ブルマ「ステキな恋人が欲しい!」   作:フェレーデ

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01:「ステキな恋人が欲しい!」

 7つ揃えばどんな願いでも叶えることができるドラゴンボール。

 それを集めた世界一の大企業カプセルコーポレーションの令嬢であるブルマが願ったのは

 

「ステキな恋人が欲しい!」

 

 そんなありきたりなものだった。

 

「容易いことだ…」

 

 ただ、願いを叶えるのは神龍。

 言葉の通り、どんな願いでも叶えることのできる神の龍は、適当にステキな恋人を探してくるのではなく、運命的とでも言える恋人を探し出す。

 その範囲は地球上に留まらない。

 たとえば、地球から何光年も離れた遠い惑星(ほし)の、地球人ではなく宇宙人の、既に母星が滅んでしまった亡星の王子様であろうと対象内となる。

 

 カッ!

 神龍の双眸が紅く光る。

 目当ての人物を発見した神龍はその者を呼び出す。

 

「な、なに…!?」

 

 そうして、神龍に呼び出されたのはコドモだった。

 恰好も奇抜で、白と黄色のカラーリングの戦闘服に無地の青色のアンダースーツを着用しており、胸元にはエンブレムと背中には赤とオレンジのマントがついている。

 

「願いはかなえてやった。ではさらばだ!」

 

 恋人を望んだブルマ達も突然呼び出されたコドモも未だ事態を飲み込めず困惑していた。

 そんな一同をよそに、神龍は役目は終わりだとばかりに光となって消えていき、空が明るくなるとともにドラゴンボールは散り散りに飛んでいってしまう。

 シンッと静まり返る中、切り出したのはコドモの方だった。

 

「き、貴様ら…! いったいどこから現れやがった!」

 

 神龍により呼び出されたコドモはいまいち状況が掴めず怒りを見せる。

 その姿はまさに野生動物のようで、鋭い目つきでブルマ達を威嚇するとともに、警戒しながら構えを取り()()()を逆立てる。

 

「あっ! アイツ、オラと一緒でシッポがあるぞ!」

 

 それを見て声を上げたのは悟空だった。

 現れたコドモのシッポを指さして目を丸くしている。

 

「シッポだと…?」

 

 そして、その言葉にいち早く反応したのはコドモの方だった。

 悟空の方をまじまじと見つめると、悟空にもシッポがあるのを確認する。

 

「貴様、サイヤ人か」

 

 そして、悟空に向かって話しかけたのだ。

 先ほどまでの警戒が嘘のように、旧友に再会したときのような態度で。

 

「さいやじん…? オラ野菜より肉の方が好きだぞ」

「バカにしているのか!? シッポがあるのはサイヤ人である証だろう!」

「オラ、おめえの言ってる事よく分かんねえぞ」

 

 しかし、悟空はまともに取り合わない。

 いや、この場合は取り合えないと表現した方が正しいか。

 この場では誰も知らぬことだが、悟空は以前頭を打ったことでサイヤ人としての記憶を失っている。

 いわゆる記憶喪失というものだ。

 そのため、自分のことは地球人だと思っており、目の前のコドモが言っていることを理解できない。

 話の前提がまるっきり違うのだ。

 そのため、話せば話すほどすれ違いは加速していく。

 

「ちっ、話にならんな。だったら名前は?」

「名前? オラ孫悟空だ」

「そんごくう…? そんな変な名前なわけがなかろう!」

「変な名前じゃねえぞ! じっちゃんが付けてくれた名前だ!」

「この星での名前など聞いていない。生みの親につけてもらった本当の名前があるだろう?」

「知らねえよ! オラを育ててくれたのはじっちゃん一人だ! そんなに言うなら、おめえの名前は何なんだ?」

「ふん、貴様、このオレが誰かも分かっていないのか? よほど教育が行き届いてないらしいな。いいか、オレ様はサイヤ人の王子ベジータ様だ!」

「べじーた…? おめえだってヒトのこと言えない名前じゃないか。食い物みたいな名前してるし」

「バカにするなあぁぁああ!!」

「わっ、わぁぁああ! ゆ、揺らすなって…!」

 

 カオスである。

 一言で言ってカオスであった。

 話が噛み合わないことに苛立ちを爆発させたベジータは怒りのままに悟空に掴みかかると、グラグラと激しくその身体を揺らす。

 悟空とていきなり胸ぐらを掴まれて抵抗しなかったわけではない。

 逃げ出すことが出来なかったのだ。

 悟空がどれだけ足掻いてもビクともしないくらい強い力で握られていたから。

 

「ね、ねぇ。取り乱してるところちょっと悪いんだけど……」

 

 そこに、おずおずといった様子でブルマは話しかける。

 ベジータは不機嫌な様子を隠そうともせずブルマを睨みつける。

 

「ア、アンタを呼び出したのあたしなんだけど…」

「お前が…?」

 

 ブルマの言葉を聞いてベジータも怪訝な表情を浮かべる。

 呼び出した、確かにこのオンナはそう言った。

 どうやったかは分からないが、何らかの方法でこのベジータ様をこの場に呼びつけたのは間違いない。

 

 目の前の同族よりはよっぽど話になりそうだ。

 ベジータはぐらぐらと揺らされて目を回す悟空をポイと放り投げると、ブルマの方へと向き直る。

 

「では、どういうわけか説明してもらおうか」

 

 そうして、ベジータはブルマから事情を聴くのだった。

 

 

 

 

 

 ブルマから聞いた話は到底信じられるものではなかった。

 ドラゴンボール──7つ揃えばどんな願いでも叶えることができる不思議な球。

 そんな迷信めいたものが存在していると聞いたときは、バカなことを言うなとこの惑星(ほし)ごと破壊してやりたい衝動に襲われたが、その願い玉を使って自分を呼び寄せたというのだから満更ウソではないのだろう。

 人間を転移させる方法なんて聞いたことがない。

 フリーザ軍でもワープ技術の研究はされていたが、その進捗は良好とは言えずまだ実用化までには至っていなかったはずだ。

 一部の異星人が似たような術を使うことができると聞いたことはあるが、コイツらがソレを使えるとはとても思えなかった。

 スカウターがなくても分かるくらいにコイツらが弱いからだ。

 

 となると、ブルマの話にウソはないのだろう。

 本当にドラゴンボールというものがあって、それを使って願いを叶えた。

 ステキな恋人なんていうふざけた願いで呼び出されたのは気に入らんが、なにも本当に付き合ってやる義理もない。

 むしろ、ドラゴンボールの存在を知れたのはラッキーだと言える。

 あのオンナはどんな願いでも叶うといった。

 そう、どんな願いでも。

 

(そのドラゴンボールとやらを使えば永遠の命を手に入れることもできるというわけだ。くっくっく、このベジータ様にもつきが回ってきたぜ!)

 

 フリーザ。

 それは、ベジータが現時点では敵わないと認めている存在。

 宇宙の帝王を自称するヤツは、その名に恥じない力を有しており、プライドの高いベジータも言いなりになるしかなかった。

 だが、永遠の命を手に入れれば話は変わる。

 死に怯えることなく戦いを挑み続けることができるのだ。

 ヤツとて不死身ではない。永遠の命さえ手に入れられれば、いつかは倒すチャンスが訪れるはずだ。

 

「ベ、ベジータ君、だっけ? アンタも私の家に来なさいよ。呼びつけちゃったのは私だし、責任くらいとるわ。……まさか宇宙人だとは思わなかったけど」

 

 こうしてベジータはブルマの家に匿われることになった。

 願いを叶えたブルマ本人もまさか宇宙人が呼び出されるとは露とも思っていなかったようで、少し落胆しつつもベジータの面倒を見ると申し出てくれた。

 

 これもベジータにとっては渡りに船だった。

 話を聞く限り、ドラゴンボールとやらを探し出すレーダーを作ったのはこのブルマだ。

 ここで関係を断ち切るわけにはいかない。

 永遠の命を得るためにも、生かしておくのは必須だ。

 

「ベジータ君も乗りなさいよ。西の都まで送っていくから」

「そんなものはいらん」

 

 ジェット機に乗れというブルマにベジータはそんなものはいらんと一蹴し、ふわりと空を飛んで見せる。

 その場にいた一同はぷかぷかと宙に浮くベジータを見て目を丸くする。

 

「呆れたわ…。宇宙人って空も飛べるのね」

「妖術だ! おめえ、妖術使いだな!」

「そんなくだらん術ではない。貴様もサイヤ人なら飛んで見せろ」

「ぐぐぐっ……!! ダ、ダメだ! かめはめ波みてえに上手くいかねえぞ」

「ふんっ」

 

 これだから下級戦士は…。

 空も飛べんとはサイヤ人の恥さらしもいいところだ。

 こんなにレベルの低い惑星に送られているのだから当然と言ったところか。

 ベジータは心の中で嘲笑しながらさらに高度をあげていく。

 

「筋斗雲よ~い!」

「孫くんのそれも便利なもんよね」

 

 早々に空を飛ぶことを諦めた悟空は筋斗雲を呼びそれに飛び乗る。

 そんな悟空を尻目にブルマはジェット機のエンジンをかけ、離陸の準備を始める。

 その後ろにはヤムチャやプーアル、ウーロンも乗っていた。

 

「おいオンナ、早くしろ」

「ちょっと待ちなさいよ! 私はアンタみたいに空を飛ぶことはできないの!」

「ふん、軟弱な種族だ」

 

 ベジータの鼻につく態度にブルマは青筋を浮かべつつ、ジェット機を操縦して西の都の方角へと舵を切る。

 ベジータは悠々と空を飛んでジェット機の横に並び立ち、何を考えているのか分からないスンとした顔でジェット機と並走する。

 そんなベジータに悟空は筋斗雲で近づいていくと

 

「ベジータ! オラ、これから亀仙人のじっちゃんのところでいっぱい修行して、絶対におめえより強くなってやるからな!」

 

 そう元気いっぱいに宣言するのだった。

 そんな悟空をベジータはチラリと一瞥すると

 

「ふんっ、精々頑張ることだ」

 

 と、珍しくも激励の言葉をかけるのだった。

 とは言っても、ベジータは正直悟空が強くなることに期待はしていない。

 こんな戦闘力の低い星に送り込まれるような最下級戦士だ。強くなったとしてもたかが知れている。

 だが、強くなるという向上心を持っているのはサイヤ人らしい。

 好感が持てるとすら言ってもいい。

 本当の名前を忘れてしまったとしても、サイヤ人としての本能までは失っていないことに、サイヤ人の血を感じニヤリと笑うのだった。




 というわけで、ステキな恋人が召喚される話でした。
 ピラフの城はトラップに引っかからずに攻略したということで。
 そのため、ブルマ達は大猿の存在を知りませんし、悟空もシッポを失っていません。

 ベジータはまだ背が小さいです。
 具体的には、5歳も年下の悟空と同じくらいの背丈です。

【挿絵表示】

 悟空(12歳)
 ベジータ(17歳)(成長期遅いタイプ)
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