誰一人としてベジータの勝利を信じている人はいませんでした。
ベジータ「ダニィ!?」
地球を飛び立ったベジータは早速ブルマの作ったスカウターを使って連絡を取っていた。
ブルマの天才ぶりは異常で、口頭で伝えただけだというのに見たこともないスカウターを完成させて見せた。
周波数さえ合わせれば惑星フリーザや他のスカウターと連絡を取ることができた。
とりあえず、周波数を記憶していたフリーザ軍の拠点である惑星フリーザNo52に連絡。
奇妙な術に嵌って長らく連絡不能になっていたが、宇宙船を盗んで脱出することに成功したと簡潔に伝えると、了解と返ってきた。
へっ、ウソとも知らずに呑気なもんだぜ。
「お帰りなさいませ! ベジータ様!」
敬礼をして出迎えるフリーザ軍兵士を一瞥すると、ベジータは早速気になっていることを尋ねる。
「フリーザ様は?」
「お出掛けになられています。いい惑星が見つかったからと」
フリーザは留守か。
「そりゃあいいことを聞いたぜ」
ベジータはニヤリと笑みを浮かべるとエネルギー波でフリーザ軍兵士を消し飛ばす。
いきなりのことに唖然とする一同を次々とエネルギー波で撃ち殺し、反撃とばかりに放たれた攻撃を弾き飛ばし他の兵士に当てる。
ベジータの攻撃に成す術もないフリーザ軍兵士たち。
それぞれがバラバラにベジータから逃げ出す中、その流れに逆らいベジータに話しかける人物が現れる。
「ベジータ! てめえ何してやがる!」
「キュイか。へっ、お前が残ってるとはな」
キュイ。
何かと絡んでくる嫌味な野郎だ。
戦闘力がオレよりちょっとだけ上だからと威張り散らしていたが……ふん、今のオレにとってはその辺の石ころと大差ない程度のパワーだ。
こんな奴は今さら敵にもならん。
「質問に答えろ!」
「なぁに、簡単なことだ。こうして暴れていればフリーザの野郎も出てくるだろうと思ってな」
「なっ、て、てめえ! フリーザさまを裏切るのか!?」
「昔からあの野郎が気に入らなかったんだ。いつまでも思い通りになると思うな。オレは無敵のパワーを手に入れたんだ!」
その瞬間、キュイのスカウターが爆散した。
ベジータの圧倒的な戦闘力を計測してショートしたのだ。
「ひっ、ス、スカウターが……そ、そんな…」
「スカウターで見たんだろう? オレの戦闘力を。10万か? 100万か? なあ、いくつなんだ?」
「ぁぁ……」
「おい、質問に答えろよ?」
「………ぁあ」
「ケッ、使えんやつだ」
ガクガクと震えるキュイを空へと放り投げ爆散させる。
あっけないものだ、あんな奴に戦闘力が劣っていたなど虫唾が走る。
汚い花火など見る必要もない。ベジータは近くに倒れているフリーザ軍の兵士からスカウターを拝借し、掴み上げると
「フリーザ、この通信を聞いているんだろう?」
あの野郎のことだ。
ヒトの会話に横耳を立てているに違いない。
『……聞いていますよ』
やはり。
どこまでも性格の悪い野郎だ。
だが、今回は横耳を立ててくれて助かった。
「お前の時代は今日でおしまいだ。オレのいるところに来やがれ! このベジータ様がぶっ殺してやる」
『ほっほっほ、見ないうちに随分と態度が大きくなったものですねぇ」
「言ってろ。貴様に地獄を見せてやる!」
◆
フリーザとの通信を終え、この惑星にいるフリーザ軍の兵士どもを始末し終えたころ、一機のアタックボールが惑星フリーザNo52へと飛来した。
どこの誰が来やがったと注意深く見ていると、中から出てきたのは──
「──ナッパ?」
「ベジータ! 本当に生きてたのか」
ナッパ。
エリートの出のサイヤ人だ。
惑星ベジータ崩壊前はなにかと世話役に抜擢されることが多く、最初の何度かの任務はナッパに同行していた。
偶然近くの惑星にいたようで、スカウターの通信を聞き駆けつけてきてくれたらしい。
「何処に行ってたんだ? 4年も姿を見せねえで」
「なぁに、ちょっと面白い発見をしたから連絡が取れなかっただけだ」
「面白いもの…?」
「不老不死だ」
「ふ、不老不死だって!? 本当か、それは…!」
「オレがそんなくだらんウソをつくと思うか?」
「へへっ、ベジータはウソが嫌いだったな」
それに加えて、以前とは比べ物にならないほどに力を付けたことを話す。
すると、ナッパがスカウターを操作しようとしたので
「ナッパ、スカウターは外しておけ」
「へっ…なんでだ?」
「どうやらオレは強くなり過ぎたようでな。スカウターの照準を合わせると、すぐにショートして爆発してしまうんだ」
「おお、そりゃすげえな!」
ベジータはフリーザの到着を待つ間に自分の戦闘力がふと気になってフリーザ軍兵士のスカウターを使って戦闘力を測定しようとした。
だが、それらは何度試しても失敗。
照準をベジータに合わせた瞬間にスカウターのメーターが振り切れて爆発してしまったのだ。
「生き残りのサイヤ人はどれくらいいる?」
「……もう両手で数えられるくらいしか残ってねえよ」
「なにっ!? もっと残っていたはずだろう?」
「フリーザの野郎がやりやがったんだ! オレたちを力で押さえつけて、ムリヤリ危険な星に送り込んだんだ!」
ナッパの話を聞く限り、ベジータのいなくなったサイヤ人たちは随分と肩身が狭い思いをしていたようだ。
ベジータがいた時もサイヤ人の待遇は悪かったが、それでも殆どの兵士はベジータに勝てないので何かをされるというのはなかった。
大猿化も含めればベジータの戦闘力はフリーザ軍No2のギニューをも上回るため、下手に手出しすることはできなかったのだ。
だが、ベジータがいなくなってからはそうはいかない。
雑用同様のことをさせられようと、奴隷のように働かされようと従うしかなかったのだ。
それは戦闘民族サイヤ人にとってどれほど苦痛で屈辱的か。
「ふん、オレがいない間に随分好き勝手やってくれたものだ」
しかしこれで殺す理由が1つ増えたというものだ。
目に物を見せてやるぜ!
「ああそうだ。ベジータの知ってるやつだと、ラディッツの野郎も生き残ってるぜ」
「ラディッツだと…!」
「ああ。ベジータも歳が近いからって何度か組んでただろ?」
「……」
「アイツよぉ……相手が強いとビビって前線に出たがらねえから、戦闘力がちっとも上がらねえんだ」
ふと、ギネの顔が浮かぶ。
なんだかんだあってドラゴンボールで生き返ったアイツは、ラディッツが生きているかを尋ねてきたことがあった。地獄にいなかったから生きているのではないかと。
ベジータは事実をそのまま伝えた。
惑星ベジータが滅ぼされたときは偶然生き残ることができたが、それ以降は何度か任務で顔を合わせるだけの関係になってしまったので生きているかも分からないと。
だが、正直生きている可能性は低いと思っていた。
ラディッツの戦闘力は10歳になる前には既に頭打ちになっていた。
戦闘力たったの1500では戦闘員としてやっていくには不安が残り、いつかは命を落とすだろうと思っていたのだ。
(カカロットといいラディッツといい運のいいヤツらだぜ)
子供2人は別の星に行っていたため滅亡を免れ、母親はドラゴンボールで生き返る。
この分だと行方不明だと言われている父親もどこかで生きているのだろう。
何故だかそう思えた。
「……どうやら、くだらないお喋りの時間はここまでのようだぜ」
そして、上空を見上げるとそこには円盤型の巨大な宇宙船。
反重力装置によりぐるりと旋回しながら入ってきたソレは、少し開けた場所まで直線的に移動し、飛行時には収納してあった脚をいくつも展開してゆっくりと着地した。
◆
宇宙船のハッチが開きぞろぞろとフリーザ軍兵士が出てくる。
道を作るように整列した兵士たちの奥から有角の宇宙人──フリーザが姿を現し、その両脇には
開幕は一瞬。
キラリ──何かが光ったと思った次の瞬間には、ベジータの心臓を貫かんと鋭い光線が迫り
「はあ…!」
ベジータはそれを軽々と弾き飛ばした。
まるで虫でも払うように鬱陶しそうに振り払い、軌道を変えたその光線は整列していたフリーザ軍兵士の1人を貫いた。
「なるほど、随分とパワーを上げたようですね。私に歯向かおうというのも満更ウソではないようです」
「強がっていられるのも今のうちだけだ。フリーザ様ともあろう御方が動きが止まって見えるぜ」
フリーザの戦闘力が53万というのは割と有名な話。
以前のベジータならどう頑張っても倒すことはできない数値だ。
だが、以前はあれほどの圧を感じたフリーザが今のベジータにはとてもちっぽけな存在に見えた。
スカウターなど使わなくとも一目瞭然だ。
大した敵にも思えん。
「お前のようなヤツに惑星ベジータを滅ぼされるなんてな。へっ、情けない話だぜ」
「…ッ! おいベジータ! 何故そのことを…!?」
「生き延びたサイヤ人から聞いたんだ。惑星ベジータに巨大隕石が衝突して滅びたっていうのは、てめえらがついたウソだってな」
驚愕を隠せないドドリアにベジータは一瞬で肉薄。
二の句を告げることなくエネルギー波で粉々に消し飛ばした。
ドドリアを一瞬で倒したベジータに驚愕しザーボンがスカウターを操作するも、次の瞬間にはスカウターが爆発してしまう。
「これは意外です。貴方にも仲間を想う情があったのですね」
「勘違いするな。オレはそんなことはどうでもいい……ただ、そうとは知らずガキの頃からてめえらに良い様に使われていた自分にムカっ腹が立っただけだ!」
ベジータは目にも止まらぬ速さで急接近しフリーザを殴り飛ばす。
あまりの速さにフリーザは反応することができない。ベジータの強烈な一撃を受け、あまりの痛みに腹を抱え込み無様にも転げまわりながら呻き声をあげた。
その姿にザーボンが驚愕のあまり「フリーザ様…!」と叫び、あまりの光景にフリーザ軍兵士たちもざわざわとどよめく。
そんな中、ベジータはニヤリと嗜虐的な笑みを浮かべると、片足でフリーザの頭を踏みつけにし、力を込めてぐりぐりと地面に叩き伏せた。
地面はひび割れフリーザの頭部のみが地面へと沈没していく。
「どうやらオレは強くなりすぎてしまったようだ。キサマの時代は終わりだぜ、フリーザ」
まるで雑草を踏みつけるように。
何の感情もこもっていない冷めた瞳でフリーザを見下ろし、ぐりぐりと踏み潰す。
その心を支配するのは愉悦か、怒りか、それとも虚無か。
いずれにせよ、ベジータはかつてないほど満ち足りた表情を浮かべていた。
「ナッパ! フリーザ軍の腰抜けどもをぶっ殺してやるんだ! 戦闘民族サイヤ人の恐ろしさを叩き込んでやれ!」
「了解だぜ、ベジータ!」
ベジータの言葉にナッパは凶悪な笑みを浮かべる。
その姿はまさにサイヤ人そのもの。
たった数人で惑星の住人を皆殺しにするサイヤ人が、フリーザ軍へと牙をむいた瞬間だった。
「へっへっへ、どいつから殺してやるかな」
フリーザ軍兵士はエリートぞろい。
戦闘力1000以上の者が大半を占めている。
この場には数百を超えるフリーザ軍兵士がおり、その中にはナッパの戦闘力を上回っている兵士もいることだろう。
だが、彼らは手を出せないでいた。
何故ならこの場にはベジータがいるから。
絶対的な強さを誇るフリーザをあっさりと組み伏してしまったベジータに敵うわけがない。
そんな思いが伝播して、フリーザ軍兵士を恐怖で震え上がらせていたのだ。
恐怖に震えた敵ほど倒すのが簡単な相手はいない。
ナッパは広範囲のエネルギー波で兵士を複数消し飛ばす。
それを見て、恐怖に震え足が
だが、一度恐怖に染まった心は簡単に立ち直らない。
次のナッパの攻撃に耐えられず、恐怖で動けない者も立ち向かった者も次々と命を散らしていく。
心底楽しそうに暴れまわるナッパや無様に死んでいくフリーザ軍の兵士たち。
その姿を見て自然とベジータの口角が上がる。
そうだ、これでこそサイヤ人だ。
破壊と殺戮の中で生きる宇宙一の戦闘民族。
フリーザへと反旗を翻したことで、ベジータは昔の自分を取り戻していたのだ──残忍で冷酷なサイヤ人の王子へと。
「ベジータごときが……」
「…ッ!」
「舐めるなああぁぁぁあああ!!」
次の瞬間、フリーザがとてつもないエネルギーを発し反射的にベジータは飛び退いた。
油断はせず注意していたはず。
だというのに、いったい何処にそんなパワーが…。
「はっ、ははは…! 貴様はこれで終わりだベジータ! フリーザ様は変身型の宇宙人なのだ!」
「なに…!?」
忌々しげに顔を歪ませるベジータに答えたのはザーボンだった。
フリーザの野郎が変身型の宇宙人だと…?
そんなことは聞いたことがない。
「ふはははは! やはりフリーザ様は次元の違う強さだ! フリーザ様に歯向かったことを後悔するがいいベジータ! ふははははは──はっ?」
狂ったように高笑いを上げるザーボンの腹をベジータの拳が貫いた。
身体の色と同じ緑色の血がダラダラと零れ落ちる。
「ベ、ベジータ…貴様……!」
「ふん、フリーザの威を借りねば何もできん腰巾着は黙っていろ。気でも狂いやがったか? みっともない高笑いを上げやがって」
ベジータがザーボンにとどめを刺している間にフリーザは変身を完了したようだ。
煙が晴れその真の姿が明らかになる。
白と濃いピンクの体色は全体的に白い体色に。
突起や外殻は無くなり、頭部に生えていた2本の角も無くなっていた。
背は少しだけ伸びており、紫色の水晶が頭部のみならず肩、腕、膝、脛に形成されている。
姿かたちは大きく異なったものになったが、紅い瞳と不気味な印象は変わることなくそのまま。外見だけで言えば弱くなったように見えるものの、感じる圧力は変身前とは比べ物にはならないほどに大きい。
「まさか、一気に最終形態まで変身することになるなんてね」
ベジータは気を読むことはできない。
だが、戦闘民族としての直感か、あるいはサイヤ人としての本能か。
変身前とは比べ物にならないほどに膨れ上がったフリーザの戦闘力を肌で感じることができていた。
かすかに震えるのは武者震いか…?
それとも……
「へっ、フリーザでもなんでも来やがれ。誰であろうとこのオレを殺すことはできんのだ」
底が見えない戦闘力。
それを前にしてもベジータは笑うのだった。
【戦闘力一覧】
ベジータ:500万
ナッパ:4000
キュイ:1万8000
ドドリア:2万2000
ザーボン:2万3000
・フリーザ:53万
最終形態:1億2000万
◆スカウターの機能について
盗聴機能はあるが通話機能があるかは原作では不明。
ただまあ、できるでしょうってことで通話させてます。
ギニュー特戦隊はどこか遠くの惑星を制圧中です。
ベジータがここまで強くなってるなんて予想外だから呼び寄せる理由もないし仕方ないね。