環は、001の能力を見る事が出来た。
それによって、レスキュー3で収集したデータを用いてドライブピットへと持ち帰り、そこで解析を進める事にした。
ドライブピット内にて。
「これが001の能力?」
りんなが興味深そうに覗き込む。
モニターに映し出されたのは、先ほどの戦いで収集したデータだ。
「あのロイミュードの能力は氷の針を人間の耳の裏から脳に刺す事で人間の記憶を操作する事みたい」
環は静かに分析結果を報告する。
「さらに、その能力を使ってロイミュード関連の事件を隠蔽している。警察をはじめとした公的機関は誰もロイミュードの存在を認めないようだ」
りんなの目が鋭くなる。
「そんな大規模な記憶操作ができるなんて……」
モニター上のデータが複雑なグラフと数値の集合体となって表示されている。
「解析が難しいところもあるけれど、いくつかのパターンは見えてきたわ」
りんなの指が素早くキーボードを叩く。
「例えば……」
画面が切り替わり、複数の断片的な映像が並ぶ。
「これは時間の歪みを示しているわね。記憶が書き換えられる際の一瞬の空白」
環も身を乗り出して画面を注視する。
「確かに……この部分が気になる」
「えぇ、記憶操作の痕跡と思われる領域だわ」
解析が進むにつれて、徐々に001の能力の仕組みが明らかになる。
だが、同時に新たな疑問も生まれてくる。
「記憶操作だけではないかもしれない……」
環の言葉にりんなが振り向く。
「どういう意味?」
「あのロイミュードが単なる記憶操作だけで終わるとは思えない。もっと……根本的な部分を支配しようとしているのかも」
りんなは黙って考え込む。
「だとすれば……私たちの想像以上に危険な存在ね」
環は画面を見つめたまま静かに頷く。
「このままでは、いつか人類全体が記憶を操られてしまうかもしれない」
「なら、我々が先手を打つ必要がある」
りんなが力強く言った。
「レスキュー3の能力を最大限に活かし、001の能力を無効化するシステムを構築しましょう」
環は決意を固めたように頷く。
「時間との勝負になりそうだけど……必ずやり遂げる」
こうして二人の奮闘が始まった。
ドライブピットには依然として青白い光が満ちていた。
環と沢神りんなは疲労の色を隠せないものの、目の奥に強い意志の光を宿している。
「解析の進捗は?」
りんながコーヒーを手渡しながら尋ねる。
環は端末に映る複雑なデータを見つめながら答える。
「001の記憶操作の基本原理はほぼ把握できた。でも……問題はそこから先よ」
画面には幾重にも重なる数式とグラフが展開されている。
「記憶操作のパターンが予想以上に多様なの。単純な上書きだけでなく、断片的な情報の挿入や削除、さらには時間軸のずらしまで……」
りんなが眉を寄せる。
「つまり、一つの対策でカバーできる問題ではないということ?」
「ええ。それどころか、対策を講じようとすればするほど、相手も対応してくる可能性が高い」
環の声には苛立ちと焦りが混じっていた。
「まるで……知恵比べね」
静寂が流れる。