ブルマ「ステキな恋人が欲しい!」   作:フェレーデ

14 / 24
かなり独自解釈が多いです。
是非みんなの解釈をコメントで聞かせてください。


14:超サイヤ人伝説

「おい、まだドラゴンボールの願いが残っているというのは本当か?」

 

「なに? ナメック星のドラゴンボールは願いが3つも叶うだと? だったら──」

 

 

 

「──このオレの不死身を取り消してくれ」

 

 

 

 

 

 ベジータのその言葉にブルマは耳を疑った。

 せっかく手に入れた不死身の身体だというのに何故手放してしまうのか。あんなに血眼になってドラゴンボールをかき集めていたというのに。

 そうして返ってきたベジータの答えは…

 

「不死身になってもフリーザを倒すことはできなかった。ちっ、どうやらオレは思い違いをしていたようだ。あの野郎に勝つには、ただ不死身になる程度ではダメだということだ」

 

 どうやっても殺すことのできない身体に尽きることのない永久のエネルギー、さらには負傷したダメージを即座に修復する再生能力。

 これだけの能力を身につけ、スカウターで測定できないほどに戦闘力を増強させてもなお、フリーザに勝つことはできなかった。

 

 悔しいことだがこれは事実だ。

 たとえもう一度戦いに行ったとしても同じ結果になるだろう。

 それどころか、もっと悪い結果になり、取り返しのつかないことになってしまうかもしれない。

 ベジータは何故だかそんな予感がしたのだ。

 

「でも、せっかく叶えた願いを取り消すことはないんじゃないかい?」

「そうよ。どうせなら、ナメック星のポルンガに強くなる方法でも聞けばいいじゃないの?」

 

 ベジータの返した答えは不死身を手放すことの理由付けにはなっていなかった。

 たしかに、今のままではフリーザに勝つことはできないかもしれない。もっと力を付けなければ倒すことはできないだろう。

 だが、それは不死身を手放すこととイコールではない。

 不死身のままでも強くなることはできるのだ。実際にベジータは不死身の願いを叶えた後も、重力室でトレーニングを継続して戦闘力を高めていた。

 ブルマとギネの両名はそれを知っているからこそ指摘する。

 普通に考えれば、不死身である方がフリーザに勝てる可能性が高いと思えるからだ。相手に負けることがないのだから。

 しかし、2人の視点とベジータの考えは異なる。

 

「実際になってみて分かったが不死身の身体はオレには……サイヤ人には合わん。爆発的に戦闘力が伸びることも無かっただろう」

「まあ、確かに…」

 

 ベジータの言葉にブルマは相槌を打つ。

 たしかに、ドラゴンボールで不死身の願いを叶えて以降、ベジータの実力が大きく向上するというのはなかったように思う。

 

「フリーザを倒すには死なないだけではダメだ。パワーでヤツを上回らなければ勝つことはできん」

 

 あのフリーザに力で勝たなければならない。

 その事実を受けてなお、ベジータはほんのり笑みを浮かべていた。なんともサイヤ人らしい自信に満ちた好戦的な笑みである。

 

「でも、どうやってフリーザを超えるんだい?」

「超サイヤ人だ」

「超サイヤ人……って、あの、伝説の…?」

「ああ。それしかないだろう。超サイヤ人になればフリーザだろうと簡単に倒すことができるはずだ」

 

 超サイヤ人は伝説の存在だ。

 詳しい話はベジータ自身も知らないが、とにかく圧倒的な力を持っていることは間違いない。

 かつて、超サイヤ人は宇宙一の実力を持っていたというのは惑星ベジータでは有名な話である。

 

「超サイヤ人は単なる伝説じゃないのかい?」

「そうとは限らん。ナメック星人の作ったドラゴンボールが何よりの証拠だ。くだらん伝説や噂話にも、本当の話が紛れていることがある」

 

 ナメック星人が魔法使いのような不思議な能力を持っているというのは宇宙では広く知られた話。

 そして、それとは別にどんな願いも叶える不思議な願い玉が宇宙の何処かの惑星にあるという噂話があったのも本当の話。

 

 火のない所に煙は立たない。

 ドラゴンボールがなければそのような噂が立つこともなかっただろう。

 だとしたら、超サイヤ人という伝説も、ただのおとぎ話ではなく実際にあったものだと考えて何ら不自然ではない。

 

「なってやるぜ、超サイヤ人に。そして、今度こそフリーザの野郎をぶっ倒してやるのだ!」

 

 ベジータは拳を握る。

 必ず伝説へ至って見せると闘志を燃やす。

 サイヤ人の強さに限界などありはしない。どれだけでも強くなれる。思いのままに。

 

 そんなベジータの言葉を聞いて、一人のナメック星人が

 

「超サイヤ人のことでしたら最長老様がご存じかもしれません」

「最長老…?」

 

 数百年の時を生きるという最長老。

 長くを生きるだけあって様々なことを知っているらしい。

 きっと超サイヤ人のことについても知っているだろうとのことだ。

 

 このベジータ様にも運気が回ってきやがったぜ!

 

 

 

 

 

 その後、ドラゴンボールの残った願いで不死身は解除してもらった。

 この力を手に入れたのもフリーザの野郎をぶち殺すためだ。そうでなければこんなくだらん力に頼ったりなどしない。

 不死身の力はサイヤ人としての成長を阻害する。

 サイヤ人向きの力ではないのだろう。現に、願いを叶える際にサイヤ人の特性が失われないよう細心の注意を払ったというのに、フリーザの野郎との戦いで大した戦闘力の向上は見られなかった。

 

 生きるか死ぬかの狭間。

 生死の境界線に立つことこそがサイヤ人を成長させる。

 不死身の力でその境界線を取り払ってしまっては劇的なパワーアップなど見込めない。見込めるわけがない。

 

 

 

 

「貴様が最長老か」

 

 その後、ベジータは最長老のもとを訪れていた。

 座ったままだというのにその体躯は2メートルを優に超えており、他のナメック星人たちとは明らかに異なる存在感を放っていた。

 だというのに、気質はこの上なく穏やかなもので、まるで大木と話しているようだ。

 まったく調子が狂うぜ。

 

「あなたがサイヤ人の王子ですか。話は聞いております」

 

 おおかたブルマ達から話は聞いたのだろうとベジータは当たりを付ける。

 ドラゴンボールのひとつは最長老が持っていたという話だ。しかも、ナメック星のドラゴンボールで願いを叶えるにはナメック語で願いを言う必要がある。

 ナメック星人にはある程度の事情は割れているのだろう。

 

「オレが聞きたいのは超サイヤ人のことだ。知っていることをすべて話せ」

「いいでしょう。あなたが邪悪な大パワーと戦っているのはこのナメック星にも伝わってきました。あなたが超サイヤ人になればその者を打ち倒すこともできるでしょう」

 

 ベジータの粗雑な物言いに最長老のお付きであるネイルが前に出ようとするが、最長老はこれを片手で制する。

 ベジータはそれを眼中にも入れない。

 パワーを持っているのは確かだが、脅威にはならないと思っているからである。

 

 

「超サイヤ人とはサイヤ人が後天的に覚醒する変身形態の一つです。覚醒すれば、他を圧倒する力を得られると言われています」

「変身……大猿ではないのか?」

「違います。姿かたちはヒトのまま、眩いほどの黄金の輝きがその身を包むと聞いています」

 

 聞く話によれば、伝説となるだけのことはあり、超サイヤ人というのは相当に圧倒的な力を得られるらしい。

 それこそ、フリーザさえ圧倒するほどの。

 

「かつて、超サイヤ人に覚醒したその者は宇宙一の力を持った異星人を一方的に叩きのめしました。命からがら仲間に助け出されたその異星人は、その散り際に金色に変化するサイヤ人には注意するよう一族に伝え、命を散らしました」

 

「超サイヤ人に覚醒したその者は忽然と姿を消したと言います。不思議なことにその姿を見たサイヤ人も誰もいないと。そのため、惑星ベジータにおいても曖昧な伝承しか残らなかったのでしょう」

 

「ですが、私の話したことも真実とは限りません。超サイヤ人の伝説は定かではないことが多く、悪の一族を打倒せんと一騎当千の強さを見せたという話もあれば、とてつもないパワーで宇宙を破壊して回ったという話もあります」

 

「ただ、ひとつ確実なこととして言えるのは──」

 

 最長老はここで言葉を区切り

 

 

「──超サイヤ人に覚醒するには穏やかな心が必要だということです」

「穏やかな心だと…!?」

 

 ここで、黙って話を聞いていたベジータも予想外の言葉に言葉を漏らす。

 

「必要だと言うのか? 超サイヤ人になるのに穏やかな心が…?」

「ええ。戦闘を好むサイヤ人でありながら穏やかな気質を持った者。その者にこそ超サイヤ人になる資格があるとされています」

 

 あまりのことに衝撃を隠せないが、その反面納得する部分もある。

 今の話が本当だとすれば、今まで超サイヤ人が現れなかったことにも説明がついてしまうからだ。

 惑星の制圧と現地住民の殺戮。

 そんなことをやっているサイヤ人に穏やかさなどあるわけがない。

 奪って生きるサイヤ人に穏やかさを持てなど酷な話。かつて超サイヤ人になったというサイヤ人は相当な変わり者だったのだろう。

 

 

「ちっ、穏やかな心か……気に入らんな」

 

 それはベジータに最も似合わないモノ。

 必要ないと心底思っているし、地球に来て段々と甘くなる自分のことも気に入らなかった。

 残忍で冷酷でこそサイヤ人。

 最長老の話を聞いてもその考えは揺らがないし、この先も変わることはないだろう。

 

 だが、本当に超サイヤ人になるのに穏やかな心が必須なのだとすれば…。

 果たしてオレは超サイヤ人になることができるのか?

 一瞬だが、そんな不安がベジータの脳裏をよぎる。

 

「大丈夫です。あなたも超サイヤ人になれますとも」

「なに…!?」

「あなたには穏やかな心を授けてくれる連れがいるではありませんか」

 

 そうして、最長老の視線が部屋の隅の方へと向けられる。

 視線の先にはブルマ──ベジータを地球へと呼び寄せるきっかけとなった少女。

 いきなり視線を向けられて少々困惑しているが、その行動力で悪の道を突き進まんとするベジータを二度も引き留めた。

 ベジータが多少甘くなったのもブルマがいたからだ。

 

「アイツが穏やかだと? 冗談を言うな、あんな強引で強情なヤツが穏やかなわけがあるか。ギネの方がよっぽど穏やかに見えるぜ」

「何ですってーー!!」

 

 ベジータの言葉に怒りの感情を滲ませブルマが掴みにかかる。

 ブルマの応酬にベジータは面倒そうに嫌な顔をするが、ブルマはそれを止めない。

 ベジータの手はブルマを引き剥がさんと動き、その口は「止めろ」と言っているが、ブルマが引き剥がされることはない。

 その様子を見て最長老は

 

 

「あなたたちが出会ったのは運命だったのでしょう」

 

 

 そう言葉を述べる。

 またも予想外の言葉にベジータとブルマの二人は動きを止める。

 

「この世界には運命というものがあります。その力は極めて強力で、ドラゴンボールの力を使ったとしても変えることはできません」

 

 思わずブルマと顔を見合わせる。

 オレとブルマがあったのが運命だっただと?

 ドラゴンボールを使って強引にオレを呼び出したこの女が?

 

「出会い方は違ったかもしれません。出会う時期も違ったかもしれません。ただ、どのような形であれあなた達は出会っていた。そのように思います」

 

 ナメック星人は魔法使いのような能力を持っている。

 ドラゴンボールはその最たる例で、こんなものを作れるのはナメック星人をおいてほかにいない。

 今話しているのはそんなナメック星人の長だ。

 荒唐無稽な話をしていても、そんなわけないだろうと切り捨てることはできない。

 

「早くに巡り合ったあなた方は、異なる未来を描くことができる。その出会いを大切にしてください」

 

 

 

 

 

 最長老との話が終わったことで、ブルマ達は宇宙船へと乗り込んでいた。

 

「さあベジータ! 地球に帰ったら”穏やかな心”を手に入れるための特訓をしましょうか! 心配しなくても大丈夫、私も付き合ってあげるわ! まずは私とデートでもしてみましょうか!」

 

 やたら上機嫌なブルマはベジータに詰め寄っていた。

 普段なら「くだらん」の一言で切り捨てるベジータも穏やかな心を引き合いに出されては強く出られない。

 まったくこの女は性格が悪い、ベジータにはそう思えてならない。

 無自覚でやっていたとしても腹が立って仕方ないだろうが、分かっていてやっているのだからなお性質が悪い。

 

(ちっ、地球に戻ってもこの調子だととてもじゃないが付き合ってられん。かと言って、超サイヤ人になるには穏やかな心が必要だ。オレが穏やかな心とやらを手に入れるまで、ブルマの奴は付きまとい続けるだろう。となれば──)

 

 

(──行動で示すしかない。)

 

 穏やかな心。

 それが何なのかベジータにはよく分からない。

 だが、取り敢えず今のサイヤ人が穏やかさとは対極にあるということは何となく分かるので、今までとは正反対な行動───つまり、人を殺すのではなく助ける方向で動けばいいのではないかと考えが浮かぶ。

 

 そして、その考えが浮かんだタイミングでちょうど視界に入ったのはギネ。

 ブルマの行動に少々呆れつつも、どこか微笑ましい表情でこちらを見ていたので

 

「おい、スカウターがあったな。それを貸せ」

 

 ベジータはスカウターを操作し通信を繋げる。

 スカウターの最も凄い機能はどれだけ離れていようと通信可能であることだ。一切のラグなく通信することができる。

 

 

「聞こえるか、ラディッツ」

『っ!! そ、その声は王子か!? いったい今までどこに──』

『カカロットは生きている。フリーザが動きだす前にさっさと逃げることだ。間に合わなくなっても知らんぞ」

『えっ、ちょっ…!?』

 

 ブチッ

 

 

「どうだ? オレにも優しさがあるだろう? 貴様に付き合ってもらわずともこのくらいできる」

 

 言いたいことだけ言ったベジータはスカウターの通信を切った。

 そして、満足げな様子でブルマに向かって先の一言を言い放ったのである。

 なにせ失われる可能性の高い命を救ったのだ。フリーザは間違いなくサイヤ人を皆殺しにするだろう。今のうちに逃げ出さなければ万に一つも助かる道はない。

 ベジータはそう信じてやまなかった。

 

「はぁー。よーく分かったわ。あなたが孫くんより重症だってことが」

「なに…!?」

「そんなのが穏やかさなわけないじゃない!」

 

 だが、ブルマはそれを真っ向から否定する。

 そして、腰に手を組んでじりじりとベジータに歩み寄り

 

「地球へ帰ったら付きっきりで特訓してあげるから。好きなのよね、修行?」

 

 最高の笑顔で言ったのだった。




ベジータは生まれて初めて心の底から震え上がった。
真の恐怖と決定的な挫折に。
恐ろしさと絶望に涙すら流した。
これも初めてのことだった。


【サイヤ人と不死身について】
 サイヤ人の特性は一言で言うと成長チート。
 瀕死からのパワーアップ、戦闘力を高倍率で引き上げる変身、種族全体に言える好戦的な気質などなど。戦闘民族という名の通り、強くなるために必要な要素をこれでもかと詰め込んでいる。
 ただ、これらの性質は生死を分ける戦闘の中でこそ発揮されるもの。
 不死身の肉体や永久エネルギーなどがあると生死の境界線や体力ゲージなどが取っ払われるため、ピンチというものが訪れなくなる。
 そうなれば戦闘に緊迫感など生まれず、被弾前提の戦闘スタイルにずるずると堕ちていくことになる(ザマスもそのスタイル)。
 サイヤ人の気質と不死身の肉体は両方とも強い特性だが、その相性は最悪と言わざるを得ない。


【超サイヤ人の伝説について】
 直球で言うなら、「超サイヤ人」「超サイヤ人ゴッド」「伝説の超サイヤ人」の3つがいい感じにミックスされて伝承が混ざっている。
 超サイヤ人に必要なのは穏やかな心、超サイヤ人ゴッドに必要なのは正しい心、伝説の超サイヤ人に必要なのが残虐な精神性とバラバラなのもややこしさに拍車をかけている。
 それぞれの伝承の起源は、超サイヤ人はバーダックVSチルド、超サイヤ人ゴッドは悪のサイヤ人VS正しい心のサイヤ人、伝説の超サイヤ人はある日生まれたブロリー0世が宇宙を荒らしまわったこと。(このSSではこの設定にします)
 ただ、どの伝説も確たる証拠はないのでただのおとぎ話。
 日本で言う桃太郎、金太郎、浦島太郎みたいな。

 インタビューにて、史上初めてサイヤ人に覚醒したヤモシの伝承がナメック星のどこかに伝説の書物として保管されていると鳥山氏が話しているが、異常気象が起こったかつてのナメック星に保管されていたと解釈することで回避。(強引)
 最長老は星を脱出する前に読んだことがあったのでしょう。(投げやり)



【運命について】
 完全に作者の独自解釈。
 未来世界でも原作世界でも悟飯の右腕って負傷してたなぁとか、結局悟空は帰らぬ人になってしまったなぁとか考えてたら変わらない未来ってあるんだと思った。
 ここでは変わらない未来=運命と解釈。
 ドラゴンボールやタイムマシンによって過程を変えることはできるが、最終的な結末を変えることはできない。(こういう設定があった方が原作準拠で進む理由付けにもなるというメタ的な話もある)


 感想、評価のほどよろしくお願いします!
 作者のモチベが上がります!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。