マッハの拳が唸る。
環は腰を落とし、寸前で回避。
巨大な凍結ガトリングガンが両腕で輝く。
「これで止まって!」
氷の弾丸が路地裏を凍てつかせる。
だがマッハは風のごとく回避。
スニーカーが地面を抉る音。
「遅い!」
環の背後からマッハの声。
振り返る隙もない。
左肩に衝撃。
装甲がわずかに砕ける。
「ぐっ……!」
(でも……これでいい)
環は意識を戦闘から少し逸らす。
レスキューのシステムが自動的に周囲の情報を収集している。
気温変化、音響パターン、電磁波の乱れ。
周囲の建物の状況や、マッハの行動パターン。
全てがデータとして蓄積されていく。
マッハの呼吸が荒くなる。
だが環の心は冷静。
全てのデータが頭脳を駆け巡る。
「計算完了」
氷の弾丸が周囲に飛び散る。
無秩序に見える散布。
だが全ては計算済み。
マッハは不審な顔。
「何をしてる?意味がない!」
突進してくるマッハ。
右足が地面に触れた瞬間—
「滑った?!」
先ほど放った弾丸が地面を凍らせていた。
マッハのバランスが崩れる。
即座に体勢を立て直そうとするマッハ。
だが次の踏み込みも滑る。
「どうして!」
(それが、このレスキューギアの能力)
環は心の中で呟く。
レスキューギアによって情報収集を行い、周囲の状況を把握する。
それと共に、放った氷の弾丸によって、敵対したロイミュードの動きを止め、要救助者の退路を作る。
それが、環のレスキューギアの能力だった。
マッハの動きが止まった一瞬。
環は両腕の凍結ガトリングガンを交差させる。
冷気が渦を巻き、螺旋状に集約される。
『ヒッサツ!フルスロットル!』
青白い光が路地裏を染め上げる。
一筋の螺旋が放たれる。
真空を貫く氷の槍。
その軌跡はマッハを捉えている。
「ぐっ」
剛は、それに気づいても避けられない。
凍結の螺旋が当たる直前。
環の放った凍結の螺旋がマッハに直撃する直前—
剛の前に現れた謎のロイミュード。
そのロイミュードが、環の放つ氷を防いだ。
「なっ」
疑問に思う彼女を余所に、剛をそのまま連れ去る謎のロイミュード。
そのロイミュードの胸にあるナンバーは、001。
ロイミュード001は言葉を発さぬまま、凍りついた剛の身体を抱え上げた。
その瞬間、環の視界に映る世界が歪んだ。
まるで時間を切り取ったかのように、001と剛の姿が周囲の空間と切り離され、一瞬にして消え去った。
「なっ……何が起きたの?!」
環の声は空虚な路地に響く。
先程まで繰り広げられていた戦いの痕跡だけが残され、剛の姿は既にない。
(さっきのロイミュード……001?)
環は立ち尽くし、凍りついた地面に反射する月光を見つめる。
「剛さんは……どこに?」
疑念が彼女の胸中で渦巻く。
(何かおかしい。あのロイミュード、今まで見たことのない能力を……)
環は静かに息を吸い込み、両手を握りしめた。
「まずは持ち帰って解析しないと」