ブルマ「ステキな恋人が欲しい!」   作:フェレーデ

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ルーキーランキング1位、日間ランキング8位になりました!
これもご一読してくださった皆様のおかげです。
超感謝。

これだけ言いたかったので1話だけ書いて投下することにします。
お気に入り、評価、コメントくださった皆様ありがとうございます。
ここまで伸びると思っていなかった著作ですが、温かく見守ってくれると励みになります。


07:ギネ①

 それは、レストランでの食事中のこと。

 悟空はともかくギネまでものすごい勢いで食事を平らげる姿に一同が目を点にする中、ブルマだけは慣れた様子で「じゃんじゃん持ってきて~♪」とウェイターに次々と注文していた。

 広いダイニングに一団体の客しか来ていないにも関わらず、まるで満員の客がいるときのように忙しなくウェイターたちが動き回り、次々と厨房から料理を運び込み、次々と厨房へと積み上がる皿の山を運び出す。

 コックたちも数人がかりで料理を作ることでなんとか供給を間に合わせており、和洋中とジャンルの異なる料理を手早く作り上げていた。

 

 既にお腹いっぱいになったクリリンは「相変わらずよく食べるなぁ」と悟空を見て笑い、ヤムチャは「華奢な身体してるのに悟空と同じくらい食べるんだもんなぁ」とギネを見つめていた。

 ちなみに、ギネに擦り寄ろうとした亀仙人はブルマに容赦なく鉄拳制裁され大きなたんこぶを作っていた。南無阿弥陀仏…。

 

「ぷは~~! 食った食った!」

 

 やがて食べ終えた悟空が満腹感に酔いしれ腹をさすっていると

 

「カカロット」

「ん? オラか?」

「そうだよ。ちょっとおいで」

 

 ギネは悟空に手招きをすると、寄ってきた悟空をひょいと持ち上げそのまま膝に抱きかかえ座らせる。

 そして、その特徴的なハネのある髪型に触れると、深い慈しみを込めた表情で優しく撫で始めたのだ。

 

「なんかくすぐったいぞ」

「本当かい? そりゃあ悪かったね。どの辺がくすぐったいんだい?」

「いや、そうじゃねえ。頭じゃなくてこのあたりが…」

 

 そうして、自分の胸のあたりを指し示す悟空。

 頭に疑問符を浮かべながら、自分でもよくわかってない様子で

 

「なんか変な感じだ。むずむずするぞ」

「はっはっはっ! カカロット、もしかして恥ずかしいのかい?」

「恥ずかしい…? オラ、よく分かんねえけど……なんか、心地いいぞぉ」

 

 いっぱい食べて眠くなったのだろう。

 大きくあくびをして目尻をこする悟空に、ギネは「眠いなら寝ていいよ」と一言いい、悟空もそんな母に甘えるように擦り寄り、やがてすやすやと寝息を立て始めた。

 

 どこまでも強い悟空は人に甘えることなんてないと思っていた。

 だけど、育ての父に涙を浮かべて抱き着いたり、実の母に幼い子供のように擦り寄る姿を見ていると、悟空も子供だったんだと思わされる。

 ブルマはそこに親子関係の理想形を見た気がした。

 生き別れのような関係でも、母が子を想う気持ちは伝わるのだ。

 たとえ悟空自身が母親の顔も名前も何もかも覚えていなかったとしても、本当に子を想う気持ちがあれば母の気持ちは伝わる。

 恋や愛に憧れはあったがよく分からなかった。

 よく分からないまま、なんてロマンチックなんだと思い、欲しい欲しいと我武者羅に求めていた。

 でも、実物を見たからよく分かる。

 あれが、愛のカタチだ。

 

(わたしも──)

 

 欲しいと思った。

 なりたいと思った。

 心の底から自分もあんな風になれたらと。

 そう願って止まなくなった。

 

「ねえギネさん、旦那さんとはどんな風に出会ったの?」

「私のかい…?」

 

 どうしてそんなこと聞くんだいといった様子で頭に疑問符を浮かべ小首を傾げるギネに、ヤムチャやクリリン、亀仙人までもが追随して聞きたいと言ってくる。

 そうか、地球ではこれが普通なのかと。

 文化の違いをなんとなく理解したギネは昔話でもするような気持ちで、バーダックとの馴れ初めを語るのだった。

 

「私は旦那と同じチームに所属してたんだ。サイヤ人らしく、一緒に惑星の住民を滅ぼしてた」

 

 そして、いきなりお出しされた惑星の住民を滅ぼすというワードで思い出す。

 ギネはサイヤ人であったと。

 

「でもさ、私はどうも甘くって…。命乞いとかされたりするとどうにも非情に成り切れなくってね。隙をつかれてピンチになることが何度もあったんだ」

 

 サイヤ人は本来相手を殺すことに躊躇いを覚えない。

 快感を覚えるとまではいかないが、戦闘が好きであるがゆえに相手を殺すことも自分が殺されることも戦闘の一環として捉えてしまう。

 別に、ベジータが特別残忍な性格をしているわけではないのだ。

 種族として、そういう本能を持って生まれてきている。

 

「でも、ピンチのたびにバーダック──私の旦那が助けてくれてね。何度も命を助けられている内に、私はアイツに惹かれていったんだ」

 

 話を終えたギネはすやすやと寝息を立てる悟空を撫でる。

 

「この子は父親そっくりだよ。特に特徴的な髪のハネとかね。だから、一目見て分かったんだ。この子がカカロットで間違いないって」

 

 この場にいる誰もが結婚を経験していないので、子供を持った母親の気持ちを想像することはできない。

 だけど、ブルマはギネのような素晴らしい家庭を持ちたいという気持ちがより一層強まったし、最近は女遊びが激しいヤムチャもギネのような関係を羨ましいと思った。

 クリリンはまだ子供なのもあって、漠然と結婚に憧れる気持ちはあるものの、まずは彼女を作るところからかなとふと視線を逸らし──そこで、偶然キラリと光るドラゴンボールが目に入った。

 ベジータが願いを叶えないならと悟空が四星球だけ貰って、持ち歩いていたのだ。

 確か、残りのボールはブルマさんが預かってるって言ってたはず。

 

「悟空のお母さん、もし良かったらなんですけど…」

「なんだい?」

「ドラゴンボールで生き返って悟空と一緒に暮らしませんか?」

「生き返る…?」

 

 クリリンの急な言葉に理解が追いつかないギネ。

 その言葉に真っ先に飛びついたのはブルマだった。

 

「クリリンくんナイスアイディア! ギネさんが生き返ったら孫くんもきっと喜ぶわ!」

「そうだな。神龍に頼めば、死人を生き返らせることだってできるはずだ」

「しぇんろん…? 何のことを言ってるんだい?」

 

 何のことか分からない様子のギネにブルマ達は説明する。

 地球には、どんな願いでも一つだけ叶えるドラゴンボールがあるのだと。

 そして、ソレに願えば死人すらも生き返らせることがきっとできるだろうと。

 

 しかし──

 

「──いいよ、私は遠慮しておく」

「「「えぇ!?」」」

 

 遠慮がちにギネは断る。

 

「どうして、生き返れるのよ?」

「悟空と暮らせるのに?」

「それはそうなんだけどさ…」

 

 すると、ギネはふいと視線を逸らして少し言いづらそうにしながら

 

「地獄にね、私の仲間がいるんだよ。同じチームのね。あいつらを置いて、私だけ生き返るなんてことできない」

 

 確かにサイヤ人は悪人だろう。

 惑星を制圧し現地民を滅ぼすのは悪魔と言われても仕方がない。

 だが、それでもギネにとっては仲間なのだ。ともに、苦楽を共にしてきた仲間。

 それを地獄において、自分だけ抜け出すなんて都合のいいこと、できるわけがない。

 

「それに、まだ旦那も見つけられてないんだ」

「旦那さんって……サイヤ人の?」

「うん。惑星(ほし)が滅んだときに一緒に死んだはずなんだけどね。地獄中どこを探しても見つからないんだ。もう10年以上探してる」

「10年…」

 

 途方もない時間だとブルマは思った。

 それと同時にその旦那さんを少し羨ましく思う。

 

「死ぬときも一緒だって約束してたのに、いったいどこに行ったのか」

 

 地球へカカロットを飛ばしたあと、ギネはバーダックと約束を交わしていた。

 これから惑星ベジータが滅びようとも、そのときは一緒だと。

 しかし、いざ死んで地獄に落ちた後、そこにバーダックの姿はなかった。

 かつての仲間達や一緒に滅びたサイヤ人たち、フリーザ軍の兵士などは地獄にいるのに、バーダックだけ見つけられなかった。

 

「生き返らないのはやっぱりそれが一番の理由?」

「……そうだね。仲間やカカロットのことも大事だけどさ、やっぱり私にとっては旦那のことが一番大事なんだ。カカロットのことは心配してたけど、これからも元気にやっていけそうだし」

 

 カカロットの姿を実際に見て、この子は大丈夫だと思った。

 言葉も教えずに飛ばしてしまったからどうなることかと思っていたが、仲間に恵まれたようだ。

 私がいなくともこの子は楽しく生きていけるだろう。

 

(バーダック…)

 

 本当に、何処に行ってしまったのか。

 このままでは一向に見つからないのではないかと思えてくる。

 

「だったら、神龍に頼んじゃえばいいじゃない!」

「えぇ!?」

「そうじゃな。神龍ならば、行方知れずの旦那も見つけてくれるじゃろう」

「で、でも……悪いよ。だって、そのボールはベジータ王子が集めたんだろう?」

「いいのよ。叶えたい願いがあったみたいだけど、どうやらしばらくは使うつもりがなくなったらしいし」

 

 遠慮するギネをよそにブルマ達は外へと出る。

 ギネも悟空を背負って一同を追いかけ、やがて少し開けた広場にまでやってくると、そこでは既に7つ揃ったドラゴンボールが地面に転がされていた。

 赤い星の入ったオレンジの球が7つ。

 それぞれが共鳴するように神々しく光を放っていた。

 

「出でよ神龍! そして願いを叶えたまえ!」

 

 夜でもないのに空が暗くなり、ドラゴンボールから光の柱が伸びる。

 次第に光の柱は実体を持ったものとなり、大猿よりもずっと大きな神の龍が降臨した。

 

「さあ、願いを言え。どんな願いも一つだけ叶えてやろう」

 

 これには流石のギネも気圧される。

 戦闘力とは異なる、圧のようなものがこの龍にはある。

 

「ここにいるギネさんの旦那さんが何処にいるか教えてちょうだい」

 

 容易い願いだ、とは言わない。

 ブルマの願いに神龍はただでさえ紅い瞳をさらに赤く光らせていたが、やがて──

 

「──この世にもあの世にもそんな者は存在せぬ」

「「えっ」」

「願いは無効だ。別の願いを言うがいい」

 

 まさかの存在しないとの回答。

 思わずといった様子で、ギネは一歩前に躍り出て

 

「ほ、本当に…! 本当に、あの世に存在してないのかい?」

「本当だ。天国にも地獄にも存在していない。閻魔大王が転生させたわけでもないようだ。行方は我にも分からぬ」

 

 その言葉にギネは衝撃を隠せない。

 まさか、ずっと探していた旦那が存在していないなんて…。

 でも、だとしたらいったい何処に?

 あのとき、惑星ベジータとともに滅びたはずのバーダックはいったいどこに行ったというんだ?

 

「ねえ、そのバーダックって人をここに連れてくることはできないの?」

「不可能だ。存在していない者を連れてくることはできない」

「何処に消えたかはちっとも分からんのか?」

「分からぬ。その者の足取りは惑星ベジータ崩壊の瞬間にこの世からもあの世からも消えている」

 

 何とか情報を引き出せないかとブルマや亀仙人が質問するが、得られる情報は皆無であった。

 

「どうした、他に願いはないのか?」

「だったら──」

 

 他の願いを催促する神龍にギネは再び前に躍り出る。

 そして……

 

「だったら、私を生き返らせておくれ!」

「容易いことだ」

 

 神龍の目が赤く光る。

 すると、ギネの頭上にあった光輪がふっと音もなく消える。

 思わず亀仙人が「消えおった…」と呟く中、ギネは少しバツが悪そうな顔をして

 

「バーダックがあの世にいないっていうなら、私も生き返って探すことにするよ。仲間達には……また死んだときにでも謝っておく」

 

 サイヤ人の刑期は数百年はある。

 また死んだら会えるという確信があった。

 そして、どこにいるかも分からないバーダックを何が何でも見つけ出して、寿命が尽きるまで一緒に暮らして……そしていつか死んだときは、地獄にいる仲間たちにもう一度会いに行こうって思った。

 私を置いてどっかに消えてしまうなんて許せない。

 必ず見つけ出して、いつかは一緒に地獄に落ちて、そしてみんなの前に突き出してやるんだ。きっとそれで仲間たちも許してくれるだろう。

 

「願いは叶えてやった。バラバラになった服と肉体は元通りにしておいた。地球の神からの餞別だ」

「餞別…?」

 

 はて、とギネは頭に疑問符を浮かべる。

 地球の神には現世に戻る際に会ったため面識はある。

 しかし、餞別を受けるようなことをした覚えはないのだが……

 

「出生を教えてもらった礼だ」

「出生って……あぁ! もしかして知らなかったのかい?」

「そうだ。直接会って礼が言いたいとも言っていた」

「分かったよ。私もこうして生き返らせてもらったんだ。お礼を言いに行くさ」

「伝言はすべて伝えた。では、さらばだ!」

 

 そう言うと、神龍は金色の光へと姿を変え天へと昇る。

 それに呼応するようにドラゴンボールも規則正しく回転しながら天へと昇ると、光と化した神龍がそれぞれのボールに吸い込まれるようにして収まり、まるで弾けるような速さでバラバラに飛び散るのだった。

 

「お、おぬし……」

 

 未だに神龍の消えた空を眺めるギネに亀仙人がおずおずといった様子で話しかける。

 

「会ったのか、地球の神に」

「ああ、会ったよ」

 

 あっけらかんとした様子でギネは言葉を返す。

 

「どうやら私を地球に呼び出すのに結構手間が掛かったらしいんだよね。魂ってやつをこっちに呼び寄せたり、死んだままでも現世にいられるように仮の肉体を作ったりさ。そうした作業を一手に引き受けてくれたのが地球の神様なんだ」

「な、なるほどのう…」

 

 以前、亀仙人はカリン様に神様の顔を見たら驚くと言われたことがあった。

 超聖水の壺を取れずにむしゃくしゃしていたのもあって、だったら今すぐにでも会わせて欲しいとせがんだら、お前には100年早いと一蹴されてしまった。

 結局、それから100年以上たったが地球の神に会うことはなく…。

 あれはカリン様が気まぐれについた嘘だったのではないかと思っていたところで、ひょんなところから地球の神の名が出てきたのだ。

 

「どうやらその神様は自分のことを魔族…? と勘違いしてたみたいなんだけど、私は一目見てすぐに気づいたんだ。ナメック星人だって」

「なめっくせいじん…?」

「そう。彼らは魔法使いみたいな能力を持っていると噂で聞いたことがあるんだ。死者を生き返らせる術を持っていると聞いたこともある。私を地球に連れてこられたのも、彼がナメック星人だったからじゃないかな?」

 

 亀仙人は意外にもギネの話をすんなりと受け入れていた。

 事前に悟空が宇宙人であることや、惑星を破壊できるような宇宙人がいるということを聞かされていたからだろう。

 魔法使いのような力を持った宇宙人がいると言われても、素直にそういう種族もいるのかと宇宙の広さに脱帽するのだった。

 

「まあまあ、難しい話はこれくらいにしてさ…」

 

 ギネはくるりと回りみんなの前に向き直ると

 

「これからよろしく頼むよ!」

 

 そう言って、二ッと優しく笑うのだった。




【ギネが生き返ることができることの証明】
 問題となってくるのはドラゴンボールで生き返らせられるのは1年前に死んだ者までというルール。
 ただ、復活のFにおいてはそれを無視してフリーザが生き返るという緊急事態が起こっている。
 これは、設定変更により「魂があの世にありさえすれば生き返ることは可能」となったと考えるのが自然。
 惑星の住人を皆殺しにするなんていうことをやっていたサイヤ人の刑期は当然長いため、地獄に魂があるはず。バーダックっチームに所属していたギネも例外ではない。
 よってギネは生き返ることができる。

 Q.E.D


【ギネが地球のドラゴンボールの制限に引っかかった場合のif】

「だったら、私を生き返らせておくれ!」
「それはムリな願いだ」
「えぇー! なんでよ!」
「死亡から1年以上たった者は生き返らせることができぬ。よってこの願いは無効だ」
「どんな願いを叶えるっていったくせに! 神龍のケチ!」

 ブルマが神龍をぼろくそに罵倒する中、生き返る意思を固めたギネは何とかできないかと必死に思考を巡らせ、そういえばと地球の神がナメック星人だったことを思い出す。
 だとしたら、ドラゴンボールを作ったのもあのナメック星人…?
 ナメック星人は魔法使いのような能力を持っていると見聞きしたことを思い出しながら、神龍に次の願いを告げる。

「ねぇ! ナメック星にもドラゴンボールがあるの?」
「ある。あるかというのがお前の願いか?」
「そうじゃないよ。だったら、私をナメック星に飛ばしておくれ!」
「容易いことだ」

 その後、ナメック星に降り立ったギネはナメック星人の長老たちが課す試練を次々と突破し、みごと願いを叶えてもらうのだった。
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