神精樹の実。
そんな厄介極まりない植物を植えたのはターレスというサイヤ人だった。
彼が神精樹の種を手に入れたのは偶然だ。
フリーザの命令に従い、制圧した惑星でたまたま見つけた。
もちろんこのことはフリーザには報告していない。密かにフリーザへの反逆を企てるターレスは、神精樹を発見したのと同時にフリーザ軍から失踪したのだ。
サイヤ人狩りが始まったのはちょうどその頃だ。
フリーザ軍に見切りをつけていなければどうなっていたことか。運良くターレスはフリーザの魔の手から逃れることができたのだった。
神精樹の実。
赤紫色のとげとげしい果実は、一口齧れば戦闘力を何倍にも高めてくれる優れモノだ。
しかもそれは一時的なドーピングではない。神精樹の実は食べた者の身体を文字通り作り変え、強さの上限を拡張する。
今はムリでも、その実を食べ続ければいつかはフリーザを超える存在になることができる。
無限に強くなれるのだ、惑星のエネルギーを糧にして力を付けることができる。
ならば、多くの惑星に神精樹の実をならし、それを食べ続ければ強くなれるというのは当然のこと。
ターレス率いるクラッシャー軍団は次々と惑星を砂漠へと変え、その力を着々と増していき……
そして、次のターゲットを地球へと定め降り立ったのだが
「ごはっ…!?」
1時間と経たぬうちにこっぴどくやられたのだった。
◆
地球へと降り立ち神精樹の種を撒いたターレスは、いつものように実が成ったら食べてさっさと惑星を去ろうと考えていた。
しかし、その途中スカウターが70万以上というあり得ない数値を叩き出し、機体もろともショートして粉砕した。
「……」
ウソだろう…?
アレはフリーザ軍から奪ってきた最新式のスカウターなんだぞ!?
内心冷や汗ダラダラとなる中、それを一切表情に出さずに代わりのスカウターを宇宙船から持ってきて、何か異常があったら起こせと仲間に言ってふて寝した。
数分後。
仮眠とも言えない睡眠時間で起こされたターレスは、カカロットとその仲間たちが神精樹へと攻撃をしていることを知り、少し遊んでやるかと重い腰を上げた。
「オレはカカロットの相手をしてくる。お前たちはヤツの仲間の相手をしてくるのだ」
どぉれ、カカロットがどれほどの力を付けたか。
無様に跪かせて仲間にしてくださいと懇願させるのも面白いだろう。
そう思い、意気揚々とカカロットの前に躍り出て、顔がそっくりなことに驚きを隠せないカカロットに「下級戦士はタイプが少ないからな」と言ってやり、その戦闘力を計測したところで
「なに!? 戦闘力15万だと…!?」
ここで、ターレスの余裕が崩れた。
高々数千程度だろうと思っていたところに、15万という数字が出てきたのだから当然だ。
「く、くそ…どうやってそんな戦闘力を。サイヤ人のレベルを大きく上回っている」
「そうなんか…?」
ターレスの動揺は相当で、相手であるはずの悟空にさえ「お前大丈夫か?」と呑気な顔で心配をかけられていた。
だが、ターレスが驚くのも無理はない。
戦闘力15万という数値は、エリートと呼ばれるサイヤ人が大猿になってようやく到達するかもしれないといった値なのだ。
それを変身もなく叩き出しているのだから、衝撃を受けるのも致し方ないというものだ。
「だ、だが、サイヤ人のパワーを大きく超えているのはカカロット、何もキサマだけではないのだ。このオレもまた、サイヤ人のパワーを大きく超えた力を引き出すことが出来る。この神精樹の実によってな」
ガジリッ。
赤紫色のとげとげしい果実を齧る。
一見すると毒がありそうな果実ではあるが、毒はない。
沸き上がるのは圧倒的な力のみ!
酩酊にも似たふわふわとした気分は圧倒的な力を手に入れたが故か。口角を上げ、獰猛な笑みを浮かべ、何物にも負けぬという自信と共にターレスは悟空へと殴り掛かり
「がっ…!?」
「お前はオラに勝てねえ」
やられた、一撃のもとに。
何が起こったんだ。そんなことも分からぬまま、ただただ攻撃された痛みだけが腹部に残っていた。
「悪いことは言わねえ。さっさと自分の星……あぁー、とにかく、元いた場所に帰れ」
「ほざけっ!!」
苦し紛れにエネルギー波を放つが、カカロットはそれを表情一つ変えずに弾き飛ばした。
歴然たる戦闘力の差。
戦闘力15万というのはブラフだろう。
それを察したターレスは、悟空に背を向けてシッポを撒いて逃げるふりをして
「くっくっく、一つでは無理だったが二つならばどうだ」
ガジリッ
再び神精樹の実を食べる。
しかも今度は2つも齧ったのだ。
パワーアップの量も先ほどの2倍となる。
先ほどよりも速く、鋭く、重い一撃をカカロットへ叩き込まんとラッシュ攻撃を仕掛ける。
「界王拳…!!」
その言葉と共にカカロットから紅いエネルギーが噴き出した。
すると、まるで神精樹の実を食べた直後のようにカカロットのパワーが大きく向上し、ターレスは赤子の手を捻るかのごとく叩き伏せられてしまった。
「言ったろ? お前じゃオラに勝てねえ。スカウターって機械を付けてるならわかるだろ? 瞬間的に出せるパワーはこんなもんじゃねえぞ」
悟空はそう言うが、ターレスのスカウターは既に機能していなかった。
戦闘力計測のメーターが振り切れていたのだ。爆発こそしていないが、正真正銘の故障である。
「もう一回言うぞ。仲間を連れて元いた場所に帰れ」
「……」
本当に帰ろうかな?
そんなことをふと思うターレスだった。
◆
ピッコロは何度あの日の屈辱を夢に見たか覚えていない。
忘れられない敗北の記憶がピッコロには2つある。1つは大魔王が孫悟空に敗れた記憶、もう1つはマジュニアがあっさりと一発KOされた記憶。
若さを取り戻して強くなったと思っていた。
修行をして更なる高みに至ったと思っていた。
しかし現実はどうだ? あの大会から更なる研鑽を積んだが、未だに孫悟空やベジータを倒すビジョンは見えない。
たとえ騙し討ちしたとしても倒せるとは思えなかったのだ。
あの決勝をピッコロも見ていた。
凄まじい試合だった。目で追うことさえできない異次元の戦いで、あと何年修行すればその領域まで届くのか検討すらつかなかった。
屈辱だ。このピッコロ様が、宿敵を打ち倒せないどころか、その戦いぶりに戦慄するなんて。
そんな時だ。
ピッコロの前にボロ雑巾のような焼死体が落ちてきたのは。
驚愕を隠せないままそれを見てみると、どうやらオレと同じ種族のようだった。
皮膚は黒ずみ焼け焦げており、右腕と左足は千切れているが、紛れもなくオレと同じ種族であった。
「キ、キサマは……」
それを相手も気づいたのだろう。
オレの顔を見た途端に驚いた様子を見せていた。
「……ふっ、そうか。なるほど、お前も悪のナメック星人なのだな?」
「っ…!? キ、キサマ!? 心を読みおったな!?」
「そう怒るな。オレはもうじき死ぬのだ」
「ちっ…」
ボロボロな姿だというのに、その同族からはオレより遥かに強い力を感じた。
しかし、その声はひどく弱弱しい。
コイツの言う通り、風前の灯火というものなのだろう。あと数分もすれば、コイツは息絶えて死んでいく。
「し、死ぬのか…。こ、こんなことになるなら、永遠の若さではなく不老不死でも願っておくんだった…」
「永遠の若さだと…? では、先ほどドラゴンボールを使ったのは?」
「オレだ。もっとも、サイヤ人にこっぴどくやられたわけだが」
十中八九ベジータだろう。
ヤツは先ほどまで誰かと戦っていた。それがコイツということか。
ドラゴンボールのことといい、色々と謎が解けた。
「奇遇だな。オレの親父も若さを願ったのだ」
「なに…?」
言葉を返したのはただの気まぐれだ。
もしかしたら、父と似た境遇のこいつに柄にもなく同情でもしたのかもしれない。
「世界征服を目論んで失敗したんだ。てめえと同じくサイヤ人にやられてな」
「……そうか」
言葉にすれば苦々しい記憶が再度蘇ってくる。
そんなピッコロの心中を知ってか知らずか、スラッグはとある交渉を持ち掛ける。
「…キサマに同族のよしみで頼みたいことがある。オレと同化してはくれないか?」
「同化だと…?」
「そうだ。オレも今思い出したんだが、ナメック星人は同化することで大きくパワーアップできる。同じ志を持ったお前になら同化されても悔いはない」
「し、しかし……それでは貴様に益がないだろう? そんなうまい話があるか! でまかせを言いやがって!?」
「で、でまかせなどではない。そ、それにオレはもうすぐ死ぬのだ。このままサイヤ人にやられたまま散るより、貴様と同化して一泡吹かせる方がよっぽどいい」
ピッコロは考える。
コイツの話にウソはないかと。
幸いにもスラッグは弱っていたので、ピッコロでも心を読むことが出来た。
だが、どれだけ心を探ってもウソは見当たらない。
むしろ、本心から同化を強く望んでいることが伝わってきたのだ。
同化。
それはピッコロの忌避するものだ。
もともと悪の心が分離して誕生したピッコロは、同化というものに強烈な拒否感があった。
おそらくこの感情は生理的なものだ。
悪として生まれたが故に、変わってしまうことに猛烈な忌避感を覚える。
しかし、同化を求めているのは神ではない。
同じく悪の心を持つ同族だ。
それならば問題ないのではないか?
そんな気持ちがピッコロの心に浮かび上がってくる。
「同化をすれば凄まじいパワーを得られるというのは本当だろうな?」
「あぁ、本当だ」
「オレは貴様の指図など受ける気はないぞ」
「構わん」
「……どうやら本当らしいな」
「やはり貴様も心を読めるのか…」
「お生憎様だ」
そうしてピッコロはスラッグの胸に手を置く。
すると、スラッグの全身が光り、ピッコロの手へと吸い込まれていく。
カッ!
眩い閃光が輝き、スラッグの気が段々と消えていき、その分ピッコロの気が大きく膨れ上がっていく。
同化とは吸収と同義ではない。
単なるパワーの上乗せではないのだ。
力と知恵、その両方をベースとなる方へと授け、パワーアップのきっかけとなり存在が消滅する。
「くくく…! 戻った! 戻ったぞ! 悪のパワーがオレ様に戻ったぞ!」
ピッコロは同化により上昇した己の気を高めていく。
凄まじい……信じられないパワーが身体の底から沸き上がってくるのを感じる。
これが同化というものなのか?
これほどまでにパワーが跳ね上がるというのか?
「勝てる! 相手が誰であろうと負けるはずがない! オレは今、究極のパワーを手に入れたのだ!」
いける…!
相手が孫悟空であろうと、ベジータであろうと!
これだけのパワーがあれば
『我が子よ…いつの日か父の恨みを晴らしてくれ…! 悪の根を絶やしてはならんぞ』
父の遺言が脳裏に蘇る。
しかし、それは父の記憶だ。
言うなれば、まったく知らない赤の他人の人生を生まれた時から知っていて、その人生で成し得なかったことを成してくれと言われているようなもの。
記憶を引き継ぐとはそういうことだ
悪事をした記憶はあるし、そのときの愉快な気分も覚えているのに、同じことをしても同じ気分を味わえない。
考えてみれば当然だろう。
ピッコロとピッコロ大魔王は別人なのだ。
記憶だけを渡されて同じことを試みても、同じ気分や同じ結果を得ることはできない。
記憶のすべてを引き継いだとしても、そこには悪の心が備わっていないのだから
しかし、今ここに悪の心が宿った。
ピッコロという不完全な悪にスラッグという悪の塊が融合した。
悪事の記憶と悪の心、その2つが揃ってしまった。
「待っていろ孫悟空! まずはお前からあの世に送ってやる!」
ここに新生ピッコロ大魔王が誕生した。
戦闘力が足らないなら合体すればいいじゃない。byパワー・アントワネット
というわけでこの章のボスは悪の心を得たピッコロです。
【戦闘力一覧】
・悟空:15万
界王拳5倍:75万
界王拳10倍:150万(少し慣れてきた)
界王拳20倍:300万(かなりムリしてる)
※界王拳20倍を一瞬だけ引き出して使用する形をとっている(ナメック星到着悟空と同じ)
・ピッコロ:400⇒5000(めっちゃ修行した)
スラコロ:550万
・ターレス:15万
神精樹1個:35万
神精樹3個:75万
【神精樹について】
一度根付いてしまえば成長を止める手段はなく、たとえ超エネルギーをぶつけて樹を焼き払っても、根っこは残り続けるので止めることはできない。
唯一の方法は破壊神による破壊くらいなものだが、残念ながら第7宇宙の破壊神は惑星ごと破壊をするので意味はない。
見るからに甘そうではないので酸味が強い果実なのだろう。
本来は神様しか口にできないものということなので、恐らくは正しい心を持ち神となるにふさわしいが力がないという者に手っ取り早く力を与えるための道具なのかもしれない。
モロが惑星を喰って超絶パワーアップを果たす描写があるが、この強化がターレスと同程度のものとはとても思えない。
そのため、このSSでは神精樹は成長にほとんどのエネルギーを使用され、残ったほんの少しのエネルギーだけが実に注ぎ込まれるという裏設定があったりもする。
【スラッグが同化を勧めた理由】
本編では言っていないが、同化した際に相手を乗っ取れないかと思ったから。
ピッコロさんとスラッグには天と地ほどの戦闘力差があったので、ワンチャンもしかしたら乗っ取れるかもしれないと生存の可能性に賭けた。実に姑息である
トランクスの年齢は?
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原作通り
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悟飯と同い年くらい