長い場合は会話文だけ読んでもらえば話は分かります。
今度こそ年内最後の投稿です。
「あら! ギネじゃないの、久しぶり!」
「久しぶり。早速だけどベジータ王子はいるかい?」
「いるわよ。ちょっと呼んでくるわね」
ブルマが部屋の奥へと歩いているのを見ながらふと思う。
私も気の操作は大分上達したかなと。
実はベジータがいることをギネは知っていたのだ。
気を感知することで居場所が分かるのだから当然だ。あんなに大きな戦闘力を持っているのはベジータ王子くらいなものである。
ブルマに話を通したのは礼儀のようなものだ。
「このオレに用があるようだな。何だ?」
相変わらず尊大な言い回しだなぁと。
ベジータ王そっくりな態度に確かな血の繋がりを感じながらギネは要件を伝える。
「3日後に天下一武道会っていう大会が開かれるんだけど、ベジータ王子もそれに出てくれないかい?」
「天下一武道会だと?」
聞いたことのある言葉にベジータは記憶を探り、そして思い出す。
たしか6年ほど前に参加した大会だったと。
「ふん、ザコが出るような大会に興味はない」
「そうじゃなくてさ! カカロットも出るからベジータ王子を誘ってるんだ」
「なに? カカロットだと?」
「うん。ベジータ王子を超えてやるって言って3年間猛特訓してたんだ。もう私じゃ全然敵わないよ」
「……ほう」
ギネの戦闘力はおよそ1400ほどだったか?
それを超えているということは、猛特訓をしたというのもどうやら本当のことらしい。
「だが、それなら大会など待たずに戦いに来ればいいだろう。わざわざ退屈な試合に参加する必要はない」
「アンタねえ…、もっと風情ってものを楽しみなさいよ。大会で戦うからこそ面白いってもんでしょ」
「そんなものはいらん」
ベジータの態度にブルマも頭を抱え呆れる。
主張を曲げる気のないベジータを見て「サイヤ人ってみんなこうなのかしら」と言葉を漏らすブルマに、ギネは「あはは…」と困ったように笑うことしかできない。
「何と言われようとオレは参加する気はないぞ。このオレとどうしても戦いたいんだったらここまで来ることだ。特別に相手してやらんこともない」
強情なベジータの態度にブルマは思わずため息を漏らす。
だが、これでもベジータは譲歩しているのだ。地球に来てすぐの彼ならば絶対にこんなことは言わなかった。
ベジータ自身の気質が若干穏やかになったのもあるだろう。一般的な穏やかさとはかけ離れているものの、サイヤ人としてはかなり穏やかな部類に入るほどには丸くなったといえる。
だが、一番は相手に飢えていること。
地球に来てからというもの、ベジータは良質なトレーニングこそ積んでいるものの戦闘経験は積めていない。
いくら戦闘力を上げようと、実戦なくしては本物の力とは言えないのだ。
戦闘とは実戦あってこそ。戦闘民族サイヤ人の本能が強い者との戦闘を求めている。
「話はこれまでだ。オレは重力室にでも行ってくる」
「ちょっと、ベジータ!」
ブルマが止めるのも聞かずベジータはすたすたと歩いていく。
どれだけブルマが呼びかけようとベジータは止まらない。力で敵わないのはもちろんのこと、言葉が心に届いていないのだ。
しかし、何もそれはブルマとベジータが親しくないということではない。
宇宙中で見ても、ベジータと最も親しい人物はブルマで間違いない。ベジータが戦闘服以外の服を着ることが増えたことからもそれは明らかだ。
では、何故こうもサイヤ人というのは強情なのか。
それは、サイヤ人の民族性に由来する。
サイヤ人は興味のあることに対しては人生を懸けるほどに熱中するが、興味のないことに対しては驚くほどに無頓着になるという特徴がある。
子供が御飯やお風呂を忘れて新しいゲームを徹夜で遊ぶように、ゲームの廃人が同じゲームをずっとプレイし続けるように、サイヤ人は戦闘を楽しむ。
そこには『戦闘をすること』以外の部分は一切考慮されておらず、惑星の住人が何人命を落とそうと、それで悪魔だの何だのと罵られようと……たとえ、自分の命が燃え尽きたとしても一切意に介さない。
サイヤ人は冷酷な民族だと言われるが、それはあくまで一面でしかない。
異常なまでの戦闘への執着。そして、その他のことへの無頓着さ。それこそがサイヤ人の本性であり、すべて。
頭を強く打ち穏やかに育てられた悟空でさえも沸き上がる高揚感を抑えきれないほどだ。記憶よりもさらに深い、本能のレベルで刻まれていると言っていい。
戦闘に飢えれば破壊衝動に飲み込まれてもなんらおかしくはない。
サイヤ人自身もその驚異的な闘争本能を自覚しており、大猿の姿をサイヤ人の真の姿と称することもあるほどだ。
戦闘の中で死ねるならサイヤ人としての本望。
親を殺すことは何よりの強さの証。
それこそがサイヤ人。
「だったらさ…」
本能には自分自身でさえ抗えない。
だがもしも……もしも、それをコントロールする術を知っているとすれば、穏やかな気質を持って生まれながら生粋のサイヤ人と婚姻を結んだギネにおいて他にいない。
「私が持ってきた御馳走で手を打つっていうのはどう?」
ピタリ。
ギネの言葉にベジータが歩みを止める。
「ベジータ王子、この前私が西の都で開いていた試食会に来てたでしょ? あの試食会は私がやってる仕事の一つで、世界中の美味しい特産品を集めて都で販売してるんだ。そういうことをやってると、普段は都で食べられないような美味しい食べ物を知ることが多くてさ…」
「……何が言いたい?」
「天下一武道会に出てくれたら、私の知ってるとっておきの食材で料理を作る」
「ふん、いいだろう!」
こうして、ベジータの天下一武道会への参加が決定した。
◆
オレの名はピッコロ。
偉大な父ピッコロ大魔王の息子であり分身であり生まれ変わりだ。
仇敵である孫悟空を打ち倒し、父の野望である世界征服を成し遂げるという使命を持って生まれてきた。
だが、悔しいことに今のままでは孫悟空に勝つことはできん。
産まれたばかりなのだから当たり前だ。父を打ち倒すようなヤツに勝てるわけがない。この身体が成長するまでしばらく時間を空ける必要がある。
その間におれ自身も修行をして力をつけておかねばならない。
奴は神殿にいるのだ。今ごろは神の奴がこのオレに負けぬよう修行を付けていることだろう。つまり、数年後にオレが戦う時には父を倒した時よりさらに力を付けているということだ。
少なく見積もっても父を一撃で倒せるくらいの実力をつける必要があるだろう。
そのくらいしなければ孫悟空には勝てない。むしろ、そのくらい強くなってもらわなければ倒しがいがないというものだ。
万全のヤツを大勢の目の前で必ず殺す。
そのための舞台は……3年後に開かれる天下一武道会がうってつけだ。
ヤツはその大会に必ずやってくる。
稽古をつけているのは神なのだ。オレの魂胆など既に気付いているだろうし、乗っかってくることだろう。
最悪の場合、神と孫悟空が手を組んでくるかもしれないが、その場合でも対処できるようにオレ自身が強くなれば問題ない。
そうして3年の月日が経った。
天下一武道会には孫悟空を含むやつらの仲間も来ていた。
何人か知らない顔がいるが問題はない。1回戦で戦ったクリリンという奴はなかなかの力を持っていたが、世界征服の脅威とまではなり得ない。
父と戦っていた天津飯という奴も相当腕を上げたようだが、今のオレ様には遠く及ばない。
孫悟空との対戦では大差をつけられ敗北していた。あの程度の動きを見切れんようではアイツも脅威とはなり得ないだろう。
この準決勝に勝てば決勝で孫悟空と当たる。
対戦相手はベジータという奴だ。ガキの頃の孫悟空と同じくシッポがある変わった野郎だ。
あのシッポを見ると孫悟空を思い出す。
忌々しい、殺してしまっては失格のようだから死なない程度に甚振ってやることにしよう。
予選も含めてすべて一撃で相手を倒しているようだが、いくらザコを倒したところでこのオレを倒すことはできん。
孫悟空さえ倒せば世界征服も王手だ!
ヤツを大勢の観客の前で処刑したあとは再び国王となり世界を恐怖のどん底に陥れてやるのだ! オレ様は父を超えた! 誰にも止められるわけが───
「──くそまぁ!」
一撃で敗北した。
◆
「さあ次はお待ちかねの決勝戦です! 会場はものすごい熱気に包まれています! それもそのはず! 決勝でぶつかる孫悟空選手とベジータ選手はどちらも桁外れの実力派! 圧倒的な強さで本戦を勝ち上がってきました!」
審判の言葉を聞きながら悟空はニカリと笑みを浮かべる。
その身長は3年前と比べ大きく伸びており、子供体型であったころより遥かに体格も良くなっている。
「へへっ、ありがとうなベジータ! 大会に参加してくれて」
「貴様の母親にそそのかされただけだ。オレと戦いたいのなら、以前のように勝負を挑んでくれば良かっただろう?」
「それじゃダメなんだ。オラ、どうしてもここで戦いたかったんだ。ベジータと初めて戦ったこの場所で」
思い出すのは第21回天下一武道会。
亀仙人のじっちゃんのところで修行をして、自分が思っているよりもずっとずっと強くなって……そして、ベジータにあっさりと負けた。
この世界にはこんなに強いやつがいるのかと思うには十分だった。
世界を旅して強くなることを誓った。
そして3年後の第22回天下一武道会。
そこに、ベジータの姿はなかった。
後で母ちゃんから聞いた話によれば、ベジータは
しかも、そのフリーザってのは今のベジータよりもずっとずっと強いらしい。
ベジータが修行を頑張ってるのもフリーザを倒すため。
それを聞いて悟空はなんだか無性に悔しかった。
ベジータに先を行かれてるのが悔しいんじゃない。一度も勝ったことがないことがないのが悔しいんじゃない。
自分がまだまだ弱いのが悔しいのだ。
その後はベジータに追いつくために死ぬ気で修行を頑張った。
母ちゃんとも競い合って、気の扱いも神様からお墨付きをもらえるくらいにバッチリ習得して、3年前より何倍も強くなった。
これだけ修行をする日はもう来ないだろう。
そう思えるくらいには悟空は修行に打ち込んでいたのだった。
「さあ! 勝利を手にするのは前大会優勝者の天津飯選手を下した孫悟空選手か! それとも、前々大会優勝者のベジータ選手か! 互いに大きく成長した両選手が、今ここに! 6年の時を経て再び激突します!」
「最初から全力でかかってくることだ。このオレを失望させるなよ、カカロット」
「ああ、そのつもりだ」
悟空が全身で構えを取るのに対して、ベジータは腕を組んで立ったまま余裕な表情で悟空を見ている。
……実は、悟空自身もベジータに勝てる自信は微塵もない。
これだけの修業をしておいて……いや、これだけの修業をしているからこそ直感してしまったのだ。
まだまだ自分はベジータには敵わないと。
だが、だからと言って試合を放棄する理由にはならない。
全力で、全身全霊を以て、やれるところまで戦う。それが今の悟空にできることだ。
「では、決勝戦! 始めてください!」
試合開始のゴングが鳴り響く。
熱気に包まれていた会場がゴングの音に搔き消され一瞬でシンと静まり返る。
悟空は全身に力を込める。
身体の内側で巡る気を一気に爆発・増幅させ外に放出!
地表からマグマが勢いよく噴き出すように、悟空の全身から炎のように紅い紅蓮のオーラが噴き出す。
「界王拳…!!」
気の高まりに悟空の立っていたリングのタイルがボロボロと欠ける。
地球全体が揺れるほどの地響きが鳴り、空気を揺らす。
勢いそのまま悟空は地を蹴りベジータへと攻撃を仕掛けたのだった。
ちなみにカプセルコーポレーションはギネの商売のお得意様になった。
ついでにブルマは料理を練習し始めた。
ベジータに続いて悟空も時代を先取りした修行をすることに。