夕闇が街を包み込み始める頃、事件は静かに終結を迎えた。
警察車両のサイレンが遠ざかる中、剛は黙って立ち尽くしていた。
令子の逮捕を見送った後も、彼の表情は硬いままだった。ロイミュードとの融合から解放されたとはいえ、彼の心は安堵とは程遠い場所にあった。
「剛……、どうやら、ロイミュードの影響もなくなったみたいだな」
進ノ介が声をかけるも、剛は視線を合わせようとしない。
「謝らないんだな」
アーサーの静かな声に、剛は僅かに肩を震わせた。
「おい、アーサー!ここでそれを「俺に謝る資格なんてない」っ」
ようやく口を開いた剛の声は、まるで深い井戸の底から響いてくるように低く沈んでいた。
「俺は、ロイミュードに踊らされた。そして……」
言葉が途切れ、剛の拳が強く握りしめられる。
「進兄さんに迷惑をかけた」
「剛」
進ノ介が歩み寄り、剛の肩に手を置こうとしたが、その手は空を切った。
剛は一歩後ろに下がり、三人から距離を取る。その目に映るのは深い罪悪感と自己嫌悪の色だった。
「俺の父親は……本当に最低な人間だった」
剛の声は掠れていた。夜風が彼の短い髪を揺らし、その隙間から見える額には脂汗が滲んでいる。
「今回で改めてわかった。父さんのやったことは……償いきれない」
チェイスが沈黙の中で一歩踏み出した。
「剛……お前の責任ではない。それは過去の出来事だ」
「分かってるさ」
剛は乾いた笑みを浮かべた。その笑みには自嘲の色が濃く滲んでいた。
「頭ではわかっていても……俺は親父の息子だ」
剛の瞳孔が細くなり、まるで闇に溶け込んでいくようだった。
「だからこそ、俺はロイミュードを……」
言葉は宙に浮いたまま、途切れた。
それと共に、そのままその場を去って行った。
「別に剛の仕業じゃないのに、なんであんなに責任を感じるんだ?」
アーサーは、剛の去った方向を見ながら言葉にした。
進ノ介は目を閉じた。
「蛮野天十郎の創造物である我々ロイミュードの存在意義は彼の理想の実現にあった。だが剛の父親は蛮野ではあり、責任を負うべきなのは蛮野だ」
進ノ介は沈黙を守ったまま、チェイスの言葉を噛み締めていた。
「理屈は理解しているし、俺も同意見だ。けれど」
「だが、人間は、それを分かっていても、飲み込めない。それが人間の良い所でもあり、悪い所でもある」
そう沈黙したチェイスの言葉に、彼らはそれ以上は言えなかった。
最悪な事態は確かに避ける事は出来た。
しかし、これが悲劇のカウントダウンの一歩だと、彼らはまだ知らない。