ブルマ「ステキな恋人が欲しい!」   作:フェレーデ

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SSの面白さは想定外と納得感にこそあると思うのです


05:真実①

(オレとしたことが迂闊だったぜ。不死身になることに浮かれて、肝心なことを忘れていた……)

 

 ブルマの指摘を聞いたベジータは珍しく、本当に珍しく自らの甘さを認めていた。

 不老不死になれば成長が止まり、さらには戦闘力がこれ以上あがらなくなる危険性がある。

 その指摘はごもっともで、不老不死になることばかりに目がいってしまい、そのデメリットまでもを考慮することができていなかった。

 

 少なくとも体格が成長しないのは困る。

 不老不死になるのだから姿形が変わらんのは当然だ。

 最悪の場合ドラゴンボールに身長を伸ばしてくれとでも頼めばいいのだろうが、ベジータはそんなバカらしい願いをするつもりはない。

 周りの目が気になるからとかではなくプライドの問題だ。

 そんなくだらないことを願う気はない。

 

 ともかく、不死身の願いは延期だ。

 ある程度身体が成長して戦闘力が身につくまでは願わない方が身のためである。

 十分な戦闘力を身につけ反旗を翻す準備を整えたら……そのときは、ドラゴンボールに願って不死身になればいい。

 悔しいが、フリーザに勝つには不死身は必須だろう。

 奴を倒すにはそれこそ超サイヤ人にでもならんと無理だ。

 そして、オレは未だにその領域に至れていない。その確信があった。

 

 その後は、ベジータはぼんやりとした様子で試合を見ていた。

 どいつもこいつもベジータから見れば遊戯にしか見えんほどの試合ではあるが、ひとつ気になったのはアックマンとやらのアクマイト光線という技だ。

 心の内に秘めている悪の気を増幅させて爆発させるというふざけた技だが、これを使えばもしやフリーザを倒せるんではなかろうか?

 奴こそ悪の権化のようなものだ。

 命中さえすれば触れた瞬間に大爆発を引き起こしてもなんら不思議ではない。

 

(……いや、効かんだろうな)

 

 そして、一瞬浮かんだその希望的観測をベジータは否定する。

 奴にそんな小細工は通用しないだろう。たったそれだけで倒せるのならヤツは宇宙の帝王などとは呼ばれていない。

 数は少ないが初見殺しの奇妙な技を使う宇宙人は確かにいるのだ。奴らがフリーザに一度も攻撃を仕掛けたことがないなんてことはないはずだ

 となれば、フリーザにはそうした技が効かないのだろう。

 圧倒的な戦闘力差があるが故に、小手先の技では倒すことはできない。

 

 そんなことを考えている内にどうやら試合は終わったようだ。

 1番手のクリリンと2番手のヤムチャは無様にやられていたが、3番手の孫悟空とかいう奴がすべて倒してしまった。

 相手側の最後に出てきた選手はお面をかぶった変なじいさんだったが、その実力はベジータはもちろんのこと孫悟空にも及ばない。

 地球人にしては大した力を持っているようだが、やはりどれだけ鍛えてもサイヤ人の下級戦士にすら敵わないのだろう。

 

「……」

 

 ふと、気になった。

 あの孫悟空とかいう奴は何故あんな性格になったのか。

 サイヤ人は宇宙レベルで見ても冷酷で残忍だ。他種族との共生など基本的にできず、常に血と闘争を求めるが故に単一種族で生活するのが普通だ。

 その冷酷さと残忍さは教育によって身につけるものではなく、本能として備えているもの。

 種族としてそうした血が流れているため、程度の差はあれど誰かを殺すのに躊躇いなど覚える方が異端であり、奴のように穏やかな性格になることはまずありえない。

 さっきのアックマンという奴の技を受けてケロッとしていたのも奇妙だ。

 サイヤ人の本能を持っているのなら悪の気などいくらでもあるはずだ。一切存在しないなんてことはあり得るはずがない。

 奴は飛ばし子だ。

 言葉を教える際に惑星の住人を皆殺しにするよう教えられたはず。

 にもかかわらず、奴はそんなことは知らんとばかりに惑星の住人と仲良くしており、滅ぼそうとする意志は一切見えない。

 

 サイヤ人らしからぬ穏やかで甘い性格。

 サイヤ人らしい好戦的で負けず嫌いな性格。

 ベジータにとって、孫悟空という存在はとても歪であった。

 

「じいちゃーーーん!!」

 

 思考の海に沈んでいたベジータは、悟空の一声によりハッとする。

 いきなり大声を上げて何事かと思えば、孫悟空が目じりに涙を浮かべながら試合相手のじいさんに抱き着いていたのだ。

 

「何事だ?」

「なぁに、あんた試合見てなかったの? 孫悟飯よ。孫くんのことを育ててくれたお爺さん」

 

 育てた、ということは地球に降り立った宇宙ポッドから拾い上げて育てたということか。

 悟空という名前も付けていることから息子のように育てたのだろうか?

 しかし、純粋なサイヤ人が地球人程度に手懐けられるとは思えん。

 どんな教育をしようとも本能だけは変えられんのだ。

 

「おい爺さん」

「ん? ワシか?」

「そうだ。お前に聞きたいことがある」

 

 ベジータは無遠慮に尋ねる。

 礼儀のなってない態度にブルマは眉を顰めるが、孫悟飯は気にした様子を見せない。

 

「そこの孫悟空という奴を宇宙船から拾い上げたのは間違いないか?」

「宇宙船…? 培養器のようなものに入っていたが…」

「そうだ、それが宇宙船だ。オレとそこにいる孫悟空とかいう奴は地球人ではない。ここから遠く離れた場所にあった惑星ベジータ出生のサイヤ人だ」

「な、なんと…」

 

 ベジータの言に衝撃を受ける孫悟飯。

 自分の育て子が実は宇宙人だと聞かされて驚くなというのが無理な話である。

 

「まさか悟空が宇宙人とは……確かにシッポがある変わった子供だとは思っておったが」

「サイヤ人には生まれつきシッポがあるんだ。奴を育てたのなら一度くらい見たことがあるだろう、満月の夜に大猿へと変身するのを」

「っ…!?」

 

 この言葉に大猿化の事情を知っているブルマ、ヤムチャ、亀仙人は大慌てである。

 話についていけずに首をかしげる悟空を言葉巧みに誤魔化し、なんとか真実を知らせないように動いたのだ。

 その様子をベジータはチラリと一瞥するとすぐに興味を失い顔を背け、孫悟飯は少し気まずそうに顔を引きつらせていた。

 何を隠そう孫悟飯の死因は大猿と化した悟空に踏み潰されたことなのだ。

 それを隠そうと奮闘しているかつての師や悟空の仲間を見るのは少しどころかかなり気まずい。

 

「奴のシッポはこの前奴が大猿になったときにこのオレが切ってやった。じきに生えてくるだろう」

「大猿になった悟空のシッポを…。そうか、お主悟空より強いのか」

「当然だ」

「ほっほっほ、悟空もいいライバルを持ったようで何よりじゃ」

「ライバルだと…?」

 

 ライバル?

 あの下級戦士がライバルだと?

 ベジータは心の中でそれはないなと一蹴した。

 そして、これ以上無駄話を続ける気もないのでさっさと本題に入ることにする。

 

「オレが聞きたいのは奴の性格についてだ。幼い頃に頭を打ったことはないか?」

「悟空が…? ええ、ありますとも。どうにも手を付けられない暴れん坊だったもので、散歩の途中に崖から落っことしてしまって」

「ふん、なるほどな。どおりであんな腑抜けた性格になるわけだ」

 

 サイヤ人は生後間もなくの間は培養器や育児カプセルに入れられる。

 というのも、幼少期のサイヤ人は頭の衝撃に弱く、強く頭を打ってしまうと言語機能や記憶領域の発達障害が出たり、まるで別人のように性格がガラッと変わったりしてしまうためだ。

 飛ばし子の場合も例外ではない。

 ある程度自我が成長するまでは育児カプセルで成長を待ち、言葉や使命を教えてから星に送り込む。

 そのため、通常であれば頭を打って性格が変わるなどありえない。

 そう、通常であれば。

 

「……奴を拾った時は歳はいくつだった?」

「さあ、正確な歳は…。赤ん坊だったので1歳くらいでは?」

「1歳か…」

 

 ……おかしい。

 そんな歳のサイヤ人の子供を惑星に送り込むなど許されるはずがない。

 下級戦士とはいえ、敵となれば脅威になるのは間違いないのだ。飛ばし子の場合はしっかり言葉を教え使命を刷り込んでからでないと許可されない。

 許可を取らずに飛ばし子として送り出したか、それとも単に捨てられたか、あるいは──

 

(そうせざるを得ない事情があったか…)

 

 今の奴の歳は13歳ほど。

 奴の出生は惑星ベジータに巨大隕石が衝突して消滅した年と重なる。

 惑星が崩壊するほどの巨大隕石の接近に誰一人気付かないなんてことがあるわけがない。

 気付いた誰かが奴を辺境の星に飛ばした?

 だとしても、そんなことをするくらいなら赤ん坊ではなく成人したサイヤ人に知らせて宇宙船で逃げればよかったのだ。

 惑星の危機に気付いたのが奴の両親ならば我が子可愛さに逃がすのも理解できるが、それでも同行して地球に来ていないのは何かがおかしい。

 幼少期のサイヤ人を一人放っておくとろくなことがないのだ。

 実際、あの孫悟空とかいう奴は惑星ベジータのことも、自身がサイヤ人であることも忘れて、地球人と思い込み生活していた。

 

「……」

 

 何か、引っかかる。

 ベジータの脳内に疑問が浮かんで離れない。

 普段ならばこんなことは考えもしないが、不死身の願いが延期になったことで地球にいる期間が長くなってしまい、気まぐれに妙なことを疑問に思ってしまったのだ。

 

「じいちゃんいつの間に生き返ったんだ?」

「いいや生き返ったわけではない。ババ様に頼んで1日だけ悟空に会いに来たのじゃよ」

「会いに来た…?」

「武天老師さまの姉上である占いババ様は自在にあの世とこの世を行き来できなさるのじゃ。そして、あの世から死んだ武術の達人をスカウトしてきてここでこうやって試合をして働かせてくださるわけじゃ。高い給料でな」

 

「あの世から……だと?」

 

 サラッと言われたあの世から人を連れてくるという言葉にベジータはピクリと反応する。

 

「爺さん、貴様死んでいるのか?」

「え、ええ。このように頭に天使の輪っかも浮かんでいるでしょう?」

 

 見ると、確かに天使のような輪っかが浮かんでいる。

 変な飾りかと思っていたが、どうやらアレが死んでいることの証らしい。

 

「占いばあさんとやら、1つ聞きたいことがある」

「占いババじゃ! ……で、なんじゃ?」

「あの世からなら誰でも連れてくることができるのか?」

「出来るぞい。ただし、まだ転生しとらん者に限るがのう」

「よし、だったら──」

 

 ベジータは突然悟空の方を指をさす。

 そして、とんでもないことを言ってのけるのだった。

 

「──こいつの母親と父親を連れてくるんだ。ベジータ王子が聞きたいことがあるっていえば大人しくついてくるはずだぜ」




【地球の7不思議】
一. カプセル技術
二. 仙豆
三. ドラゴンボール
四. 占いババの占い
五. あの世の人を連れてくる
六. 人造人間製造技術
七. やたら食べ物が美味い


次回はしばらく期間が空きます。
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