ブルマ「ステキな恋人が欲しい!」   作:フェレーデ

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08:ギネ②

 あの日からしばらくベジータは帰ってこなかった。

 次の日も、また次の日も……。

 

 そして、5日ほど経ったころに何てことない顔して帰ってきたと思ったら、ピリピリした様子で重力室に入っていき、いつものようにトレーニングを始めた。

 しかし、いつもだったら1時間は出てこないところを30分も経たないうちには出てきて、重力の上限を上げて欲しいと要求してきた。

 

「上げるってどのくらい?」

「300倍だ。今のままでは修行にならん」

「そんな無茶苦茶な…。ベジータくんが体重60キロだとしたら、18トンにもなるんだぞい」

 

 その場にいたブリーフ博士が無茶苦茶だというが、ベジータは聞く耳を持たない。

 たかが今の3倍だと言って押し通そうとする。

 

「あんた、背が伸びなくなるわよ」

「なに?!」

「成長期なんでしょ? あんな部屋にばかり籠ってたら、伸びるものも伸びないわ」

 

 ベジータは成長が遅くなかなか背が伸びないことを気にしている。

 それを知っているブルマはなんとか思いとどまってくれないかと画策するが

 

「ふん、そんなことを気にするより前に、オレは強くならねばならん。あの野郎をぶっ殺せるくらいにな…」

 

 ベジータは鼻で笑って一蹴する。

 両の拳をぎゅっと握りしめ強い意志のこもった瞳をしている。

 あぁダメだ、止められない。

 直感的にブルマはそう思った。

 

「どうしても、あのフリーザってのを倒したいわけね」

「そうだ。あの野郎はこの手でぶっ倒してやらんと気が治まらん」

「いいわ、手伝ってあげる」

 

 だから、ブルマは止めるのをやめた。

 徹底的にベジータの背中を押すことに決めたのだ。

 支援する、なんて生温い。

 ジッと見ているだけは性に合わないのだ。

 ベジータに対抗できるような最強の兵器を作って、けちょんけちょんに打ち負かして、そしてこの程度じゃそのフリーザってのに敵わないわよって言ってやるのだ。

 

「感謝しなさいよ。この天才ブルマ様が付きっきりで修行を手伝ってあげるんだから…!」

 

 何故そんなことをしたのか。

 この時のブルマはよく分かっておらず、ただただ感情に突き動かされて動いただけだった。

 そして、よく分からないまま殺人級の兵器を次々と作り上げた。

 

 ブルマは天才であった。

 カプセル技術を開発した父であるブリーフの天才性をそのまま引き継いだ、紛れもない天才。

 この場では誰も知らぬことではあるが、原作においてはたった一人でタイムマシンをも完成させた女傑である。

 そんな彼女が本腰を入れて兵器の開発をすればどうなるか。

 

 それは、火を見るより明らかだった。

 

 まず、西の都から程離れた場所に重力室を新たに作ることにした。

 部屋のサイズはこれまでより一際大きく、そして発生させられる重力はベジータの要望通り最大300倍まで。

 重力室の外壁にはセンサーが仕込まれていて、センサーの直線上にベジータが移動するとラグ無しでレーザー光線を撃ち込むようになっている。

 人工重力装置が起動すると同時に重力室全体にバリアーが張られる仕様になっており、その強度は今のベジータが全力で攻撃してもビクともしないほど。

 空中にはふよふよと奇妙な丸型の機械がいくつも浮かんでおり、こちらもレーザー光線を放ったり、ベジータの放った気弾を反射して反撃したりしてくる。

 厄介なのがベジータの動きを先読みする高性能AIが仕込まれていることで、これによりベジータの動きは次々と先読みされ、自分の放った攻撃にやられるという事態が何度も起きた。

 

「くそったれが…!」

 

 そんな理不尽極まりない兵器の数々にベジータは真っ向から立ち向かった。

 300倍の重力は今までの比ではないくらいに負荷が大きく、これに慣れるまでに数週間はかかった。

 レーザー光線を受けても致命傷にはならないが、絶え間なく撃たれるが故に一度受ければ次々と2撃3撃が飛んでくる。

 しかも、その速度はベジータをもってしても完全には見切れないほどで、ある程度直感に従って避けるほかなかった。

 エネルギー波で反撃すればその攻撃は空中を浮遊する丸形の機械に反射され、まるでキャッチボールをするように何度も気弾を反射したあと、的確に避けづらいタイミングで当てに来る。

 しかも、どんどん動きを学習するため攻撃が避けづらくなる始末。

 段々と追いつめられるのを感じて、思わず口から悪態の言葉が零れ出る。

 

 だが、勝算がないわけではない。

 サイヤ人は死の淵から立ち直るたびに遥かに強さを増す。

 超エリートであるこのオレはその伸び幅も凄まじい。他のサイヤ人とは比較にならないレベルに。

 ブルマの開発した人工重力装置などのトレーニング機材は、ベジータの生体反応が弱まると緊急停止するように設計されており、限界までトレーニングしたいというベジータの深層心理をみごと具現化したものだった。

 これにより、ベジータはサイヤ人の特性を活用してめきめきと力を伸ばすことができたのだった。

 

 

 

 

 

 

 一方、ドラゴンボールの力で生き返り地球で暮らすことを決めたギネは、聖地カリンを目指していた。

 というのも、生き返って数日は息子のカカロットと過ごしていたのだが、3年後にある天下一武道会という大会に向けて修行したいというカカロットの意を汲んで、世界を旅させることにしたのだ。

 どうやらカカロットは打倒ベジータ王子に燃えているらしい。

 無邪気な笑顔を浮かべて「世界にはベジータみたいなとんでもなく強いやつがいるかもしれねえんだもんな」と言って楽しそうにしていた。

 そんな姿を見てしまえばギネとしては背中を押すしかない。

 一緒に暮らしたい気持ちはやまやまだが、これからいくらでも時間はあるのだ。

 快くカカロットを送り出してやることにした。

 

 そうしてギネは1人になり、何をしようかと思考を巡らせたところでふと思い出したのだ。

 そういえば地球の神に挨拶しに行く約束をしたのだと。

 

 そういうわけで聖地カリンを目指し飛んでいたギネは天を貫くほどに高い塔を見つける。

 これが神様の住まいに違いないと思ったギネは急上昇して一気に塔のてっぺんまで駆け上り……そこで、杖を持った真っ白なネコに出会った。

 

「お主が悟空の母親か…」

「おや、私のことを知ってるのかい?」

 

 普通の人間ならば猫がしゃべったことに驚くだろうが、ギネは驚かない。

 なにせ多くの宇宙人に出会い、地獄をも経験しているのだから。

 

「知っているとも。暇なときはこうして下界を見ておるんじゃ」

 

 そう言いながら真っ白なネコは壺を覗き込む。

 ギネも覗き込んでみると、そこには占いババの宮殿やカプセルコーポレーション、パオズ山の悟空の家など様々な場所が映し出されていたのだ。

 

「すごい壺だね。どんな場所でも見られるのかい?」

「そうとも。心に思い浮かべた場所を自由に見ることができるのじゃ」

「へぇ、心に…」

 

 その言葉にギネは素直に感心する。

 どんな方法を使っているかは知らないが、地球には惑星ベジータやフリーザ軍にないような変わったモノが多いのだ。

 地球が銀河のはずれに位置しているからだろうか?

 かなり独特な文化が形成されている。

 

「それで、神に会いに来たんじゃろ?」

「そうそう。生き返らせてもらったお礼を言おうと思ってね」

「だったら、この鈴を持ってさらに上に昇ると良い」

「上に…?」

「そうじゃ。地球の神がいる天界は、ここより遥か上空に浮かんでおる。お主だったら空を飛んですぐにでも辿り着けるだろう」

「そっか。分かったよ」

 

 言われた通りにギネはさらに上へと飛んでいく。

 すると、地上よりも宇宙の方が近いほどの高さに宙に浮かんだ建造物があった。

 本当にどういう原理で浮かんでいるのだろうか?

 地球の技術は本当に摩訶不思議だ。

 

「来おったか…」

 

 神殿へと降り立つと地球の神が出迎えてくれた。

 

「ごめんよ。来るって言ってたのに随分と遅くなった」

「構わぬ。それより、礼を言うぞ。お前のおかげで私の出自(or出生の秘密)を知ることができた」

「礼を言うのはこっちの方だよ。あなたの作ったドラゴンボールのおかげで私は生き返ることができた」

 

 人が生き返るなんて有り得ないこと。

 惑星ベジータが滅びたそのときから二度と息子に会えないと思っていた。

 でも、こうして再び会うことができている。

 それもこれもドラゴンボールのおかげだ。

 バーダックがいないのは残念だけど、こうして親子揃って生活できるなんて夢のようだ。

 

「あの後、生まれ故郷のナメック星に無性に行きたくなってな」

「ナメック星に…?」

「あぁ。不思議なものだ。記憶にもない場所だというのに、話を聞いた途端行きたいと思ってしまったのだ」

 

 どうやら、神様が言うには自分が幼い頃に乗ってきた宇宙船があるとのこと。

 それを使って行こうと考えているらしい。

 ナメック星の場所については宇宙船にインプットされていなかったようだが、どうやら場所を知るための伝手はあるようで、出発の目途は立っているそうだ。

 

「準備ができたら地球を起ちナメック星に行ってみようと思っておる」

「それじゃあ地球の神は?」

「なぁに、辞めはせんよ。少しの間留守にするだけだ」

「そっか。いいんじゃない? 神様だってちょっとくらい里帰りしたって」

 

 地球の神にナメック星で過ごした記憶はないらしい。

 後で迎えに行くという親の言葉のみが脳裏に残り、数十年ほど待ち続けたが遂に迎えが来ることはなかったという。

 

『絶対に生き延びるんだぞ』

『また会おうね』

 

 ふと思った。

 カカロットがもしも頭を打たなかったら。

 私やバーダックのことを忘れることがなかったら。

 どうなっていただろうと。

 

(きっと、寂しい思いをさせてただろうなぁ)

 

 そういう意味では頭を打ってよかったのかもしれない。

 そうでなければ、迎えに行くと言った私やバーダックのことをずっとずっと待ち続けることになっていた。

 

 それからしばらく経って、地球の生活にもすっかり馴染んだギネに念話で一報が届いた。

 遠く離れたナメックの地に行ってくると。




【悟空と神様の共通点】
・生まれが地球ではない
・宇宙人の自覚がない
・幼い頃に宇宙船で地球に送られた
・両親のことを覚えていない
・人格が二つある
・後々神になる


如意棒がなければ神殿に行けないのではということに関しては、神様がなんとかしたということで。
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