リビングに戻ると味噌汁のいい匂いが漂ってきた。普段朝はそんなに食べないオイラだけど、たちまち腹が減ってきた。
「ちょうど準備終わったよ」
雫がお椀をテーブルに並べてそう言った。タイミングぴったしやね。
「ありがとな」
オイラは自分の中では結構爽やかに位置する類いのスマイルを向けると、雫がフフッと笑った。
「ううん。私が、好き、で……やっていることだから」
なんか含みがあるような。オイラの気のせい?
「食べようか」
「ああ」
オイラと雫はテーブルを挟んで向かい合い、手を合わせる。食材と雫に感謝を込めて。
「「いただきます」」
献立は、ご飯、味噌汁、目玉焼き、ウインナー、トマトサラダ……。どれも美味しそうだ。なんてことのない見慣れた食卓の風景。それでもより輝いて見えるのはなーぜなーぜ?
「ズズズ」
オイラは味噌汁を飲む。これは……!
「どう? つかとも君」
「めちゃんこ美味い」
オイラの心と身体に染み渡ってら。
「良かった……」
雫は、ほっと安心したように胸を撫で下ろす。……ん? 胸?
ビー! ビー! MCアテンションプリーズ!
ちょ、今オイラ食べてる途中なんだけど!
「んっ……」
雫は髪をかき分け、ウインナーをその艶めかしい唇の方へと。ちょびっと前屈みになるもんだからた・に・まが強調され、目が離せなーい!
これって普通の朝ご飯のは、ず。
「あむっ」
雫がウインナーをパックンチョ。
「~~~~~~!」
オイラはたまらず慌ててリビングまでダッシュ!
間に合えティッシュ!
オイラがティッシュを引っつかんで何枚か抜き取り、鼻に当てた瞬間、まあ、来たよね。
「ぶっー!」
鼻血が。あ、危なかった……。オイラは間に合ったことにほっと胸を撫で下ろした。
「食器片しとくね」
雫が洗い物をテキパキとこなしている間にオイラは部屋に戻り、制服に着替える。
「オイラ、大丈夫かね……」
これは体質の問題で特に異常はないらしいけど。萌花にも雫にも迷惑になっていないだろうか。2人ともオイラと違ってよくできてるからなあ。ホントにオイラには勿体ない幼馴染みである。
「さて、と」
オイラは身支度を整えて、部屋を出る。
玄関先では雫が待っていた。
「待たせたな」
「ううん。行こっか」
雫は小さく首を振り、薄く微笑んだ。
家を出て、雫と並んで登校する。萌花は今日一足早く家を出ていた。ん? 何で知ってんのって? 朝イチにそういった旨のメッセージがオイラのスマホに届いていたからだ。
「ねえ、つかとも君」
雫がこちらの方を向いて、オイラに語り掛ける。
「ん?」
「昨日……萌花ちゃんと何かあった?」
「ぶっ」
オイラはちょっと鼻血を出す。
「あったんだね」
これで分かるんかい。
「別に……ただ部屋で勉強していただけだよ」
「年頃の男女が2人きりの部屋でおべんきょ~をしていたんだね」
いや含み持たせてる~。ときめきはあるな。
「……ずるい」
雫はどこかふてくされている様子だ。
「雫も一緒にしようか?」
「マンツーマン?」
「そ、それでもいいけど……」
なんだか雫の気迫に気圧されたオイラ。
「約束だよ」
雫はキランとアヤシく目を輝かせた。
MCもまた良き。雫ちゃん何か企んでます……? また次回です。