瓦礫が崩れ落ちる音が浜辺に響く。
巨大な鉄骨が倒壊したビルから落下し、砂浜に突き刺さった。灰色の塵が舞い上がる中、三人の若者が素早く動いていた。
「アーサー!こっちの瓦礫をどかしてくれ!」
「分かっている!!」
アーサーが、重いコンクリート片を持ち上げる。その隙に環が負傷者の救護に向かう。
「お兄ちゃん!こっちにも怪我人が!」
若い女性が泣きそうな声で叫ぶ。森羅はすぐさま駆け寄り、膝をついて少女の足に絡まった鉄パイプを慎重に取り除いた。
「大丈夫。必ず助けるから」
彼のギザ歯が光る笑顔に、少女はかすかに安堵の表情を見せた。だがその時、砂浜に新たな影が落ちた。
赤い革コートの裾が風に翻る。心臓型のピアスが朝日に煌めく。ハート・ロイミュードが悠然と立っていた。
「……フリーズを倒したという力」
低く響く声に三人が振り向く。ハートの琥珀色の瞳が森羅を射抜く。
「俺にも見せてくれないか」
一瞬の沈黙。アーサーが警戒して身構えるが、森羅は被災者たちを庇うように前に出た。
「今は救助が最優先だ!戦うんだったら救助が終わってからだ!!」
予想外の回答にハートは眉を上げた。だがすぐに彼の口元に獰猛な笑みが浮かぶ。赤い瞳が輝きを増す。
「なるほどな。お前達が全力で戦うには、この災害は邪魔という事か」
そう言うとハートは意外な行動に出た。近くの大型瓦礫を片手で軽々と持ち上げ、安全な場所へと運んでいく。
「どういうつもりだ」
森羅の警戒は解けない。ハートは肩越しに笑った。
「俺はお前達のレスキューキングと戦いたい。故にそれを行う為にやっているだけだ。まぁ、人間の命はどうでも良いがな」
嘘偽りのない言葉に森羅は舌打ちする。だが確かにハートの助力は被害拡大を防いでいた。
「アーサー!環!救助を急げ!」
二人が頷き動き出す。ハートの手際よい瓦礫撤去のおかげで救助速度は格段に上がった。
「ありがとう……ございます」
被災者の老人が震える声で言う。ハートは鼻を鳴らすだけで返事はしなかった。
「こちらのグループは全員無事です!」
環の報告に森羅が応じる。
「よし!次はあそこの建物だ!」
指示を出す森羅の胸に埋め込まれた機械心臓が僅かに熱を持つ。あのハート・ロイミュードと同じ内燃機関だ。
(……俺も同じ機械なのに……何であいつはあんなふうになれるんだ)
内側から込み上げる感情を押し殺す。今は任務に集中するしかない。
「アーサー!あの梁を支えてくれ!」
「了解!」
二人がかりで巨大な木材を押し返す。ハートは少し離れた位置で見守っていたが、突然動いた。
「邪魔だ」
彼の拳が崩れかけた柱を打ち砕く。破片が四方に飛び散るが、誰も傷つかない絶妙なタイミングだった。
「感謝はいらん。俺はただ己の欲求に従っているだけだ」
その言葉には嘘がない。彼は単純に戦いたいのだ。強い相手と。
救助作業が一段落した時、砂浜には静寂が戻っていた。負傷者は皆搬送され、危険区域は封鎖された。
「・・・救助、感謝します」
それと共に森羅は、ハートに礼を述べる。
「礼はいらん。俺はただ戦いたいだけだ」
それと共にハートは胸元を開く。そこには人間の心臓と変わらない鼓動をしている機械心臓が動いていた。
「なぁ、お前も同じ物を持っているんだろう?」
「えっ」
ハートは不敵に笑う。
「お前の中に眠る力が、俺には分かる。だからこそ確かめたい。お前はどこまで戦えるのかをな」
森羅は拳を握りしめた。心臓が激しく脈打つ。これがハートの言う“同じ力”なのだろうか?
「アーサー、環」
仲間たちに目配せする。二人とも覚悟を決めた表情だ。
「行くぞ!」
森羅の掛け声と共に三人のベルトが唸りを上げる。
『ドラゴンアップ!』
それと共に、森羅もまた、レスキューキングへと変わる。
「くくっ、ブレンの奴が今、色々とやっているからな。だからな!」