薄暗い路地裏で、環は手にした端末に視線を落としていた。画面上には数々の記録が並ぶ。彼女が追いかけているのは、人々の記憶を操る謎のロイミュード。
その影を掴むために、ひとつひとつの証言と記録を丁寧に照合していた。
「やっぱり……どこかおかしい」
環の指先がスクリーン上で忙しなく動く。記憶操作の痕跡は見つからないものの、違和感だけが彼女を悩ませていた。
その時だった。
背後に気配を感じた環は反射的に振り返った。視線の先には、沈んだ表情の剛が立っていた。
「えっと、剛さんだっけ?丁度良かった、少し情報を」
剛は答えず、ただ彼女をじっと見つめている。その瞳に宿る色は、まるで深い井戸の底のように暗い。
「お前も、あのロイミュードを仲間だと思うのか」
「えっ、ロイミュード?それって、チェイスの事?」
「・・・だとしたら、許せるのか」
剛の言葉に環は眉をひそめた。
「許すとか許さないとか、チェイスは今はちゃんとした仲間だろ?」
環の言葉は途中で遮られた。突然剛の身体が光に包まれたのだ。
「変身!」
その声と共に放たれる閃光。一瞬にして剛の姿は仮面ライダーマッハへと変貌した。
「剛さん!?」
マッハは無言のまま右腕を挙げ、その手に握られたゼンリンシューターが唸りを上げる。
「待って!何がどうなってるの?」
環の叫びも虚しく、マッハは躊躇なく引き金を引いた。弾丸のような打撃が空気を裂き、環に向かって放たれる。
「危ないっ!」
間一髪で身を翻し、弾幕を避けた環。彼女の長い髪が風に揺れる。
「なんで攻撃してくるの!?」
マッハは何も答えない。代わりに新たな打撃を連射してくる。環は素早く身をかわしながら、マッハとの距離を測った。
路地裏の壁に弾痕が刻まれていく。コンクリートが飛び散り、粉塵が舞う。環は素早い身のこなしで攻撃をかわすが、その表情には困惑と警戒が混ざっている。
「いきなり、何をするんだ!」
「ロイミュードの味方をするてめぇをぶっ潰す!」
「あぁ、もぅ!変身!」
閃光と共に環の姿が変わる。レスキューの姿となった彼女は、剛の攻撃を軽やかにかわす。
「何があったの!剛さん!」
環の問いかけに剛は答えない。ただその手に握るゼンリンシューターを構え直した。
「ロイミュードを許せるはずがない!」
剛の声は低く冷たい。
マッハの目を見つめる環の声は、静かだが揺るぎない。
「お前には関係ない!」
マッハのゼンリンシューターが唸りを上げる。
火花散る弾道を読み切り、環は紙一重で身をかわす。
マッハの動きに隙が無い。むしろ研ぎ澄まされている。
だが何かが違う。この戦い方に違和感を覚える環。
「剛さん、あなた、まさか」
(まさか……!)
環は直感した。
(記憶操作のロイミュード……!)