「悪かったな、ウチの若が迷惑をかけて」
その言葉と共に、相模屋に案内された団子屋に訪れた森羅達。
相模屋の背中越しに見える店内は、落ち着いた和風のインテリアで統一されており、どこか懐かしい雰囲気が漂っていた。木製の座席やテーブルは年季を感じさせつつも手入れが行き届いていて、柔らかな灯りが店内を優しく照らしていた。
「これは迷惑料だ、良かったら食ってくれ」
そうしながら、相模屋が注文してくれた団子。
それを見た森羅は。
「いえ、そんな、そこまで「頂こう」おい、アーサー!」
森羅はすぐに断ろうとした。しかし、その瞬間、彼の視線は店員が運んできた熱々の団子に吸い寄せられた。蒸し上がったばかりの白い団子は、湯気を立ち昇らせながらも美しく並べられていた。その香ばしい匂いが鼻腔をくすぐり、思わず食欲をそそられた。
だが、そんな森羅とは正反対にアーサーは遠慮無く食べる。
「お前なぁ」
それを見て、呆れる森羅。アーサーが手に取った串には三つの小さな団子が刺さっており、彼はそれを一つずつ口に運びながら満足そうに頷いていた。
「まぁ、出された物を食べないのは反対に失礼だし、良いんじゃない」
そんな呆れた森羅に対して、環の言葉が入る。環の冷静な意見には一理あった。彼女自身も団子を手に取り、その柔らかな感触を楽しみながら口へ運んだ。
「・・・まぁ確かに」
環の一言もあり、森羅も納得し、団子を食べる。彼は慎重に串を持ち上げ、まずは一口味わうことにした。蒸した団子は外側はしっとりとしており、内側はふわふわと柔らかかった。噛む度にその甘みが広がり、米の風味がしっかりと感じられた。
「えっうまっ」
森羅は、その団子の美味しさに思わず声を出す。彼の言葉には驚きと感動が混ざり合っており、それを見たアーサーと環も満足そうな笑みを浮かべた。
「そう言って貰えると嬉しいぜ、ここは俺達にとっても自慢の店だからな」
相模屋は満面の笑みを浮かべた。その笑顔はまるで陽光が差し込むような温かさで、店内に広がる和風のインテリアと相まって、一層心地よい雰囲気を醸し出していた。森羅はその笑顔を見て少し安心し、同時に胸の中に小さな疑問が浮かんだ。
「あのぉ、相模屋さん」
森羅は少し声を低くし、質問を投げかけた。店内の柔らかな光が彼の顔に陰影を作り出し、その表情には真剣な思いが込められていた。
「なんだ?」
相模屋は興味深げに森羅を見つめ返した。その目には深い理解と共感が宿っており、森羅の言葉を待っている。
「新門さんは、もしかして以前からあんな感じなんでしょうか? 仮面ライダーに変身する前から」
森羅は心の内にある疑問を口にした。彼の目は真っ直ぐに相模屋を見つめ、その答えを求めている。
「若はこの浅草を仕切っている者の息子でな。昔から浅草を愛していた。けれど、あの時、グローバル・フリーズが起きた時からより力を求めるようになった」
相模屋は少し遠い目をしながら語り始めた。
「っ」
グローバル・フリーズ。
その言葉を聞いた瞬間、森羅達は驚きと恐怖が入り混じった表情を見せた。それは彼らにとって忘れられない悪夢の名前であり、浅草全体に深い傷跡を残した出来事だった。
「昔から喧嘩自慢だった若だけど、あの時のどんよりが起きた時。浅草の住人を助けられなかった。若にとって、それが今でもトラウマなんだろう」
相模屋はその過去を語る言葉に苦痛と悲しみを混ぜ込んだ。その声には重苦しい空気が漂い、店内の暖かな雰囲気とは対照的な暗い感情が浮かび上がった。
「だから、若は浅草の脅威には必要以上に戦うんだ。そして、自分以外が戦うとその被害が出る。だから」
「俺達を邪魔だと言ったんだ」
その言葉を聞いた瞬間、森羅達は新門の行動の意味を理解した。それは単なる攻撃ではなく、自分たちを巻き込まないために取られた決断だった。その決断の裏には深い苦悩と責任感が潜んでいることを感じ取った。
「けど、乱暴過ぎませんか」
森羅は思わず口にした。彼の言葉には心配と不信感が入り混じっていた。しかし相模屋は静かに首を振った。
「まぁ、それも若ですから。だからこそ」
相模屋は真剣な表情になりながら続けた。
「若と同じように戦えるあんた達に頼む。若を助けてやってくれ」
その言葉と共に、相模屋は深く頭を下げた。彼の誠意と真摯な気持ちが込められたその姿勢には、森羅達も胸を打たれた。森羅達はその場で思わず立ち止まり、互いに視線を交わし合った。