零から最強に成り上がった男、才能あふれる令嬢に転生する 作:暁刀魚
結局、ダスタウラスが再び出現することはなく。
今のところ、魔神ザガンが復活しかけていたけれど、ダスタウラスを倒したことでガス抜きができたという考えは合っていることになる。
とはいえ、それはあくまで推測でしかないので、今は様子を見るしかない。
なお、ダスタウラスとの戦闘痕はその後発見された。
激しい戦いの痕から、クルセディスタでも随分と話題になったけれど。
私がそれとなく、例の女魔術師ではないか? という意見を浸透させた。
ザガンを吹き飛ばしたのも、マナを光線に変えたものであり。
今回も、光の魔術で森を灼いた痕があったからだ。
とりあえず、ダスタウラスについての話題はこれで終わり。
被害も出さずに片付いたものだから、クルセディスタ以外で話題になることもなく。
ちょっとどうかと思う安易なネーミングも、世間に広まることはなかった。
そうこうしているうちに時間は流れ――気がつけば一年が経った。
私は八歳。
八歳になると、できるようになることがある。
加護の洗礼だ。
◯
「アリアお嬢様、見えてきましたよ!」
マナを鍛えるために意識を集中させていた私を、ミイが揺すって来た。
ミイと二人きりの時は、何もなければ常にマナを鍛えているから彼女の呼びかけは欠かせない。
今は、二人で馬車に揺られているところだ。
以前私と母様を守ろうとしてくれた御者が手綱を握っている。
「――ここが、聖都セフィラナ」
窓を開けて、ミイの横から外の景色を見る。
大きな城壁に囲まれた街が、私達の視界に広がっている。
「周りに馬車がいっぱいありますよ」
「人の出入りが多いということ。聖都が賑わっている証拠ね」
聖都セフィラナ。
セフィラナ騎士団の本部がある街だ。
その立地は、魔神と人類の戦場から最も遠い場所にあると言われている。
クルセディスタもかなり奥の安全な場所にあるが、セフィラナは更にその奥だ。
そして何より、街が大きい。
クルセディスタ領にも街は幾つかあるが、こんな立派な城壁はどの街にも存在していなかった。
「ここにいる馬車が、すべて洗礼のためにやってきているのでしょうか」
「殆どはそうでしょうね。洗礼を受けれる場所は限られているから」
洗礼。
加護を女神から授かるための儀式だ。
正確には、体内のマナを活性化させて独自の能力である加護を目覚めさせる儀式。
なので、女神が直接加護を授けているわけではないのだけど、マナというのは女神から発生したものなので授かっているというのも間違いではない。
何にしても、その儀式は千年以上前からずっと行われている。
ただ、ここしばらくは魔神の侵攻によって洗礼の儀式を行える場所が限られていた。
「近くに洗礼を行える場所があれば、そこを目指すのだろうけど。多くの人は聖都で洗礼を受けるために旅をする」
「そうなんですか?」
「ええ、理由は二つ、一つは信仰。これは言うまでもない」
そしてもう一つは――
「聖都への道が、騎士団の警備もあって一番安全だから。他の場所を目指すよりもね」
「な、なるほど……」
多少費用が嵩んだとしても、安全に変えられないからこそ多くの人が聖都を目指すのだ。
なにせ洗礼を受けて、騎士団の加護さえ授かれれば、その後の人生は保証される。
まぁ、大半は魔神に殺されて終わるのだけど。
親のいない孤児も多いこの時代、どうにかして聖都にたどり着いて騎士団の加護を授かろうとするものは多かった。
貴族の中には、そういう孤児を集めてまとめて聖都に送る者もいる。
「さて、ホテルまではまた瞑想するから、ついたら声をかけて。細かいことは任せる」
「解りました」
聖都を外から眺める機会は少ない。
せっかくなので、ミイに呼びかけてもらったけれど。
一目見れば満足してしまったので、私はマナを鍛えるための瞑想に戻るのだった。
◯
そして、再びミイに呼びかけられて、今度は馬車を降りる。
どうやらホテルについたようだ。
結果、降りた直後に向けられる無数の視線。
周囲には、行き交う人々が多くいた。
「随分と注目されているのね」
「それはそうですよ、だってお嬢様――」
そして周囲の視線は、すべて私に向けられているのだ。
理由は、単純。
「この一年で、更に美しくなられたんですから」
私が成長して、女性らしくなったからだ。
特に、ダスタウラスを倒してからは随分と見違えたと思う。
背が伸びて、より女性らしくなっていく。
なんとも不思議な気分だ。
「きっと、もっと美しくなりますよ」
「そう……あまり興味はないのだけど」
そういえば、ミイに前世が男だったことは語っていない。
女性とも言っていないし、私の奔放っぷりを見れば元は男だったと思うかも知れないが。
正直、どっちでもよかったのだ。
性別を明かしたところで、ミイの態度が変わるとも思えないのだから。