風見鶏さんの作品おすすめです
「カメックス、まだいけるな」
「ガメッ!」
「一気にきめるよ!ケンタロス!」
「ブァア!」
激戦だった。少なくともアオイがみたことのない、最高峰のバトル。
双方がポケモンのトレーナーとして第三の目となり、その迷いのない指示と、強固な信頼関係がポテンシャルを十全に引き出している。
自分よりはるかに弱い生物から繰り出される、己の本能とは違う指示に、ポケモンたちは寸分の戸惑いも見せず命令を遂行する。
それで今まで生き残ってきたからだ。
指示は絶対で、このトレーナーとなら敗れはしない。
自信を信じず、他人を信じる。まるで綱渡りのような闘い方は決して半端なトレーナーでは真似できないだろう。
気づけばクラスメイトだけではなく、噂を聞きつけた教師までもその周りを囲んでいた。
じっと静かに見守るものや、声援を送るもの、多種多様な様子を見せる彼らだが、その全員がこのバトルに熱中しているのに変わりはない。
「『ロケットずつき!』」
瞬時に手足を甲羅に収納したカメックスが、回転しながら凄まじい勢いでケンタロスに襲いかかる。
「おもいっきり打ち上げて!!」
ズドン!!
それをケンタロスは自慢のツノで受け止めた。勢いの止まった巨体は、力強く空へと打ち上げられる。
「『すてみタックル』!!」
「『ハイドロポンプ』!!」
空中での不自由な状態、ケンタロスの素早い突進が着地際にヒットすると思われた最中、カメックスは格納していた手足を出し、背後の大砲から『ハイドロポンプ』を炸裂させる。
「かわして!」
それに紙一重で躱しきったケンタロスは近づけない。強烈な水流を噴射することで空中で姿勢を整えながら、再びカメックスにとって有利な、中距離の間合いを取り戻したのだ。
「『ハイドロポンプ』を回避に使うなんて、すごい!」
(なんか普通に避けられたけどね...)
シュンスケはネモの言葉に、心の中で毒を吐く。
丁寧に立ち回りながらカメックスの得意な距離を『みずのはどう』などで維持しつつ、痺れを切らした相手が突っ込んでくる瞬間に、隠しておいた『ロケットずつき』で不意をつく。
それを反応され、ケンタロスのツノで打ち上げられたとしても、用意していた空中での『ハイドロポンプ』で残りを削りきる算段を平然と対応されたのだ。
相棒であるカメックスの、何度も繰り返した鉄壁の立ち回りだろうと、チャンピオンのポケモン相手にこれ以上中距離を維持しきれるなんてことは想像できない。
もうカメックスと自身に対応し始めているのだ。どうしても消しきれない技の後隙を突くか、自分たちの意識しきれない癖のようなものを的確に利用してくる。
考えすぎではない。それを平然とやってくるのがチャンピオン、自分よりも上のステージに立つトレーナーなのだ。
(このケンタロスには飛び道具はない。確実に近距離でカメックスの残りの体力を削りきってくる、ならここで......!)
「『すてみタックル!!』」
ネモが指示を飛ばす、大ぶりな、自身が傷つくことをかえりみない文字通り捨て身のタックル。
フェイントをかけながら縦横無尽に駆け回り、カメックスを打ち倒さんと接近する。
この一撃で沈める。
「『ハイドロカノン』!!」
「ガアァァ!!」
カメックスの奥の手、先ほどの『みずのはどう』も、『ハイドロポンプ』すら超えるスピードと威力で、2つの水流が放たれた。
フェイントを見切り、それはケンタロスを捉える。
大きな土煙が舞い、視界を塞ぐ。
決まった。と誰もが想像した、だが...
「『ワイルドボルト』!!」
ケンタロスのサブウェポンが炸裂した。
グラリとその巨体がぐらつき、カメックスが力なく倒れる。
効果は抜群、今のカメックスでは耐えられない。
歓声が湧き上がった。
フェイントを駆使することにより『ハイドロカノン』をできる限り避け、最後に被弾はしたものの、それを耐え切ったケンタロスの勝利だ。
ポケモンを素早く交代しながらのサイクル戦。ネモはいくらか手持ちの体力を削られながらも、まだ6体のポケモンを残している。
これでカメックスの戦闘不能を含めると6対4。
パルデア最強のチャンピオンと、かつて神童とも呼ばれたカントーの猛者。
強者同士のバトルだが、決して無視しきれない実力差が確実に影響していた。
「よくやったカメックス、あとは任せろ」
シュンスケは健闘をみせた相棒をボールに戻す、明確に不利な状況。だがその様子に焦りの様なものは見当たらない。
(ここまでは予定調和、ワタルさんとのバトルでこうなるのは経験済みだ...)
なぜなら彼の長年の経験は、チャンピオンという明確な格上に対して苦戦を強いられるのが当然だと理解していたからだ。
ネモがリーグでチャンピオンランクとなった時の手持ちはすでに調べている。今回もそれに似たパーティだろう,
あらかじめ対策することを、卑怯という者もいるかもしれない。
だが彼女ほどのトレーナーなら情報はそこら中に、リーグを制覇した際のパルデア新聞にすら大々的に出回っているのだ。
恐らく何人ものトレーナーが、必死に対策して彼女に挑んだだろう。だがそれでも決して敗れないのがシュンスケの知るチャンピオンという生物。
自分ほどのトレーナーが対策なしで挑むのは、もはや蛮勇だ。
(残り3体まで削って、
算段はもうついている、運もそれほど味方していない状況で、トレーナーとしの実力で劣る自分が勝利する唯一の方法。
「いけ!ガブリアス!」
シュンスケは3体目のポケモンを繰り出した。
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