パルデアで天才たちは悩んでいた   作:風見鶏さんの作品おすすめです

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VSネモ その2

 

 

 

勝負は終盤、少し前まで盛り上がりを見せていた場所は、一点変わって異様な雰囲気を見せていた。

 

 

「『シャドーボール』」

 

「『十万ボルト』!」

 

シュンスケのブラッキーが作り出し、勢いよく放たれた『シャドーボール』と、ネモのダイカイデンの『十万ボルト』が相殺する。

 

これはよくある技の相殺、異様な雰囲気を作り出したのは数分前、シュンスケが出したブラッキーへの指示だ。

 

『リフレクター』と『ひかりのかべ』

 

どんなレベルのトレーナーでも使われる、汎用的な技だ。

 

それぞれ相手の物理に分類される技と、特殊に分類される技の威力を、長い間軽減させる壁。

 

仲間に長時間有利な展開を作り上げる、そんな技。

 

技はおかしくない、おかしいのはタイミング。

 

3対2のシュンスケが追い詰められた中、5体目のブラッキーの体力がダイカイデンの猛攻で激しく削られる状況で、そのスキマを縫うように2つの技が繰り出されたのだ。

 

1匹でも倒しておきたい状況だ、数のアドバンテージというのはバトルでも特に重要視される。

 

「なんでさっき攻撃しなかったんだ?」

 

そんな生徒の疑問の声がシュンスケの耳に入った。

 

生徒は単純にミスの可能性を考える。

 

それはもっと初めに使っておくべき技だと。

 

だがアオイや一部の生徒、そしてバトルを観戦しているクラベルやレホールの考えていることは違う。

 

 

「なにが...何のポケモンだ?」

 

ひとりの生徒が呟いた。

 

ある、ひとつだけこの『ひかりのかべ』と『リフレクター』を有効に活用する方法が。

 

単純に、1匹のポケモンで勝ち続ければいいのだ。

 

何分もの間、他の数倍の密度で繰り出されるネモとポケモンの猛攻を耐え続け、そして倒し、生き残り続けれるとしたら、2つの壁は十分に機能する。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「『十万ボルト』」

 

「かわせ!!」

 

 

シュンスケの指示も虚しく、『十万ボルト』に被弾したブラッキーが戦闘不能となる。

 

くだらない展開のバトルだと思っているからか、この次の展開を今すぐに見たいのか、戦況の変化が起こったにも関わらず観客はシンと静まっていた。

 

 

ブラッキーをボールに戻し、ひとつ深呼吸。

 

6体目はまだ繰り出されない。

 

「楽しいね!ネモくん!」

 

 

久しぶりに聞こえる、先生としての、優しいシュンスケの声だ。

 

 

「ですね!」

 

 

ネモはその言葉に強い同意を示しながら、同時に情報の整理を始めた。

 

序盤で繰り出されたカメックスを入れていた、よく手入れされたモンスターボールは、しかし白く塗装が剥げており、彼のもつボールの中でも最も年季を感じさせている。

 

おそらくカントー出身である彼の相棒だろう、最初に受け取る3匹のポケモン。長年付き添い、最も絆の深いポケモン。

 

だがそのカメックスはもう打ち倒している。全てのポケモンの中でもトップクラスに強い種族と称される彼のガブリアスも、すでに戦闘不能だ。

 

けれども彼の目には絶望がない。リフレクターとひかりのかべを残してはいるが、その2つを展開した5匹目のポケモンであるブラッキーは今倒れたというのに。

 

状況は1対3、それもただの1対3 ではない、チャンピオンの3体。

 

消耗の差はあれど、彼女はポケモンをそれだけの数残している。それは猛者同士の戦いにおいても明確に浮かび出た、実力の差。 

 

ネモは考える、だが答えは出てこない。

 

果たして存在するのだろうか?

 

最も信頼する相棒でもなく、最強のドラゴンタイプでもない、この絶望的な状況をひっくり返すようなポケモンが。

 

 

「でもこれで、バトルは終わってしまうね......」

 

 

「最後の...ポケモンですよね?」

 

 

訝しむように彼女は言う。

 

 

「そうだ。君のわかってる通り、これが僕のラスト」

 

当然のようにそう言い放ち、さらに言葉を続ける。

 

「でも、負ける気はないよ」

 

淀みのない、自信に満ちた目だった。

 

「......!!」

 

堂々とした彼の声を聞き、ネモはより一層警戒を強める。

 

 

「じゃあ...いくよ!僕の...最後のポケモン!!」

 

 

 

彼がボールを投げた、ワンテンポ早い『しんそく』という指示とともに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドン

 

 

ジジッ

 

 

 

 

 

一瞬、彼の近くには何かがいた。

 

だがもうそこには居ない。

 

 

 

 

 

気づけばネモの横顔を通り越すようにタイカイデンは吹き飛んでいる。

 

 

ネモは経験したことのない事態に一瞬あっけに取られるが、すぐに切り替え、後ろにいるタイカイデンをゆっくりとボールに戻した。

 

 

空白が流れ、そのポケモンの移動により巻き起こった砂塵が、晴れる。

 

ジジジ

 

 

ポケモンの体内から迸る電流がビリビリと空間を焼いている。

 

 

そのポケモンは跳ねていた、己の力を誇示するように、全力を出すに足る、楽しい遊び相手を見つけたかのように。

 

 

グラウンドのすぐ側、バトルを眺めていたレホールは、嬉々とした声色で呟く。

 

 

 

 

「レジエレキ」

 

 

 

太古の時代、人々に封印されし伝説のポケモンが、そこにはいた。

 

 

 




誤字脱字、感想など下さると嬉しいです。短くてすいません。

たぶん残り3話くらいだと思います。
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