元ハンター協会中間管理職、ハンターとなる   作:錆びた氷

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助けられたことに安堵する第五話

 はい、除念が完了して3日、経過観察しながら母さんの見舞いに来ているクォーツです。

 幸い除念も順調に進み全て取り除きましたが……如何せん、どの能力であれ作ったばかり、つまり試運転の段階。失敗しないと分かっていれども不安なのは確かです。

 

 見舞いの品として手作りの卵焼きと白ご飯をよそった海苔弁当を持ってきましたが、無事起きていることを祈りましょう。

 病室のドアがガラリ、と小気味よい音を立てて開き。

 

 

 部屋のベッドで腰掛ける母さんと目が合いました。

 

 

「おはよー、これ、どれだけ私は寝てたの? 身体がガリガリなんだけど」

 

 笑みを浮かべて何気ない調子で母さんが話しかけて来ますが、本来なら起き上がるだけでも辛いはず。腕は相当力を込めているのか、震えています。

 ……私に気を使わせないように、でしょうね。

 

「無理しないでください、病み上がりなんですから」

 

 ゆっくりと母さんに近づき──そのままの勢いで顔を埋めます。

 ええ、こんなことをする前に現在の身体の状況を確認するべきで、病人に甘えるなんて以ての外だとは分かっています。

 

 けれど……今だけは、このままで許してください。

 頭を慰めるように撫でてくれる母さんの手付きが優しく感じました。

 

 

 

 

 ベッドの側に椅子を持ってきて座ると、その頃には母さんは持ってきた海苔弁を味わっていました。

 

「このお弁当、とっても美味しいわ! ほっぺがとろけちゃいそう!」

「大袈裟ですね。でも、ありがとうございます」

 

 ……病気の後って一応消化の良いもののほうが良かったでしょうか? そう考えてしまうほどの食べっぷりです。

 何にせよ、喜んでくれたのなら作った甲斐がありましたね。

 

「まだ暫く病院にいるでしょうし、偶に作ってきましょうか?」

「んー、これくらいなら一週間もすれば治るわよ」

「2ヶ月も寝てたのに、そんな早く回復するわけないじゃないですか」

 

 そんな私の物言いに、なんとも不思議そうな顔をする母さん。定期的にマッサージはしていましたが、通常一週間動かなければ1ヶ月のリハビリが必要と言われます。そんな中で2か月ならばもっとかかるはず……とそこまで考えて。

 

 ふと思い立ちオーラの流れを見て、納得しました。

 

「母さんも、念能力者だったんですね」

 

 母さんの周りには、希薄なオーラが淀みなく流れていました。確かに念能力者であれば「(てん)」や「(ぜつ)」を使い通常ではあり得ない速度の回復も可能でしょう。

 いつもは大人しい母さんが、座ったままベッドの上で、オーラも動きも滑らかで流れるような突きを放ち、告げます。

 

「こう見えても『心源流』の師範代なの、私」

「えぇ……」

 

 てことは、あの念修行に関する本は本来のルートであの本棚にあったわけで……ガバガバ心源流なんて思って、しかも秘伝の本勝手に見て、申し訳ないですね。

 

「あれ、なら私が念の修行してたのも知ってましたよね。何で念の扱いを教えてくれなかったんですか」

「本で調べて必死なクォーツが可愛かったから♡」

「こんな所で親バカ発揮しないでくださいよ、どれだけ苦労したと思ってんですか。で、ホントの理由は?」

「……掛けられてた念に、強制絶の効果があったのよねぇ。見えないまま指導するより、異常なレベルで物分りが良かったクォーツなら自分で考えて理解してもらったほうが良い、そう判断しただけよ」

 

 確かに作中でも念の使用感覚は各々で異なるといった旨の話があった気がしますね。

 そして、今までの微笑みを消した、こんなにも真面目な母さんの顔は初めて見ました。それだけ大切に考えてくれたことについ嬉しくなります。……最初の感想も本音なんでしょうが。

 

「それで……私に掛けられてた念を解除したってことは、除念の能力、なのよね?」

 

 流石に発の詳しいことろまでは聞いてこないのは、念の恐ろしさを誰よりも知っている師範代らしいと思います。なにせどんな能力であれ、対策を立てられれば完封も容易なのが念ですから。

 しかし除念の能力であれば、ハンター協会でさえ貴重さや扱いにくさから公表を渋るような逸材です。聞かないわけにはいかない、といったところでしょう。

 

「教えてもいいですが、代わりにお願いがあります」

 

 そう、別に教えてもいいんです。原作クラピカの言葉を借りれば「母さんから秘密が漏れたとしても、私は何一つ後悔しない」でしょうか。

 しかし、能力を明かすのってなかなかに勇気がいりますね。そしてお願いとは、母さんが念使いだと分かったならば一つしかないでしょう。

 

「私に、念を教えてください。幾ら本で理解はしているとはいえ、眼の前のホンモノに教えてもらうのとは天と地ほどの差がありますから。あとできるなら基礎修行と組手もですね」

「もちろんよ! むしろ……こんな危険な世界だもの、嫌と言っても覚えて貰うわ」

 

 ゆっくりと母さんは私の頭を撫で、こんな言い草でも母さんなりの愛情だと分かります。

 

「ありがとうございます、母さん。では、あの水見式を覚えていますか? あの後も挑戦したのですが、結果は変わりませんでしたので、恐らく私は特質系です。能力も決めて開発しましたが──」

 

 

 

 能力を全て洗いざらい話したら、本気で困惑された上に「馬鹿なの?」と言われた事は余談ですね。




現時点で書けている()は以上となります。
先は考えていて流れも書いてはいますが、遅筆ゆえのんびりお待ちください。
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