衝撃の余韻が砂を震わせる。煙が晴れると、浜辺には二人の人影があった。
仮面ライダーレスキューキングとハート・ロイミュード――両者はほぼ同時に変身を解除した。
森羅の額から冷却水が滴り落ちる。ギザ歯の奥で荒い息遣いが聞こえる。機械心臓が過熱し、肋骨の隙間から蒸気が漏れていた。
対するハートは心臓型のピアスを耳元で揺らしながら仁王立ちしていた。赤い革コートの袖が焼け焦げ、胸部装甲には大きな亀裂が走っている。
「ふむ、奇妙な感覚だ」
ハートは、呟く。
「お前は人間である事は変わりない。いずれ、俺が倒す敵である事は変わりない。けれど、お前もまた俺達と同じ機械の心臓を持つ」
そうして、ハートは森羅に眼を向ける。
「・・・なんで、そんなに人間を憎むんだ」
「・・・お前や泊進ノ介などの個人に恨みなどない。だが、ある人間から受けた仕打ち。それがどうしても許せなかった」
ハートは拳を握りながら言う。
「蛮野」
「っ」
その名前は聞いた事がある。
ロイミュードを造り出した科学者である事を。
「奴は俺に八つ当たりするためだけにこの姿を与えられ、実験を名目に凄惨な拷問を受けた。俺はそれを許せなかった」
「・・・そんな事が」
「だからこそ、人間の中でも気に入っているお前達への警告だ」
浜辺の風が焦げた臭いを運ぶ。ハートは砂に足跡をつけながら歩み寄った。彼の指がピアスに触れる——赤い金属の円盤が朝日に冷たく光る。
「蛮野は死んでいない」
その言葉が波音を切り裂いた。森羅の機械心臓が跳ねる。
「奴は肉体を失ったがな」
ハートの口元が歪む。それは笑みというより苦渋の表情だった。
「人格プログラムとしてコンピュータの中で生き長らえている。奴にとって人体など入れ物に過ぎん」
鋭い爪が地面を削る。赤い革靴の踵が砂を弾く。
「奴は俺を作った。八つ当たりの玩具として」
ハートの声が低く震える。瞳の奥で憎悪の焔が揺らめく。
「クリムとは違う」
言葉を飲み込み、ハートは深く息を吐いた。内燃機関が軋む音が森羅の耳朶を打つ。
「クリムは、少なくとも人のために戦っていた。俺には理解できんが……あの精神だけは尊敬に値する」
遠くで波が砕ける。
「だが、蛮野のような野蛮な存在を許さない」
森羅の機械心臓が熱を帯びる。
「・・・これから先、ロイミュードの標的は、お前達だけではなく、蛮野を狙う。だが、これは確信している。奴を生かしておけば、俺達ロイミュードだけではなく、人間も奴の奴隷となる」
そうして、ハートは言い終えると共に。
「まぁ、敵の言う事を信じるかどうかはお前次第だがな」
「・・・少なくとも、戦う約束をして、ここまで正直に言ったあんたの言葉に嘘はない。それは確信して思えるよ」
それと共に森羅は、呟く。
「・・・ありがとう」
そう、森羅はそれだけ言い、立ち去る。
「・・・人間に感謝されるとはな、不思議な気持ちだ」