元ハンター協会中間管理職、ハンターとなる   作:錆びた氷

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宝石の街で散策する第六話

 1977年

 

 かれこれ4年、母のもとで修行を積んだクォーツです。

 身内と言えど流石は師範代、吸収すべきことは多くありました。

 

 心源流拳法の技自体は念を使用したゴリ押しで覚えられましたが、練習中ゆえに当然ながら付け焼き刃。

 使いこなすとまでは行かず、しかして未熟とするには知りすぎで……結論としては、まともに習うよりは早かった、程度でした。

 

 何分「武術」を習うのが初めての身です。教えがあるとしても習うための心構えがなってなかった、と言うべきでしょう。

 もちろん今でもすぐ理解できるとまでは豪語出来ませんが、次回はもう少し上手く覚えられるはずです。

 

 武とは(ことわり)から生まれる、とは誰の言葉でしたか。最初の意味があり、形があり、それを解き、根底を知ることで初めて「自らのモノとなる」。

 中身がないまま使っても強いですが、実態を知れば自ずと動きが見えてきます。

 

 まあそこまで知っても師範代レベルには届きませんでしたがね。やはり知り尽くした人間が極めた先は遠いものです。

 今でも念無しの純粋な武術対決であれば、母さんに軍配が上がるはずです。

 

 その母さんも何やら友人からの手紙が来てすぐに、旅の支度して出ていってしまいましたし。

 

 そして手持ち無沙汰な私は──

 

 

 

 右を見れば原石、左を見れば宝石。

 そんな玉石が特産の街を訪れています。

 

 特に意味もなくブラブラと見て回る、そんな旅に憧れていたんですよね。

 齢も今世では既に29ながら、必要だったとは言え念の修行ばかり。悲しくはないですが、淋しくはありましたし。

 

 ただの旅行ならばと格好もラフに。白のハイネックブラウスに緑がかった青のジャケット、ライトブラウンのワイドパンツ。髪形は変わらずミディアムポニーテールで纏めています。

 体付きは、自分で言うのもなんですが、良く言えば大人びた、皮肉を込めるならばグラマラスな……まあ、成長しました、はい。今でもちょっと慣れていません。

 

 さて、知識しか残っていない名ばかりの前世には水晶や宝石といった石に関する知識が多かったため、何気なしに寄ってみましたが──良いですね。

 

 身の回りにだって宝石は存在しています。例えばその辺りの砂を触れば石英は含まれていますし、河川に行けば運が良ければ天然の宝石が見られるでしょう。黒曜石として知られるオブシディアンもそうですね。

 しかしありふれていたとしても、正しく「宝石」として売られている様子に興奮しないわけではありません。

 

 どうやらこの街は採石が主の街のようで、街の外れには大きく聳え立つ山脈が確認できます。

 工房の多くは別の場所にあるようで加工済みの宝石などは多くはありませんが、店先に並ぶその数少ない煌めきでも心惹かれます。

 

 原石だってバカになりません。

 どのような宝石であれ、掘り出した原石があってこそ美しいカッティングが施されます。価値としてみれば加工後の宝石の方が高いのは間違いないですが、優劣を付けられるものでもありません。

 

 ……そういえば原石で思い出しましたが、ビスケは既にストーンハンターとして活動しているのでしょうか。

 大きな成功を残した一ツ星(シングル)ハンターの更に上である二ツ星(ダブル)ハンター、そしてHUNTER×HUNTERにおける主人公ゴンとキルアの師匠。

 

 まだゴンたち原作組と関わるかは未定ではありますが、同じ宝石好きとして一度は交友を深めてみたいものです。

 きっと面白い話が聞けることに間違いはないでしょう……良くも悪くも裏表のある方ですから細心の注意は払う必要はありそうですが。

 

 話が逸れましたね。

 その辺りの原石や加工済みの宝石を、作っていた念能力で調べながら散策していきます。

 宝か塵かを知らぬまま己の勘を信じてギャンブルに投じるのも悪くはないですが、やはり価値あるものを得たいのも紛れもない本音ですから。

 

 ふと目に留まった商品に足を止め、煙草をふかしている店主に声をかける。

 

「すみません。右棚の奥にある、あの20cmくらいの石は幾らでしょうか?」

「あの黒ずんだヤツのこと言ってんなら、1万2000ジェニーでどうだ」

「良いですね。随分と見づらい場所に仕舞われてるようですが」

「見栄えが悪ぃだろ、磨けば輝くんだろうが採算が合わん」

「なるほど……どうです、8000ジェニーまでまけてもらえませんか?」

「できても1万だ」

「分かりました、契約成立ですね」

 

 そこで私は現在、2つの念能力を使用しています。

 

 1つ目が【音波探知(ソナー)】。

 文字通りオーラを音波へと変化させ、そのまま放出。その反響によって周囲の地形や物体の中身を調べることができます。

 そして返ってきた音波をデータとして処理、さながら3Dスキャンと成分分析でしょうか。

 まあそもそもこの能力自体が【超音波反響(エコーロケーション)】、超音波で周囲の探索を行える能力の一部なのですが、それは置いておきましょう。

 

 

音波探知(ソナー)

 メモリ使用率:【超音波反響(エコーロケーション)】内訳

 必要適正値:放出30% 変化20%

 

 ・能力の説明

 物質を透過し反響する性質も持つ超音波を放ち、物のスキャンや大まかな位置を把握する。

 

 ・制約と誓約

 特になし。

 

 

 2つ目が【賞金稼ぎ(バウンティオーラ)】。

 効果は単純明快、オーラを見極めるオーラへと変化させます。私のオーラの中に入っていれば人だろうと物だろうと、オーラの性質を見極められます。より精密な「凝」とでもしておきましょうか。

 丹精込めて作られた作品には念が籠もります。今回であれば、カットされた宝石に念が微弱にでも籠っていれば当たり、としておきます。

 

 

賞金稼ぎ(バウンティオーラ)

 メモリ使用率:微

 必要適正値:変化10%

 

 ・能力の説明

 円の範囲にあるモノのオーラを見極めるオーラにへと変化させる。

 

 ・制約と誓約

 特になし。

 

 

 実は先ほど購入した石、表面は別の鉱石に覆われてますがアメジストが入ってるんですよね。上手くカットすれば3万は下らないでしょう。

 他にも美しい意匠の凝らされた宝石や、オーラの籠もった隠れた逸品を探していきます。

 

 

 見つけては交渉し購入、それを幾度か繰り返していると、視界の端に違和感。なにかが通り過ぎていった。

 

 そちらを向いてみると、何やら全力で走る青年が。その服はボロボロで汚れてもいます。

 容貌からしてこの街の鉱夫なのでしょうが……汚れはまだしも服の傷はあまりにも新しく、煤までついている。つまりあの慌てようからして、何らかの事故でも起こったのでしょうか。

 

 何もなければそれに越したことはありませんし、できることがなければ仕方ありません。けれど、何かできることがあるならば。

 手助けでもしましょうか。

 

 人の隙間を縫って青年を追いかけ、走っている青年に並ぶ。

 

「どうか、なされましたか?」

 

「なっ、なんですか、貴女は……!」

 

 いやまあ、全力で走ってる中並走してくる人がいたらびっくりしますよね……反省です。

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