その日、消防隊では少し雰囲気が違った。
それは、秋樽隊長の雰囲気が普段とは異なっていたからだ。
彼はいつも朗らかで親しみやすく、どんな困難な状況でも前向きな態度で部下たちを導いていた。
しかし、その日の彼は、まるで別人のような表情を浮かべていた。
「隊長、どうしたんだ?」
「あぁ、何かあったのか?」
その姿に驚いた隊員たち全員が心配そうに声をかける。
普段の秋樽は、面倒見が良く明るい人物であり、その人柄のおかげで全員が彼を慕っていた。
しかし、その顔はこれまでとは異なっていた。
彼の眉間に刻まれた皺や、鋭い眼光が普段の明るさとはかけ離れていた。
その変化に、隊員たちは戸惑いと不安を隠せなかった。
すると、副隊長である武久が秋樽に近づいて話しかけた。
「隊長、やはり気になるんですか、ジャッジが」
武久は普段と変わらない冷静な口調で話しかけるが、その声には微かな緊張が滲んでいた。秋樽の険しい表情の理由についても言及している。
その言葉に、秋樽はゆっくりと頷いた。彼の目には、深い憂いと決意が混じっていた。
「ジャッジ?」
これまで聞いたことのない名前に、森羅達は首を傾げる。
疑問に思った森羅達に茉希が近づく。
茉希の表情は真剣で、その名前には何か重要な意味があることを示唆していた。
「5年前に起きた事件で、復讐代行人が人々を襲っていた事件よ」
その言葉には重みがあり、過去のトラウマが蘇るかのようだった。
茉希の口調からも、その事件がどれほど深刻であったかが伝わってくる。
「その事件と隊長には一体」
森羅達の疑問が高まる。その名前が隊長と何らかの関係を持っていることに興味津々だった。
「……当時、隊長の部下の一人だった岡島冬馬さんが、そのジャッジだと言われたの」
茉希の言葉には衝撃が含まれていた。彼女の声は低く、慎重に言葉を選んでいた。その理由はすぐに明らかになる。
「えっ、それってつまり元部下の」
森羅達の声には驚きと戸惑いが混じっていた。隊長の元部下がジャッジという存在だと知り、彼らはさらに困惑した。
「うぅん、その人は、今は亡くなっているの、5年前、自殺したとされて」
茉希の表情は暗く、その目には悲しみが宿っていた。彼女の声は震えていた。その話には深い悲しみと無念が詰まっているようだった。
その話に森羅達は息を飲んだ。茉希の暗い表情は、この事件の複雑さと重さを象徴していた。
「その当時の事件の関係もあって、追太さんと知り合ったの。今も事件を追っているようだけど、なかなか手掛かりがなく、この事件は」
茉希の声には苦悩と無力感が含まれていた。彼女の言葉からは、事件の解決への強い意志とともに、その困難さが伝わってきた。
「そのジャッジが再び現れたという事は、本物が現れた可能性があるという事」
森羅達の声には緊張感が漂っていた。彼らはこの新たな情報に動揺し、今後の展開に不安を感じていた。
「だから、あんなにピリピリしているのか」
森羅達は秋樽の様子に納得した。彼の険しい表情と緊張感の理由が理解できた。
すると、森羅の元に電話が来た。
それに気づき、電話に出る。
「もしもし、進之介さん?」
その電話の相手は、進之介だった。
だが、その内容は。
「ジャッジですって?!」
今、まさしく話題に出たジャッジに関する情報だった。