ナメック星。
そこは水と緑が豊かな穏やかな惑星だ。
そこに暮らすナメック星人も平和を好む穏やかな種族で、間違ってもピッコロ大魔王のように「世の中を恐怖のどん底に叩き落としてやる!」なんてことは言わないし、スラッグみたいに「この星をクルーザーにしよう!」なんて言わないような平和的な民族である。
そんなナメック星人もかつては絶滅の危機に晒された。
異常気象が起こったのだ。惑星全体にまで広がったそれは水を主食とするナメック星人の多くを死滅させ、多くの命、多くの文明が失われた。
そんな中、ひとり惑星を見捨てず、天変地異かのごとき異常気象を耐え抜き、荒れ果てたナメック星をかつての姿に戻さんと立ち上がったナメック星人がいた。
それが今の最長老。
ナメック星人すべての父、最長老である。
「二度もドラゴンボールを使わせてもらうことになるとは、最長老殿にはなんとも頭が上がりませぬ」
「いいのです。地球から緑が失われてしまったのでしょう? 民の幸せを望む願いなら、私としても本望です」
会話をするのは地球の神と最長老。
2人は旧知の仲というわけではなく、むしろ知り合ってから10年と経っていないのだが、互いに長命なこともあってか話が合ったのだ。
地球の神がナメック星を訪れたのも、地球の問題をわざわざ解決してもらうのだから自らナメック星に赴いた方が筋だと考えてのこと。
……というのは建前で、たまには世間話のひとつもしたくなったから。
なぁに、ブルマが作った最新式の宇宙船を使えば往復3日もかからぬのだ。
ドラゴンボールを集める期間を考えても、地球を留守にするのは1週間程度となる。
それならば問題もあるまいと考えてのことだ。決してサボりではない。決してだ。
しかし、なんと間の悪い…。
ナメック星は二度目の滅亡の危機を迎えようとしていた。
「ほっほっほ……ドラゴンボールですか。これから不老不死を得られると思うと、なんとも胸が躍りますねぇ」
──宇宙の帝王によって。
◆
「私はナメック星へ行ってドラゴンボールを借りてくる。その間、お前たちは界王様のもとでさらなる修業を積むがよい」
ヤムチャ、クリリン、天津飯、餃子の4人はクラッシャー軍団との戦闘を経て己の力不足を再認識した。
結果的に勝つことはできたもののまだまだ十分とは言えなかったのだ。
決定的な地力の差があった。もちろん、それを技や連携で埋めることはできていたが、地力をつけることをサボって良い理由にはならない。
4人はさらなる修業を求めていたのだ。
そんなときに言われたのが界王様のもとでの修行。悟空に界王拳や元気玉を伝授したすごい人っていう話だ。願ったり叶ったりではあるが…
「ドラゴンボール……ということは、地球が受けた被害を修復するために?」
「その通りだ。神精樹こそ無くなったが、受けた被害は無くなってはおらぬからのう。それに、星全体のエネルギーも減っておる。元通りにするにはドラゴンボールに頼るほかあるまい」
神様の故郷であるナメック星。
そこには、地球より強力なドラゴンボールがある。
神様はそれを求めてナメック星へと旅立つのだろう。
しかし、クリリンは別の視点で物事を見ていた。
「神様、良かったらなんですが、オレもナメック星に連れて行ってくれませんか?」
「なに…?」
予想外な言葉に神様も驚く。
クリリンは続きを話す。
「ナメック星にはピッコロみたいに強いナメック星人がいるんでしょう? だったら、そこで修行するのも良いかなと思ったんです。……それに、一度くらいは宇宙に出てみたいとも思ってましたし」
クリリンの一番の親友といえば悟空だ。
その悟空はサイヤ人っていう宇宙人だった。
それを知ったときから少しだけ思っていたのだ。宇宙に行ってみたいと。
もちろん、そこまで強い願望ではない。
ただ興味があっただけだ。将来、一度くらいは行ってみたいと思っていただけに過ぎない。
だが、何の巡りあわせかその機会は訪れた。
ならば行きたいと思うのはなんら不思議なことではない。
「むぅ……しかし、本当にボールを集めるだけだぞ?」
「構いませんよ。ほんの出来心ですから」
「まぁ、よかろう。閻魔様にはそのように話を通しておく」
クリリンのナメック星行きが決定する中、もう一人が声を上げる。
「クリリンが行くってならオレも行かせてもらうぜ」
「ヤムチャさんも?」
「あぁ。実はオレもちょっと気になってたんだ。宇宙人の強さの秘訣を探ってくるのも面白そうじゃないか」
ヤムチャの言葉に天津飯もどうしようかと餃子と顔を見合わせる。
しかし…
「天津飯と餃子の二人は先に界王様の修業を受けててくれ。オレ達も地球に戻り次第合流する。うかうかしてるとすぐに追いついてやるからな」
今まで4人は切磋琢磨し合い修行してきた。
そして、今回もそうだろうと思っていた。
だが、ヤムチャは言ったのだ。
先に修行しておいてくれと。
だから、あっさりと抜かれてくれるなよと。
こんなことを言われて闘志が燃えない武道家はいない。
天津飯はすぐにヤムチャの意図を察すると、勝気な笑みを浮かべた。
「あぁ! お前らが宇宙旅行を楽しんでいる間に、オレ達は先へと行かせてもらう!」
かくして、神様とクリリン、ヤムチャという不思議なメンバーでのナメック星行きが決まったのだった。
そして、それが単なる宇宙旅行にならないことを、まだ知る由もなかった。
「な、なんだこの邪悪な気は…!!」
それは、ドラゴンボールの1つ目として最長老のもとを訪れた時だ。
神様が最長老へと挨拶しているのを尻目に気を探っていたところ、なんと宇宙から接近する邪悪な気に気付いたのだ。
「こ、こりゃあただ事じゃないんじゃないか…?」
距離としてはめちゃくちゃ離れている。
クリリンやヤムチャの気の感知域を遥かに越えた距離だ。
しかし、にも関わらずこれだけハッキリと感じ取ることが出来たのだ。その邪悪な気を。
神様やネイルも気づいているのか、邪悪な気がある方向をじっと見つめる。
最長老も何も発しないものの、嫌な予感は感じ取っているようで
「どうやら、この星に良からぬことを企む者が来てしまったのかもしれませんね。妙な胸騒ぎがします」
と、ぽつりと零したのだった。
最長老はその大きな右腕を椅子の上へと伸ばす。
それから、くいくいと手招きをしたのでヤムチャが近くまで行くと
「このボールはあなた方が持って行ってください。貴方たちの願いが叶うことを願っています」
と言いボールを授けるのだった。
それから、ちょっとでも力になればとヤムチャとクリリンの潜在能力を開放し、強大な敵へと備えることにする。
ヤムチャとクリリンは沸き上がる力に一時有頂天になるも、再び邪悪な気を感じ取ると落ち着きを取り戻す。
「最長老様、絶対にこのボールは守り抜きます」
そう言って、地球の神と共にこの場を去っていくのだった。
一方、最長老は脳裏にもう4年も前のことを思い浮かべていた。
『あなたたちが出会ったのは運命だったのでしょう』
あの時、自分は運命という言葉を使った。
それが正しいのだと、どこか確信めいたものを感じながら話したのだ。
運命とは変えられない事象を指す。
未来のことなのに、既に決まっていて避けようのないこと。それを運命と呼ぶ。
「ナメック星が滅ぶのもまた運命なのでしょうか…?」
脳裏に荒れ果てたナメックの地を浮かべながら、虚しく言葉を零した。
◆
そして、その知らせはブルマのもとへも届いた。
宇宙船には緊急用の連絡機も取り付けてあるのだ。宇宙船の不具合などが生じた際にすぐにブルマに連絡できるよう付けられていたのが、功を奏した。
「ねぇ! その邪悪な気を持つ宇宙人ってもしかしてフリーザってやつじゃないでしょうね?」
「さ、さあ…? 名前までは…。オレ達が分かるのは、悟空やベジータを上回るとんでもなく邪悪な気と、変わった円盤状の宇宙船に乗ってることくらいで…」
「円盤状の宇宙船…? ねぇ! ベジータ! ちょっと!」
そう言って慌ただしく席を立ちあがり駆けていくブルマ。
どたどたとした足音が聞こえてくる。そんな音まで拾わなくていいのに……ちょっと高性能過ぎじゃないだろうか?
「おい、円盤状の宇宙船がナメック星に来たと言うのは本当か?」
ややあってベジータの声が聞こえてくる。
焦りを含んでいる気がするのは気のせいだろうか?
「あ、あぁ。チラッと見ただけだけど、ベジータが着てる服に似たのを着た宇宙人が何人もいた」
「ちっ、クソッタレが! フリーザの奴め、不死身のカラクリに勘付きやがったな…!」
今まで見たことがないほどに取り乱すベジータ。
ブルマも「そんな…」と声を震わせている。
フリーザのことを詳しく知らないクリリンとヤムチャはいまいち状況が掴めない。
「おい聞け! フリーザの奴にはどう足掻いても勝つことはできん! 万が一にでもフリーザが願いを叶えるようなことがあればそれこそ宇宙の終わりだ! 今すぐ持っているドラゴンボールを破壊するんだ!」
「えっ、そ、それはいくら何でも……」
「さっさとせんと取り返しのつかんことになるのが分からんのか! 感じただろう! ヤツの恐ろしい気を!」
ベジータの言葉にクリリンとヤムチャは顔を見合わせる。
近くでは地球の神が苦い顔を隠せずにいた。
「ど、どうする…?」
「どうするって言われてもなぁ…」
ベジータの言う通り、壊してしまうのが最もいいのだろう。
そうすれば、そのフリーザってやつはドラゴンボールを絶対に揃えられなくなるから、願いを叶えることは無くなる。
しかし、そうしてしまえば自分たちが願いを叶えることもできなくなる。
「なぁ、今回のことで地球が受けたダメージも大きいんだ。死んでしまった人だってたくさんいる」
「だから何だと言うんだ。もしもフリーザに地球にもドラゴンボールがあることがバレたら、それこそ一巻の終わりだというのが分からんのか?」
「そ、それは…」
「お前たちのやることは2つだ。1つはドラゴンボールを今すぐに破壊し使えなくすること。そしてもう1つはフリーザに勘付かれんようにいち早くその星を脱出することだ。そこにいるナメック星人が生きてさえいれば、1年後にでも死人を生き返らせることはできる」
ベジータの言っていることはもっともであった。
無理して今願いを叶える必要はない。わざわざ危険を冒す必要はないのだ。地球にもドラゴンボールがあるのだから。
「し、しかし、それでは多くのナメック星人が殺されて…」
「そんなことはオレの知ったことか。とにかく、フリーザの願いを阻止することが先決だ。ごちゃごちゃ言っている場合ではなかろう?」
しかしそれは今生きているナメック星人を見捨てるということ。
奴らはドラゴンボールを捜して、すべてのナメック星人を殺すまで諦めないだろう。
「か、帰ろうか?」
「クリリン…」
「いや、たしかにナメック星人の人たちには悪いけどさ、それだって後からドラゴンボールで生き返らせれば何とかなるだろ? オレ達まで死んじゃったら元も子もないし」
見捨てるのは心苦しい。
本当ならば今すぐにでも殴り込みに行きたい。
しかし、どう足掻いても勝てないのだ。だから、逃げるしかない。
(本当に、この道しかないのか…?)
気持ちだけではどうにもならない。
力がなければどうにもならない時がある。
それを、嫌というほどヤムチャは分かっている。
しかし、理解と納得は違うのだ。
気持ちと理性はいつも同じ方向を向いてくれるとは限らない。
「帰ることはないぞ。クリリンにヤムチャ」
決断に苦しむヤムチャの耳に届いたのはラディッツの声だった。
「ベジータ、お前の言うほど悠長にしている時間はないようだ」
「なに?」
「これを聞け」
そうしてラディッツは緑色のスカウターを取り出す。
そして、何度かボタンをカチカチッと押すと
『神様、神精樹で壊れた街や死んでしまった人を生き返らせてやりたいんだけど…』
『……ムリだな。ドラゴンボールは既に使われておる』
『あちゃ~、1年もお預けってわけか~』
『……仕方あるまい。ナメック星のドラゴンボールを借りるほかないだろう』
『ナメック星…?』
『そうだ。私の故郷の星になる。地球のものより強力なドラゴンボールがあるんだ』
『へ~』
「──というわけだ。オレの声がスカウターの履歴に残っていたらまずいと思い調べていたらこれだ。おそらくフリーザはこの通信を聞いたんだろう」
「おのれカカロットめ! 油断しやがったな! よりによってフリーザにドラゴンボールの情報を…!! これではナメック星で願いを叶えられなかった場合、フリーザは地球に来てしまうではないか!」
「あまり怒ってやるなベジータ。カカロットもわざとやったわけじゃないんだ」
「ええい黙れ! 弟に似てお前も甘いのだ、ラディッツ!」
暴走機関車のごとく怒るベジータをブルマが羽交い絞めにする。
ややあって冷静さを取り戻したベジータは大きく息を吐くと、サイヤ人らしく好戦的に笑い
「チッ……どうやらやるしかないようだな。オレ達がフリーザを倒すしか生き残る道はないということだ」
ベジータは戦闘服の手袋をぎゅっと伸ばし手を握り締める。
その姿をブルマは不安げな面持ちで見つめていた。
ヤムチャがクリリンについていくことにしたのは、蛇の道を一人で走るクリリンの姿を想像して同情したから。彼は仲間想いなイケメンなのです。
【ラディッツが気づかなかった世界線】
1年後くらいにフリーザ軍が来襲してフリーザたちと戦う。
この場合、ナメック星人は全滅し、何処でドラゴンボールのことがバレたのか知ることはない。
ナメック星人が蘇ることは無くなり、今後ナメック星人がドラゴンボールで生き返ることもない。
また、地球で戦っているので万が一にもヤードラット星へ行くことがなくなり、瞬間移動やスピリットの強制分離などの技の習得が不可能に。
その後の展開で苦しくなるのはまず間違いなく、迫りくる絶望の未来に対抗するには戦力不足になる恐れが高い。
よって、ラディッツが気づいてナメック星に行った方が後々良い。
よくやったぞ、臆病ラディッツ!
感想、高評価お待ちしております!
モチベが爆上がりします。
トランクスの年齢は?
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原作通り
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悟飯と同い年くらい