「──ブルマは、ベジータ王子のこと好きなの?」
一切のからかいのない単純な疑問。
普段なら顔を赤くしてあたふたするような質問だが、不思議とブルマは湧き上がってこなかった。
ベジータのことをどう思っているか。
今まで考えることのなかったことについて、ブルマは改めて考えることにする。
始まりはステキな恋人の候補だった。
だけど、他の星から来た宇宙人だってわかって一度は諦めた。
だけど、地球を出る気がないという言葉を聞いて、少しだけほっとした。
でもだからと言って恋人の関係になってくれるようなわけでもなくて、友達でも家族でもないのに、一緒に暮らしている内になんとなく放っておけなくなった。
孫くんとはまた違う関係性。
近くて遠い、そんな不思議な距離感。
──ベジータのことが好きなのか。
それに対するブルマの回答は
「……分からない」
それは、非常にブルマらしくない回答だった。
普段ならば物事をハッキリ言うブルマが、本当に珍しく曖昧に回答を濁したのだ。
「本当に分からない?」
「……」
「私は、ブルマとベジータ王子はお似合いだと思うけど」
「えっ…?」
「占いババの宮殿でのやり取りを見た時から思ってたよ。だって、王子相手にあれだけ気さくに話しかけられるのってブルマだけだし」
気さくに話しかけるって…。
私は別にアイツのご機嫌を取ろうと話しているわけじゃない。
いつも言いたいと思ったことをハッキリ言っているだけだ。
ただ、だとしたら今の自分はらしくないだろう。
胸にあるもやもやを消化せずうじうじくよくよしているのは。
上手く言葉にはできなくとも、正直に思っていることを言葉にしてみる。
「……正直、ベジータが好きかどうかは本当に分からないわ」
これは本当。
「ベジータも、私のことを好きじゃないというか、そういう対象として見てないでしょうね」
これも本当。
「でも、アイツのことを好きかどうかは分からないけど……アイツが私のこと眼中にありませんって態度してるのはちょっとムカつくわ」
そして、この気持ちは本当。
ブルマには愛だの恋だのというのは分からない。
憧れはあるし、ロマンチックで素晴らしいと思うが理解できていない。
だが、ムカつくとかイラつくとか、そういう感情だったらブルマでも理解できる。
私は何故こんなにベジータにムカついているの?
アイツが何しようが関係ないじゃない。
そう思うのに、ついついアイツを目で追っちゃうし、意識してなくとも考えてしまう。
そんななのにアイツは私のことなんか見てなくて、澄ました顔していっつも私の心をこんなにかき乱して…。
ああもうイヤになっちゃう!
どうして私ばっかりこんなに悩まなきゃならないのよ!
それもこれもアイツが私のことなんて見ずに強くなることばっかり考えているから──
「──ぁ」
それは、紛れもない本音だった。
自問自答を繰り返したことで遂に答えに辿り着いたのだ。
つまり、私は──
(──嫉妬してた…?)
その感情はストンと心に収まった。
もやもやしていた気持ちに名前が付けられてスッキリした気分だ。
私は嫉妬していたのだ。
目の前にいるのは私なのに、私のことなんて眼中にありませんって態度でフリーザってやつのことばっかり考えてるベジータにも、ベジータの心の多くを占めるフリーザって奴にも、嫉妬していた。
私はもっと自分のことを見てほしかったのだ。
ベジータに、フリーザのことなんかより私のことを考えて欲しいと思っていた。
ただ、それが理解できなくて、もやもやした名前のない感情が胸の中に渦巻いて、ハッキリものをいうことができなくなっていた。
「ギネさん、私決めたわ」
ブルマの瞳には強い決意が漲っていた。
打倒フリーザを掲げるベジータ王子にも引けを取らない決意だ。
ギネは遂に答えを出すことができたのかと、ちょっとウキウキしながらブルマの次の言葉を待ち
「私はベジータのやることを全力で応援することにするわ! 宇宙の帝王だか何だか知らないけど、そんなのが目じゃないくらいベジータを強くしてぶっ倒してやるんだから!」
(えぇーー!)
そして、その言葉に心の中で絶叫を上げた。
声に出さなかったのは奇跡だった。
顔は引きつっているかもしれないが、当のブルマは気にした様子もなくフンスと鼻息荒くしているので問題ないだろう。
(どうしてこんなことに…)
ブルマは絶対引き留めると思ってた。
ベジータ王子への恋心を自覚して、死んでほしくないからと強引にでも引き留めると思っていた。
しかし、予想は外れた。
ブルマに気持ちを理解させるために問いかけた言葉は目論見通りブルマの迷いを打ち払ったが、迷いのなくなった強い気持ちは大きく舵を切ってベジータ王子と同じ方向を向いてしまった。
ベジータ王子を止めるならブルマしかいない。
そう思い行動したが、それらはすべてブルマを焚きつける結果になってしまった。
(あの2人、駆け落ちしないといいけど──)
──私たちみたいに
◆
そんなことがあってから数日後、ベジータ王子が私のもとを訪ねてきた。
用件を聞いてみると、ドラゴンボールで願いを叶えたことで不死身になり、自傷では死に至らないことは確認したが、他人の攻撃ではどうなるかを確認したいとのことだ。
今現在、地球上で最も高い戦闘力を持ってるのはベジータ王子だが、その次はたぶん私だ。
ベジータ王子もそれを分かっていて頼みに来たのだと思う。
「それじゃあ行くよ」
ベジータ王子の腹に手の平を添えて、全力のエネルギー波を放つ。
わたしの戦闘力では万一にもベジータ王子に傷をつけることはできないが、脱力している状態ならその限りではない。
その証拠に、ベジータ王子の腹には風穴が空き、鮮血がぽたぽたと滴り落ちた。
だが、次の瞬間にはその風穴はみるみるうちに塞がり……そして、数秒後には痣も残すことなくすっかり完治してしまった。
その様を見てベジータ王子はニヤリと笑みを浮かべる。
「これでこのベジータ様を殺せる奴はいなくなったというわけだ」
ベジータ王子は自身に満ち溢れていた。
何物にも負けないという絶対的な自信に。
右の拳をぎゅっと握り、カラリと晴れた晴天の空──宇宙を、強い決意のこもったギラギラとした瞳で見上げていた。
「ねぇ王子、本当にフリーザを倒しに行くの?」
「当然だ。あの野郎にはサイヤ人を好き勝手
王子の中に地球で大人しくしておくという選択肢はないのだろう。
フリーザへの執着が半端ではない。他のものがすべて目に入らないほどに。
「くっくっく…。今に見ていろフリーザ! オレはもっともっと強くなる! そして、いつの日かキサマを宇宙の塵に変えてやるぜ!」
これは、後からブルマを通して聞いた話だが、ベジータ王子はしつこいくらいに神龍に条件を確認して不死身の身体を得たらしい。
願いを叶えた後も成長をすることはできるか。
強くなり続けることはできるのか。
本当に何をしても死ぬことはないのか。
受けた傷は残るのか。
その結果、痛みは感じるものの傷は瞬く間に治り、願いを叶える前と何ら変わらず強くなり続けることができるという不死身の肉体を手に入れた。
オマケに、不死身になった影響からなのか無限にエネルギーが湧いて出てきて、疲れることもないのだという。
つくづくドラゴンボールというのは凄いと思う。
死人を生き返らせたり、文字通り不死身の肉体を与えたり。
「これなら、倒せるのかな…?」
ベジータ王子自身も凄まじいトレーニングをしているだけあって戦闘力がすごく高くなっているのはスカウターを使わずとも肌で感じ取れるし、それに加えて不死身の肉体もある。
これなら、宇宙の帝王にも勝てるんじゃないかと。
フリーザに
◆
そして、出発の日。
地球でのトレーニングをやれるだけやったベジータ王子は、遂にフリーザを討伐しに行くようだ。
ベジータ王子の左目にはスカウターらしきものが装着されていた。
聞いてみると、王子から話を聞いたブルマが何とか作り上げたらしい。
しかし、本物のスカウターとは違って相手の強さを計測することはできず、通信機や相手の居場所を特定する道具として使えるそうだ。
ベジータ王子が生き残りの他のサイヤ人と通信ができるようにと、ブルマが開発したらしい。
「絶対倒してきなさいよ」
「ふん、言われるまでもない」
ブルマの激励を受けベジータは自信満々な様子で宇宙船へと乗り込む。
「全部終わったら地球に帰ってくるのよね?」
「そのつもりだ。どのみち行く場所もないからな」
その返答にブルマはほっと一息ついていた。
そして、宇宙へと飛び立っていく宇宙船をその姿が見えなくなるまで見上げ……そして、それと同時にワッと込み上げてきたのか泣き出してしまった。
「あれっ、わたし……ベジータのことを応援するって決めたのに、なんで…」
涙は拭っても拭っても止まらない。
ブルマはワケも分からないままに涙を零し、次第に嗚咽も抑えきれなくなってきた。
ギネはそっとブルマの背に手を当てトントンと優しくたたいてやる。
そして、段々と落ち着きを取り戻したブルマに──
「──ねぇブルマ、一つお願いがあるんだけどさ」
「お願い…?」
「うん。ベジータに作ってたあのスカウター。私にも1つくれないかな?」
「え、別にいいけど…。どうして?」
「ちょっと、昔のことを思い出しただけだよ。ほら、私も昔アレつけてたからさ」
【戦闘力一覧】
悟空:160
ギネ:1400
ベジータ:10万⇒500万
【ベジータの強さについて】
これ以上鍛えるならもっと時間をかけるか精神と時の部屋にでも入るしかない。
数値の参考元は作者が見ている戦闘力一覧のサイトの人造人間編ベジータ÷2くらい(ライバルがいないのと一人で鍛えるには限度があるため)
ドラゴンボール屈指の天才のブルマと成長競争をして勝ち抜いたためメチャメチャ強い。
具体的には精神と時の部屋に入る前の未来トランクスの通常形態より強い。
【ベジータの不死身について】
死ぬことも老いることもないが成長はするという特典付き。
どっかの世界のナルシスト神のように腹に風穴を開けられても瞬時に回復し、たとえ粉々に肉体が吹き飛んでも魔人ブウのように再生する。
加えて、17号や18号のようにエネルギーが尽きることはなく永久的に補給され続け、どれだけ動き回ろうと疲れることもない。
これを倒せるのはビルスの破壊のみ。
【一方そのころ悟空は…】
「見つけたぞ! シッポのあるガキだ!」
「よくもレッドリボン軍をめちゃくちゃにしてくれたな!」
「レッドリボン…? よく分かんねえけど、お前らドラゴンボールを狙う悪い奴らだな! オラが懲らしめてやる!」