ブルマ「ステキな恋人が欲しい!」   作:フェレーデ

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勢いのままもう1話書けたので投下。


09:ブルマの葛藤①

 地球にはやたらデカい生物が多いと思ったのはいつのことだったか。

 お金がなく、盗むなんてことをする気もないギネは、自然の中にある木の実を取ったり魚や恐竜などを狩ったりして生活していた。

 地球の環境は本当に随一整っていると思う。

 ただ火を通しただけなのに、肉や魚がとても美味しいのだ。

 栄養が豊富だからなのか異様にサイズが大きい生物が多くいて、量を必要とするサイヤ人にとってはありがたいことだった。

 

 そんなことをしながら息子に倣って世界を巡っていたギネは、偶然職を得ることに成功する。

 始まりは地球人に話しかけられたことだった。

 曰く、金を払うから取った魚や肉を譲ってくれないかと。

 地球人にはあの大きな魚や恐竜を仕留めるのは難しいだろうと思ったギネは、言われた通りに魚や恐竜などを取ってきた。

 元々は戦闘員として働いていたギネにとってこれくらい造作もないことだ。

 危なげなく獲物を仕留めて、地球人に差し出した。

 

 そこで得た資金はかなりのものだった。

 あまりの大金にこんなにもらえないよとギネは言ったが、これくらいが相場だと言われそうなのかと引き下がる。

 こんなに自然が豊かな惑星(ほし)なら採るものにも困らないだろうに…。

 そう思ったが、これが地球人の文化なのだろうと思い、ありがたく受け取ることにした。

 

 その地球人とは何かと縁ができた。

 聞いてみると貿易商を営んでいる人のようで、世界各地から様々な食材を集めて販売しているのだと。

 それから、ギネの地球人離れした力を見て、ウチで働いてくれないかと懇願してきたのだ。

 特に断る理由もなく、ギネはそれを了承した。

 

 仕事の内容は惑星ベジータで働いていた肉の配給所と同じようなものだ。

 まさかあの時の経験が地球で活かされる時が来るとは。

 人生は予測できないことの連続だって誰かが言ってたけど、まさにその通りだと思った。

 

 

 

 そんな生活をしばらく続け、仕事の一環で西の都を訪れた時のこと。

 仕事終わりに何かスイーツでも買おうかと都でちょっと流行りのクレープ屋に向かい

 

「え、ギネさん…?」

「ブルマ?」

 

 そこで、偶然ブルマと遭遇したのだ。

 生き返らせてもらった日以来の再会だった。

 1年ぶりくらいだろうか?

 あのとき、ブルマが後押ししてくれたからこそギネの今があると思っている。

 一言お礼を言おうと感謝の言葉を口にしようとして──

 

「──ねぇ! サイヤ人って弱点とかないの!?」

 

 グワッと効果音がつきそうな勢いで肩を掴まれすごい剣幕でブルマが言い寄ってきた。

 とりあえず、続きはカプセルコーポレーションで聞くことにした。

 

 

 

 

 

 場所を変えて少し落ち着いたブルマに話を聞いた。

 話をまとめると、さらなる強さを求めるベジータ王子に対抗してトレーニング用機材の開発をしているが、加速度的に成長するサイヤ人に追いつけなくなってきていて困っているのだと。

 子供から大人へと成長し体格も良くなったベジータ王子は以前にも増して強くなっているらしく、最初こそよかったものの最近は装置の修理に大変なのだとか。

 ベジータ王子に追随できる科学力って何だとか、何故そこに対抗意識を燃やしてるんだとかいろいろ突っ込みたいことはあったが、ギネは口を挟まなかった。

 ちなみに、クレープ屋に行っていたのは機材開発の息抜きだそうで、喋りながら食べているはずなのに聞き手に徹したサイヤ人のギネよりも早く食べてしまっていた。

 

「で、あるの? サイヤ人に弱点は?」

「うーん……シッポ以外には特には。その弱点も王子ならとっくに鍛えてるだろうしね」

 

 だが、ギネが返せる答えはそれだけだった。

 唯一の弱点としてシッポも鍛えることにより克服が可能だ。

 弱点をそのままにしておくのは危険な戦場に繰り出すサイヤ人にとって命取りになりかねない。鍛えるのは当然というもの。

 無論ベジータ王子も鍛えていることだろう。

 そのことを口にすると、ブルマは大きく項垂れてちょっとヤケクソ気味に…

 

「あーもう! レーザー銃を当ててもピンピンしてるし雷に撃たれても平気な顔してるし何なのよサイヤ人は!」

「まあまあ、それくらいじゃないと戦闘民族だなんて呼ばれないし」

「戦闘服が砕けちゃうくらいにボロボロになっても3日もすれば傷一つなくなって元気になってるし」

「さ、サイヤ人の回復力は地球人より強いから…」

「オマケに! 苦労して開発した300倍の重力の中でも動き回るし、ホントどうなってるのよもう!」

「え……さ、300倍の重力…? ちょ、ちょっと、王子にどんなトレーニングさせてるんだい?」

 

 思わずブルマが漏らした言葉にギネは困惑する。

 そして、ベジータ王子のトレーニング内容について事細かに尋ねるのだった。

 

 聞かされたのは想像を絶するトレーニング内容。

 惑星ベジータ基準で30倍の重力環境下で、ベジータ王子がダメージを受けるようなレーザー銃を絶え間なく放射され、反撃しようものなら反射されそのまま跳ね返ってくる。

 しかも、それらは一度電源を入れたらベジータ王子の生体反応が弱まるまで停止しない設定になっており、重力室の壁を破壊しての脱出も重力室全体に張られたバリアーにより防がれてしまい不可能。

 あまりの過酷な内容にギネは顔を引きつらせて「殺すつもりかい…?」とマジなトーンで言ってしまった。

 そして、ブルマからの返答は…

 

「だって、そうでもしないとベジータ本当に死んじゃうかもしれないじゃない」

 

 同じく、マジなトーンの言葉だった。

 その言葉にギネは思わず押し黙ってしまい、場がシンと静まり返る。

 

「アイツ、力を付けたらすぐにでもフリーザってやつのところへ殴り込みに行くわ! フリーザってのは惑星(ほし)を粉々にできるくらい強いんでしょ? そんなヤツに勝てるわけないじゃない!」

 

 ブルマのその言葉にギネは反対することができない。

 フリーザの力は圧倒的だ。戦闘力1万を超えていたベジータ王や、それに迫る強さのバーダックも手も足も出ずに殺されてしまった。

 ベジータ王子はたしかに天才で、ギネが見てきた中でも最強の強さを持っているが、それでもフリーザに勝てるとは思えない。

 それくらいの底知れなさがフリーザにはある。

 

「ブルマは心配なんだね。ベジータ王子のこと」

「当たり前よ! 危なっかしくて放っておけないわ」

 

 危なっかしい。

 ブルマはそう言うが、惑星ベジータでベジータ王子を心配する人間などいなかった。

 カカロットが生まれた5歳の頃には既に戦闘力1万を超えていたのだ。ウチの旦那よりも強いし、ほとんどのエリート戦士も歯が立たない。

 むしろベジータ王子自身が好き好んで惑星の制圧に赴いていたのが実情だ。

 どうしてそんな子供を心配するだろうか?

 年齢なんて言葉喋れるようになれば大した違いはなく、戦闘力さえ高ければそれで十分。

 戦闘力が1万を超えるなんてのは一部のエリートしか成し得ないことで、惑星ベジータでは誰もが彼を一流の戦士として扱っていた。

 もちろん私も例外ではない。

 ラディッツがベジータ王子と組んで任務に行ったと聞いたときは、親として嬉しく思ったし誇らしく思った。

 

 だが、ブルマは王子のことを心配している。

 まるで我がことのように。

 

『バーダック!』

 

 そのとき、ギネの脳裏にかつての自分の姿が浮かぶ。

 とある任務の帰りに手酷い傷を負って帰ってきたバーダック。

 ゆっくり休みなよと言ったが、次の任務があるからと言って去っていこうとする。

 そんな彼に衝動的に叫んでしまったのだ。

 サイヤ人らしくもないと叱られてしまったが、あの時の私はバーダックが死んでしまわないかと心配で仕方なかった。

 

(もしかして…)

 

 今のブルマの姿はそれと同じではないか?

 だとしたら、現在ブルマが胸に抱いているその気持ちは…

 それを言葉にしようと口を開こうとして──

 

「──ふん、このオレに心配など必要ない」

「ベ、ベジータ…!!」

 

 その言葉はベジータにより遮られた。

 ギネが見ない間にすっかり大きく成長したベジータ。

 身長も伸びて体格もよりがっしりしたものとなり、髭がないこと以外はベジータ王そっくりだ。

 

「し、心配ないって……どういうことよ!」

「そのままの意味だ。たった今からこのオレは不死身になるのだからな」

 

 そう言いながらベジータはドラゴンレーダーを見せる。

 カチッカチッと表示を切り替えると、そこには各地に散らばったドラゴンボールの反応があった。

 1年……そうか1年か。たしかに、前回の願いを叶えてから1年ほどの月日が経っている。

 

「オレは今からドラゴンボールを集めて不死身の肉体を手に入れる」

「不死身って…。だってそれは…!」

「その神龍とやらに細かく条件を聞けば問題ないだろう。頼み方次第でどうとでもなる」

「で、でも…」

「キサマはもっと強力な兵器を作ることだ。不死身となったこのベジータ様を殺せるほどのな。ハーッハッハッハ!」

 

ベジータはドラゴンレーダーを片手に飛び立っていく。

 1時間もかからぬうちに集めてしまうだろう。今のベジータを止められる者は、地球には存在しない。

 ベジータからは強い意志を感じた。

 何が何でもフリーザを倒してやるという強い意志を。

 それに気圧されて、ギネも声をかけることができなかったのだ。

 

「まったく、何なのよアイツは! 人の気も知らないで!」

 

 ブルマはイライラのままにテーブルをダンと叩きつける。

 地球の中で、ベジータと最もかかわりが深く、付き合いも長く、生活すら共にしているブルマの声ですら、まったくと言っていいほど響かない。

 その事実にブルマは全身を震わせる。

 両の拳はぎゅっと握りしめられており、目尻にはうっすらと涙が浮かんでいた。

 

「ねぇ、ブルマ」

 

 そんなブルマにギネは優しく語りかける。

 凛とした声色にブルマも顔を上げる。

 

「私は、ベジータ王子を突き動かせるのはブルマだけだと思ってるよ」

「で、でも……さっきは…」

「それはまだ心に迷いがあるからだよ」

「迷い…?」

「そう。じゃあ聞くけどさ──」

 

 

「──ブルマは、ベジータ王子のこと好きなの?」

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